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政治(経済)講座ⅴ2060「米中経済覇権戦争」

 いよいよ来月のトランプ大統領の就任により、経済(関税)戦争が始まる。
どのように経済に影響がおきて、どのような結末を迎えるのであろうか。興味津々である。これほどの関税政策は歴史上なかった。
 経験則が通用しない世界が待ちうけているのである。
そして、このような変化に対応できる者だけが生き残るサバイバルの経済に突入したのである。
 関税政策でインフレを呼び込むのか、逆に消費行動を冷え込ませて需要を縮小させて、デフレ経済に世界がなるのか。
 これが、熱い戦争に誘(いざな)われるのか分からない。
 米中の蜜月の時代はもう終わった。
そして、中国の不動産バブルの崩壊は一般市民の生活に悪い影響を与えていることは事実であり、本格的に経済が崩壊に向かってもおかしくはない中国の株や人民元を買っている人は、万が一に備えて売却を検討しても良いであろう。
今回はそのような報道記事を紹介する。

     皇紀2684年12月10日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

報道記事紹介

【トランプは中国との貿易戦争に勝てるのか?】厳しい中国の経済状況も、危険はらむトランプの4つの特性

岡崎研究所
2024年11月14日付ニューヨーク・タイムズ紙の論説で、民主主義防衛財団のシニア・フェローのクレイグ・シングルトンが、トランプは中国との貿易、先端技術等の経済競争で勝利できるかもしれないとの楽観論を述べている。

(dvids・panida wijitpanya/gettyimages)

 中国は、経済の停滞を始め様々な問題に直面し、トランプの自己主張的な戦術に対して脆弱である。
 トランプが1期目の威勢の良いスタイルに、より焦点を絞った戦略と厳格な規律を組み合わせることができれば、中国を守勢に立たせ、恒久的に米国有利に変える絶好の機会となる。彼のゼロサム・アプローチと型破りな戦術、そして新たな対中強硬派内閣は、習近平を追い込むことになろう。

 中国は、習近平の失政と弾圧深刻な債務記録的な失業率人口減少急速な高齢化に直面し、実際には衰退しつつある大国だ。

 一方、米国経済は勢いを増している
トランプは、中国からの輸入品に60%の関税をかけることを提案している。これは中国の国内総生産を最大2%引き下げる。

 トランプの威勢と瀬戸際外交は、台湾に関しても貴重なものとなる可能性がある。習近平の目標は、必要であれば武力によって、台湾を中国の統治下に置くことだが、トランプは、中国が軍事行動に出れば中国製品に200%の関税をかけると脅しており、先月、習近平は台湾問題で挑発することはないだろうと指摘した。

 トランプの復帰に対する中国の不安はすでに表面化している。トランプが選挙で決定的な勝利を収めた後、中国の指導者たちはすぐに融和的なトーンを強め、平和的共存と新たな協力の時代を呼びかけた

 しかし、半導体、人工知能、自動運転、量子コンピューターといった重要技術をめぐる中国との競争は加速されるだろう。中国が主導権を握れば、米国の安全保障が損なわれる危険がある。トランプはこのリスクを認識し、中国のハイテク企業に対する関税、輸出規制、制裁を強化し、ハイテク部門への米国投資を厳しく審査するだろう。この戦略は超党派の支持を得て、中国の高度な軍事力の開発と展開を妨げることができるかもしれない。

 米国にとり関税措置は、消費者に影響を及ぼす貿易戦争を引き起こすが、トランプは、戦略的利益のために短期的な政治的コストを受け入れる用意があり、世論調査によれば、ほとんどの米国人はトランプの関税による威嚇を支持している。

 最後の手段として、習近平は台湾や南シナ海での緊張を増大する可能性があるが、それは米国の同盟関係を活性化させ、地域の米軍のプレゼンス強化を招く

 永続的な成功を収めるには、米国国内の刷新、軍事費の強化、民間活力、そして特にアジア・欧州の同盟関係等を組み合わせ、より広範な「力による平和」のアプローチが必要となる。次期政権は、これが中国と対峙するための重要な要素であることを理解し、「アメリカ・ファースト」のアプローチを刷新して同盟国間の公平な負担に焦点を当てることが必要だ。

 同盟国への過度な関税賦課や相互防衛協定への米国のコミットメントが疑問視されることは、抑止力を弱め、中国が利用する外交的亀裂を生むだけだ。トランプが、同盟国との関係を築き、規律を守ることができれば、勝利は可能だろう。

*   *   *

関税措置へ考慮すべきこと

 シングルトンが所属する民主主義防衛財団は、共和党系でネオコン的な傾向のある米国シンクタンクで、シングルトンは中国担当のシニア・フェローとして、トランプが適切な対応を取れば、第2期政権の最重要課題の1つである先端技術や貿易戦争で中国に勝利し、その優位を恒久的なものにする好機であると論じている。

 その背景として、中国が、経済停滞や債務増大、失業増加や高齢化により既に衰退へ向かい、トランプの強圧的で予測困難なやり方に脆弱で、米国が高額の関税を課すのに対して有効な対抗措置が取れないためであるとしている。もっとも、米国の優位を恒久的なものとするためには、より焦点を絞った戦略と規律が必要で、同盟国の信頼を損ねるようなことのない「アメリカ・ファースト」に刷新する必要があるとしている。 同盟国重視の点はもっともであり正論だが、トランプの「アメリカ・ファースト」の基準が経済的損得勘定に偏り、「力による平和」の実現というが、その「力」が関税賦課のことであれば同盟国の立場としてはいささか心もとない。また、トランプの集中力のなさや戦略性のなさが容易に改善されるとは思えず、シングルトンの中国経済の状況についての見方も、また、中国が軍事的カードを切る可能性についてもやや楽観的で、トランプが中国に対して恒久的な優位に立つ好機となるとの主張に必ずしも強い説得力はない。

 トランプが関税を武器とする一連の公約をどのようにどこまで実行するかは良く判らないが、世界経済や貿易に影響を与える可能性は極めて高い。

 この論説では、関税措置の消費者への影響について、「世論調査によれば、ほとんどの米国人はトランプの関税による威嚇を支持している」としているが、この点もやや楽観的過ぎる印象がある。トランプの世界一律10~20%の関税賦課という公約についても、その価格転嫁や相手国側の報復関税による米国輸出への影響やこれに対する世論の反響も考慮する必要があろう。世論も「威嚇」は支持しても物価上昇まで支持しているとは思えない。

トランプの貿易戦争への4つの欠点

 この論説と同日のニューヨーク・タイムズ紙で、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンが、逆にトランプが貿易戦争で敗北する可能性があると論じている。中国は、消費拡大による経済成長を目指すべきだが、電気自動車(EV)等の先端分野での世界制覇を目指して過剰生産を輸出拡大で解決しようとする。

 米中貿易戦争は不可避であるが、トランプの無知、焦点の欠如、縁故主義、騙されやすさの4つの特性から、この問題に対応する指導者として最悪であると辛辣に批判している。無知とは関税の影響や世界貿易の仕組みについて理解していないこと、焦点の欠如とは一律の関税措置により打撃を与え、同盟国を阻害するような政策であること、縁故主義とは特定の企業に関税を免除する権限の濫用、騙されやすさでは第1期目の中国との経済貿易協定の2000億ドルの追加輸入の約束を中国が守っていないことを指す。

 いずれにしても、トランプ第2期政権で米中貿易戦争が主要な問題となることは明らかであろう。その中で、日本は、自らの経済復活のために、どのように米中両国と関わって行くのか、喫緊の最重要課題の一つである。

中国経済の現状とは? バブル崩壊や今後の見落としを解説

中国経済はもう終わりだ」「バブルが崩壊しそう」といった話を聞いたことがありませんか? ここ数年中国では不動産バブルの崩壊により今後の経済の先行きについて不安視している人は少なくありません。とはいえ、実態はどうなのか、経済指標などに兆しが見えているか気になる人もいるでしょう。

本記事では、中国経済の最新の現状や今後の見通しなどについて解説します。中国経済の動向が気になる人は、ぜひ参考にしてください。

中国経済の最新の現状

まずは、2024年9月末時点の中国経済の現状がどうなっているか見ていきましょう。

※輸出額の2024年は上半期時点

2024年末までに増加すると予想されているのは、一人当たりGDPや外貨準備高です。一方で、実質GDP成長率や対外直接投資、失業率についてはこのままのペースで進むと悪化する可能性があります。

2024年の中国の政府目標と達成の見通し

中国では、毎年政府目標を発表しています。中国政府が2024年3月5日に開催した第14期全国人民代表大会第2回会議(全人代)において発表した政府目標と現時点の達成の見通しがどうなっているか見ていきましょう。

まずは、中国政府の発表した政府目標をまとめました。

GDP成長率は達成が難しそう

政府目標であるGDP成長率の約5%前後については、達成が難しいかもしれません。

UBSのエコノミストは、不動産市場の不安定さを理由に4.6%成長を予測しています。

加えて2023年の成長率(5.2%)が高かったことも達成が難しい要因です。

中国政府は、不動産開発や地方政府の債務拡大による公共投資に依存した従来の経済成長モデルから、新たな産業体系の構築を含む新時代の成長モデルへの転換を優先課題としています。

しかし、前年並みのGDP成長率を維持しつつ、経済の成長エンジンを切り替えることは容易ではありません。

さらに、不動産市況の低迷にいまだ底打ちの気配が見られないことも大きな懸念材料です。

都市部調査失業率は今後の発表次第

都市部調査失業率は2024年8月時点で5.3%であり、政府目標の5.5%に届くかは微妙な状況です。

若年層の高失業率が依然として大きな課題となっており、特に16歳から24歳の学生を除く若年失業率は18.8%と高水準で推移しています。

政府は雇用対策として、企業への支援策や職業訓練の強化、起業支援などを実施していますが、構造的な問題の解決には時間がかかると見られています。

消費者物価指数(CPI)上昇率の達成は困難

消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比でマイナスが続いているため、政府目標の3%前後を達成できない可能性が高いです。

中国経済には物価下落(デフレ)の傾向が見られているためです。中国政府が3%前後という数値目標を掲げた理由として、中国経済に大きな変化がないことを対外的にアピールする狙いがあったと分析する識者もいます。

各経済指標の推移を見ることで、現在の中国経済の状態を判断しやすくなります。
1.消費者物価指数(前年比)

出典: TRADERS WEB

消費者物価指数(前年比)とは、一般消費者が購入する財やサービスの価格変動を示す指標です。消費者の購買力の変化が分かります。

中国の消費者物価指数(CPI)は、2023年から2024年にかけて、非常に低い水準で推移しています


このことから、中国経済はデフレ圧力に直面していることが分かるでしょう。

2.GDP(前年比)

出典:TRADERS WEB

GDP(前年比)は国内総生産のことです。国の経済規模の変化を見ることができます。

中国のGDP成長率は、2024年に入っても依然として5%前後を維持していますが、第2四半期になってから減速傾向が見られました。

中国の鉱工業生産は、2023年後半から2024年前半にかけて、比較的高い成長率を維持していました。

しかし、2024年4月をピークに、成長率が鈍化傾向にある点に注意が必要です。

要因としては、不動産セクターの継続的な低迷輸出需要の減少国内消費の伸び悩みなどが考えられます。

4.小売売上高(前年比)

出典: TRADERS WEB

小売売上高(前年比)とは、小売業者が消費者に販売した商品の総額を示す経済指標のことです。

消費者の購買活動を直接反映するため、個人消費の動向を把握するのに適した指標です。

中国の小売売上高(前年比)が2024年3月以降急速に悪化しています。

主な理由として、以下のようなものがあります。

  1. 不動産市場の低迷

  2. 若年層を中心に失業率が高止まりしている

  3. デフレ懸念が消費を抑制している

さらに、2023年に実施された消費刺激策の効果が一巡し、その反動が2024年に現れている可能性もあります。


5.製造業PMI

出典: TRADERS WEB

製造業PMIとは、製造業の景況感を示す景気指標です。50を基準値とし、50以上なら景気拡大、50未満なら景気縮小と判断できます。

中国の製造業PMIは2023年を通じて低迷が続き、多くの月で50を下回ったことから、経済回復の遅れを示唆しています。

2024年に入っても製造業PMIの低迷は続いており、8月の数値が49.1%であることから、依然として景気縮小は続いています。

6.マネーサプライM2

マネーサプライM2とは、通貨供給の総量を示す指標で、都市部住民の貯蓄預金残高や企業の定期預金、信託預金などの預金にM1(現金と預金通貨の合計)が含まれている指標です。

マネーサプライM2が増加すると、中国の通貨である人民元の下落圧力が高まります。

出典: TRADERS WEB

中国のマネーサプライの伸び率は、ここ1,2年で急速に減少しています。

不動産市場の低迷資本流出の加速経済成長の鈍化と投資家心理の悪化などが要因となります。

7.貿易収支

貿易収支とは、一定期間における一国の輸出額と輸入額の差額を指す経済指標のことです。

輸出額が輸入額を上回ると貿易黒字、下回ると貿易赤字となります。貿易収支を見ることで、国の経済活動や健全性を判断できます。

出典:TRADERS WEB

中国の貿易黒字は依然として大きいものの、2023年は輸出入ともに減少しました。2024年に入ってからは輸出が回復傾向にありますが、輸入の伸び悩みが見られます。

中国経済は終わるのか?現状を10項目で解説H

中国経済の現状について10項目で解説します。要点は以下の通りです。

1.不動産:不動産バブルの崩壊が深刻

中国の不動産市場は2024年9月現在、深刻な低迷状態にあります。不動産バブルの崩壊は深刻で、IMFは「過去30年間で世界最大レベル」と指摘しています。

2024年上半期の新築住宅販売面積は前年同期比19%減少し、販売総額も25%落ち込みました。

この背景には、住宅価格の下落が需要を喚起せず、値下がりが更なる値下がりを呼ぶ悪循環に陥っていることがあります。

住宅の供給過剰も大きな問題となっており、2023年末時点で不動産開発企業が抱える在庫は6,230万戸に達し、同年の販売戸数の6.6倍に相当します。

その結果、潜在的な買い手は慎重な姿勢を崩さず、販売低迷の長期化を招いている状況です。

政府はさまざまな支援策を打ち出していますが、効果を発揮できていません。

2.消費:消費マインドは低迷状態

2024年の社会消費財小売総額の伸びは前年の6.5%から5.5%に減速すると予想されており、

中国の消費マインドは低迷状態にあります。

その原因は、不動産市場の低迷による住宅価格の下落が個人消費にマイナスの影響を与えていることです。

加えて、欧米諸国とは異なり、コロナ後も貯蓄率が高止まりしている点や過剰貯蓄が消費に回っていないといった問題があります。

その結果、大型ネット通販セール「618」の売上が初めて減少するなど、消費者の購買意欲の低下が顕著に表れています。

3.雇用:失業率の高さが気になる

中国の雇用状況は、経済全体の回復に比べて遅れを取っている状況です。

2024年8月の都市部調査失業率は5.3%で、前年同期から若干改善しているものの、依然として高水準です。

特に若年層の失業率が深刻で、16歳から24歳の学生を除く若年失業率は18.8%に達し、記録的な高水準を維持しています。

雇用が十分に回復していない原因は、以下の3つがあります。

  1. 経済成長の鈍化

  2. 構造変化

  3. 新型コロナウイルスの影響

政府は雇用対策として、企業への支援策や職業訓練の強化、起業支援などを実施していますが、効果は十分に出ていません。

特に大学生の就職難が顕著で、高学歴者の需給ミスマッチが問題となっています。

一方で、製造業や一部のサービス業では人手不足も報告されており、労働市場の二極化が進んでいます。政府は雇用の質の向上と安定化を重要課題として掲げていますが、構造的な問題の解決には時間がかかるでしょう。

4.物価:デフレ圧力が強そう
中国の物価状況は、デフレ圧力が続く中で微妙な均衡を保っています。

2024年8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.3%上昇と、わずかながらプラスを維持していますが、主に食品やエネルギーなどの生活必需品の価格上昇によるものです。

コアCPIは0.6%と低水準にとどまっていることを踏まえると良い数字とはいえません。

加えて、生産者物価指数(PPI)は23カ月連続でマイナスを記録し、8月は前年同月比2.5%の下落となりました。このことから企業の利益率は圧迫されており、投資意欲も減退していることが分かります。

政府は5%前後のGDP成長率目標を掲げていますが、物価の低迷は内需の弱さを反映しており、目標達成への懸念材料となっています。

消費者の節約志向が強まる中、企業間の価格競争も激化しており、デフレ圧力が続く可能性が高いでしょう。

5.投資:分野によって明暗が変わる

中国の投資状況は分野によって明暗が分かれている状況です。

2024年の固定資産投資は前年比3.0%増と、緩やかな成長を示し、インフラ投資が5.9%増、製造業投資が6.5%増とプラス成長を維持しています。

一方で、民間投資は0.4%減、不動産開発投資は9.6%減と低迷が続いています。不動産市場の低迷が投資全体に影響を与えており、政府は国債の追加発行でインフラ投資を促進するなどの対策を講じている状況です。

6.財政政策:中国政府は積極的に行っている
中国政府は、経済を安定させ成長を促すために、積極的にお金を使う方針を続けています。

2024年には、国の借金(財政赤字)がGDP(国の経済規模)の3.8%程度まで増える見込みです。

通常の上限は3%ですが、政府は経済を支えるために以下のような対策を行って、より多くのお金を使おうとしています。

  • 特別国債の増発

  • 地方政府特別債券(専項債)の発行枠を拡大

  • インフラ投資の促進や消費刺激策の実施

  • 製造業やハイテク産業への投資支援も強化

ただし、地方政府の借金が増えすぎているため、中央政府は地方の財政を健全にするための改革も進めています。

7.金融政策:金融緩和政策を実施

中国政府は、経済の安定と成長を促すために、人や企業がお金を使いやすくする政策を継続しています。

以下は、2024年9月に中国の中央銀行(中国人民銀行)が行った対策です。

これらの対策により、経済成長と不動産・株式市場を支えようとしています。

8.外需:回復基調にある

中国の外需は、2024年に入り回復基調にあります。2024年上半期の輸出額は1兆7,075億ドルで、前年同期比3.6%増となりました。

特に自動車(EVを含む)の輸出が18.9%増、家電製品の輸出が14.8%増と好調です。ASEANやロシア向けの輸出先が増加しています。

また、2024年3月の製造業PMIの新規輸出受注指数が50を超え、輸出が回復傾向にあります。

一方で、欧米諸国を中心に中国からの輸出増を問題視する動きも強まっており、先行きは不透明です。

特に、EVなどの「新三様」(EV、電池、太陽光パネル)の輸出の勢いが減退傾向にあり、欧米の対中規制強化の動きが懸念材料となっています。

さらに、対中直接投資は2024年第1四半期に前年比29.3%減と大幅に減少しており、海外企業が中国市場への進出について慎重な姿勢を見せていることが分かるでしょう。

9.構造改革:消費主導型経済への転換に遅れ

中国の構造改革は、「質の高い発展」を目指す方針の下で進められていますが、課題も多く残されています。

2024年7月の第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では、「全面的な改革の深化」と「中国式現代化」の推進が強調されました。

特に、イノベーション主導の「新たな質の生産力」発展や、戦略的新興産業の育成に重点が置かれています。

しかし、これらの改革は主に供給サイドに焦点を当てており、消費主導型経済への転換は遅れています。加えて、国有企業改革や金融システムの健全化、地方政府の債務問題など、構造的な課題への取り組みは依然として不十分です。

不動産セクターの構造改革も急務となっていますが、短期的な景気対策との両立に苦慮しています。

10.地方政府の債務問題:不動産不況で財政が逼迫

中国の地方政府債務問題は深刻化しており、経済の大きな不安要因となっています。

2023年末時点で、地方債の発行残高は40兆7373億元(約840兆円)に達し、年間の利払い額は1兆2288億元(約25兆円)と過去最高を記録しました。

特に問題になっているのが地方政府融資平台(LGFV)と呼ばれる資金調達事業体の債務で、66兆元(約1430兆円)にも上ります。

不動産不況による土地売却収入の減少で、地方政府の財政は逼迫しています。

中央政府は地方政府の財政強化策として、消費税収入の増加を段階的に許可するなどの対策を打ち出していますが、債務規模の急速な拡大に追いついていません。

LGFVのデフォルトリスクも高まっており、金融システムへの影響が懸念されています。

中国経済が終わるか復活するかは不透明だが警戒はすべき

中国経済が今後終わるか復活するかは不透明です。なぜなら、仮に経済状況が急速に悪化したとして、中国政府が正直に実態を公開しない可能性もあるからです。

とはいえ、不動産バブルの崩壊は一般市民の生活に悪い影響を与えていることは事実であり、本格的に経済が崩壊に向かってもおかしくはありません

中国の株や人民元を買っている人は、万が一に備えて売却を検討しても良いでしょう。

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