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政治講座ⅴ1147「ミュンヘン安全保障会議 J・D・ヴァンス米副大統領発言 」
トランプ政権は西欧の価値観の変質を憂いている。
つまり、ヨーロッパの防衛では 欧州自身が主体的な役割を果たすべきだが、それ以上に外部の脅威よりも、民主的価値観の 後退というヨーロッパ内部の問題を懸念。
今回はミュンヘン安全保障会議 で、J・D・ヴァンス米副大統領が発言した内容を次に紹介する。
皇紀2685年2月19日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
報道記事紹介
2024/25 年ミュンヘン安全保障会議 J・D・ヴァンス米副大統領発言 (v1.1)
2025/02/15 山形浩生訳 (hiyori13@alum.mit.edu)
Executive Summary
ヴァンス米副大統領の、2025 年ミュンヘン安全保障会議での演説。
ヨーロッパの防衛では 欧州自身が主体的な役割を果たすべきだが、それ以上に外部の脅威よりも、民主的価値観の 後退というヨーロッパ内部の問題を懸念。
そんな状態ではまともな同盟はおぼつかないと 指摘。
特に、言論の自由の制限や政府の検閲、選挙の無効化などの動きを批判した。
欧米が 共有する価値観を守るために、自由な言論や異なる意見の尊重が不可欠であり、特に移民問 題が大きく、エリートが国民の声を踏みにじるようではダメだと戒めた。
関連して 2024 年のパネルディスカッションでは以下の点を述べた:
1. ウクライナ支援の限界 – 資金ではなく兵器生産がボトルネック。西側はロシアほ どの武器生産能力がない。
2. 和平交渉の必要性 – 武器供給が限られている以上、ウクライナ戦争は交渉による解 決しかない。
3. アメリカの外交優先順位 – ロシアは脅威だが、アメリカが重視するのは東アジア。
4. ヨーロッパの安全保障の自立 – アメリカは東アジアに注力するからヨーロッパは 自分で防衛能力を強化せよ。
5. 脱工業化のリスク – 戦争で重要なのは GDP より工業生産力。ヨーロッパは自国の 安全保障強化のためにも工業を維持せよ。
⽬次
2025 年 2 ⽉ ミュンヘン安全保障会議でのヴァンス演説
パネルディスカッションでのヴァンス発⾔
今⽇お話ししたいことの⼀つは、もちろん、我々の共通の価値観についてです。
そしてち なみに、ドイツに戻ってこられたのはとても嬉しい。さっき出ましたが、私は昨年、⽶国上 院議員としてここにきました。外務⼤⾂のデイビッド・ラミーに会ったとき、昨年は⼆⼈と も今とは違う仕事だったな、と冗談を交わしましたよ。
しかし今は、ここにいる国すべて、 それぞれの国⺠から政治権⼒を与えられる幸運に恵まれた我々全員が、その権⼒を賢く使 って⼈々の⽣活を向上させる時です。 そして、過去 24 時間にわたり、この会議以外の場所で時間を過ごすことができたのは幸 運でした。昨⽇の恐ろしい攻撃でみなさんが動揺しているのに、それでも歓迎してくれた ⼈々にはとても感銘を受けました。初めてミュンヘンを訪れたのは、実は今⽇私と⼀緒にい る妻との個⼈的な旅⾏でした。
私はずっとミュンヘンの街が好きだったし、ミュンヘンの ⼈々も⼤好きなんです。
⾔っておくと、私たちは⾮常に⼼を痛めているし、ミュンヘンと、この美しいコミュニテ ィにふりかかった邪悪の被害者すべてのために、懸念と祈りを捧げたいし、来る⽇々、来る 何週間も、皆さんをまちがいなく応援し続けます。
(訳注:この演説のほぼ当⽇に、ミュンヘンで難⺠申請中のアフガン移⺠が⾞でデモ隊に突っ込んで数⼗ ⼈を負傷させたテロ事件のことを指している)
さてもちろん、この会議に我々が集まったのは安全保障の議論のためです。
通常これは、 外部からの安全保障に対する脅威ということです。
今⽇ここには、実にたくさんの偉⼤な軍 事指導者たちが集まっているのが⾒えます。
しかしトランプ政権はヨーロッパの安全保障 を⼤いに懸念していて、ロシアとウクライナの間でそれなりの調停が実現できると信じて いますし、さらにこれからはヨーロッパが⾃分たち⾃⾝の防衛を⽀えるために、⼤幅に踏み 出すことが重要だとも信じていますが、私がヨーロッパについて最も⼼配しているのは、ロ シアでもない、中国でもない、どんな外部アクターでもない。
私が⼼配しているのは、内部 からの脅威です。
ヨーロッパが、その最も根本的な価値観から後退しているということなん です。
アメリカ合州国と共有している価値観からの後退です。
私が驚いたのは、元欧州委員会の委員が最近テレビに出て、ルーマニア政府が選挙を丸ご と無効にしたことについて、喜んでみせていたことです。
そして、もし事態が計画通りに 進まないなら、同じことがドイツでも起こるかも、と警告しました。
(訳注:2024 年にルーマニア憲法法廷が、⼤統領選第⼀次投票が外国の介⼊で歪んで右派のジョルジェ スク候補が優位だったのを無効にした話。
これに対して元欧州委員のティエリー・ブレトンがそれを歓迎 する発⾔をした) さて、こんな発⾔が平然と⾏われるのは、アメリカ⼈にとってはショッキングなことです。
⻑年にわたり、アメリカは⾃分たちが資⾦を出して⽀援してきたものすべては、私たちが共 有している⺠主的価値観のためなのだと聞かされてきました。
ウクライナ政策からデジタ ル検閲まで、なんでもかんでも⺠主主義の擁護だという看板で⾏われてきました。
しかしヨ ーロッパの法廷が占拠をキャンセルしたり、上級⾼官が他の選挙もキャンセルするぞと脅 したりするのを⽬にしたら、⾃分たちが適切なほど⾼い基準を⾃らに課しているのか、⾃問 すべきです。
いま、⾃分たちと申しあげました。
それは私たちが同じ側に⽴っていると、私 が⼼から信じているからです。
⺠主的価値観について、⼝先で語るだけではいけません。それを⽣きねばならないのです。 さてこの部屋にいらっしゃるみなさんの⽣の記憶の中でも、冷戦はこの⼤陸で、⺠主主義の 擁護者たちをずっと圧政的な勢⼒と対決するように位置づけました。
そしてその戦いにお いて、異論のある者たちを検閲し、教会を閉鎖し、選挙をキャンセルしたのはどっちだった かを考えましょう。
そいつらは善⽟だったでしょうか?絶対ちがいます。
そして、そいつらが冷戦に負けたのを神に感謝しましょう。連中が負けたのは、⾃由の驚 異的な恵みすべてを重視もしなければ尊重もしなかったからです。
それは驚く⾃由、まちが える⾃由、発明し、作る⾃由です。意外かもしれませんが、イノベーションや創造性を義務 づけたりはできないんですよ。
⼈々に何を考え、何を感じ、何を信じるかを強制できないの と同じです。そして私たちは、そういうものがまちがいなくつながっていると信じます。
そ して残念ながら、今⽇のヨーロッパを⾒るにつけ、ときには冷戦の勝者たちの⼀部に何が起 きたのか、よくわからなくなってしまいます。
ブリュッセルを⾒ると、EU 委員会の統制委員 コミッサール どもが市⺠たちに、社会不安が起きたらソーシャルメディアを閉鎖させるつもりだと警告しています。その社会不安というのは、その 連中が「ヘイト的なコンテンツ」だと判断したものを⾒つけたらすぐに、ということです。
あるいはこのドイツそのものでも、警察がオンラインで反フェミニスト的なコメントを投 稿したという容疑で、市⺠にガサ⼊れをかけたりします。インターネット上の「ミソジニー と戦う」⼀環として、というのがその⼝実です
スウェーデンを⾒ると、⼆週間前に、政府はキリスト教活動家をコーラン燃やしに参加し たとして起訴しました。その活動のため、彼の友⼈が殺されたんです。そして彼の裁判の判 事は、ゾッとする話ですがこう述べました。
スウェーデンの、⽅⾔の⾃由を保護すると称す る法律は、実は、その信仰を持つ集団のご機嫌を損ねることなしに、なんでもやったり⾔っ たりする「フリーパス」̶̶これは直接の引⽤です̶̶を与えるものではない、と。 そして最も懸念すべきことかもしれませんが、我がアメリカのまさにきわめて親愛なる 友邦、イギリスを⾒ましょう。そこでは意識についての権利からの後退で、特に宗教的なイ ギリス⼈たちの基本的な⾃由が狙い撃ちされるようになっています。
⼆年少々前に、イギリ ス政府はアダム・スミス・コナーを起訴しました。この 51 歳の整体師で退役軍⼈は、中絶 クリニックから 50 メートルのところに断って、三分にわたり黙って祈ったという恐ろしい 罪のために捕まったんです。
だれも邪魔せず、だれとも⼝をきかず、ただだまって⼀⼈で祈 っていただけです。
イギリスの警察が彼を⾒つけて、何のために祈っているのか⾔えと要求 したら、アダムは単純に、⾃分は⽣まれぬ息⼦のために祈っているのだ、と⾔いました。
彼 とその元ガールフレンドは、ずっと前に中絶していたんです。 警官たちは⼼動かされたりしませんでした。彼は政府の新しいバッファーゾーン法に違 反したことで有罪とされました。これは中絶施設から 200 メートル以内で、⼈の決断を左 右しかねない黙祷などの⾏動を犯罪にするものです。
検察に対して彼は、訴訟費⽤として何 千ポンドも⽀払うように判決を受けました。
さて、こんなのは凡ミスで、ダメに書かれた法律がたった⼀⼈に適⽤された、⼀回限りの トンデモ事例だと⾔えたらよかったんですが。でも、ちがうんですよ。この 10 ⽉、ほんの 数ヶ⽉前ですよ、スコットランド政府は、そのセーフアクセスゾーンと称する範囲に家があ る市⺠たちに⼿紙を送りつけて、⾃宅内の詩的なお祈りですら、この法律違反になりかねな いぞと警告したんです。当然ながら、政府はその読者に対し、イギリスやヨーロッパでこの 思考犯罪を犯した疑いのある同胞たちを通報するよう奨励したんです。
⾔論の⾃由は、どうも後退しているんじゃないでしょうか。それも笑える話だけじゃありませんよ、友⼈諸君、真実に関連した部分でも後退しているんです。はい、認めましょう。 検閲を⽀持する最も⼤きな声は、ときにはヨーロッパの内部からではなく、私⾃⾝の国アメ リカからきています。
前政権はソーシャルメディア企業を脅して、誤情報なるものを検閲す るようにゴリ押ししました。
その誤情報というのはたとえば、コロナウィルスが中国の研究 所から漏れた可能性が⾼い、といったものです。
私⾃⾝の政府、アメリカ政府が⺠間企業に 対し、この明らかな事実だったものを敢えて⼝にした⼈々を黙らせるよう奨励したんです。
だから本⽇私がここにきたのは、⾒⽴てを提供するためだけではありません。取引を申し 出たいんです。
そしてバイデン政権が、⾃分の思ったことを述べた⼈々を必死で黙らせたが ったのに対し、トランプ政権はまさに正反対のことをしたいし、私たちがその点で協⼒でき ればと思うんです。
ワシントンには、新しい保安官が来ましたぜ。そしてドナルド・トランプの指導の下で、 私たちはあなたたちといろいろ物の⾒⽅がちがうかもしれませんが、あなたがたが⾃分の 意⾒を公開の場で擁護する権利のためには戦いましょう。
その意⾒に賛成だろうと反対だ ろうと。
さてもちろん、いまや状況はあまりに悪化しすぎて、この 12 ⽉にルーマニアは、 いい加減な諜報機関からの疑念と、⼤陸の隣国からのすさまじい圧⼒に基づいて⼤統領選 の結果をあっさりキャンセルしてしまいました。
私が理解するところでは、ロシアの誤情報 がルーマニアの選挙に感染したというのがその主張でした。
しかし、私としてはヨーロッパ の友⼈たちに、ちょっと視野を広げてくれと⾔いたい。ロシアがソーシャルメディアの⾼校 区を買って選挙に影響を及ぼすのはいけないことだと信じてもいいでしょう。私たちもそ う思いますよ。それを世界の舞台で糾弾することだってできますよ。でもね、あなたの⺠主 主義が、外国からの数億ドルの広告で破壊されるようなものなら、そもそも⼤して強い⺠主 主義じゃなかったのでは?
さてよい報せです。私は実は、あなたたちの⺠主主義は多くの⼈がどうも信じているより も、ずっと脆くないものだと思っているんです。
そして、市⺠に⾔いたいことを⾔わせるのは、それをさらに強化すると本気で信じていま す。ということで、話はミュンヘンに戻ってきます。
この会議の主催者たち⾃らが、左派と 右派両⽅のポピュリスト政党からの代議⼠に、こうした会話への参加を禁⽌しました。さて 繰り返しますが、そういう⼈たちの⾔うことのどれか、いやどれ⼀つとして、別に私たちが 同意する必要はない。でも政治指導者が重要な有権者層を代表しているなら、少なくともそ の⼈々との対話に参加するのは私たちの責務なのです。
さて、⼤⻄洋の反対側にいる私たちの多くから⾒ると、これはますます、誤情報だの歪曲 情報だのといった薄汚いソヴィエト時代の⽤語の背後に、古い既得権益が隠れているだけ のようにしか⾒えないんです。そういう既得権益者は、別の⾒⽅を持った⼈が、別の意⾒を 述べるとか、あるいは神も恐れず別の形で投票するとか、もっと酷いことに選挙で勝っちゃ うなんて、とにかく許せないだけだというふうに⾒えるんです。 さて、ここは安全保障会議ですし、みんなご⾃分たちが今後数年で、何か新しい⽬標と沿 うように、どんなふうに防衛⽀出を増やすつもりなのか、話すつもりでいらしたんでしょう ね。
⼤いに結構、というのもトランプ⼤統領がこれ以上ないほど明⾔したように、彼はヨー ロッパの友邦が、この⼤陸でもっと⼤きな役割を果たすべきだと信じているからです。みな さんは「負担の共有」ということばはなじみがないかもしれませんが、私たちは共通の同盟 仲間でいるためには、アメリカが世界の中で⼤きな危険に曝されているところに専念する ⼀⽅で、ヨーロッパ⼈がもっと前に出てきてくれるというのが重要な⼀部だと思うんです。 しかしもう⼀つお尋ねしたい。この種の予算問題なんて、そもそも何を守るかも分かって いないようなら、どうやって考え抜く出発点にすら⽴てるんでしょうか? すでに話をする 中でいろんなことは聞いたし、この部屋にお集まりの多くの⼈々と、実に多くのすばらしい 会話をしてきました。あなたたちが、何から⾃分たちを守りたいかについてはいろいろ聞か されましたし、それはもちろん⼤切なことです。しかしそれほどはっきりしないように私に は思えたことし、そしてヨーロッパ市⺠の多くもまちがいなくそう思っているでしょうが、 ズバリ何のために⾃分たちを守っているのか、ということなんです。私たちみんながこれほ ど重要だと信じている、この共有安全保障盟約を動かす、ポジティブなビジョンというのは 何なのでしょうか? 私は⼼の底から、⾃分⾃⾝の国⺠たちの声、意⾒、それを導く良⼼を恐れていたら安全保 障はあり得ないと信じています。
ヨーロッパは多くの課題に直⾯しています。しかしこの⼤ 陸が直⾯する危機、私たちが共に直⾯していると私が信じる危機は、⾃業⾃得なんです。
⾃ 分の有権者を怖がって逃げ回るようなら、アメリカは何もしてあげられません。
それを⾔う なら、私やトランプ⼤統領を選んだアメリカ国⺠のためにあなたたちができることも、何⼀ つないんです。これからの年⽉でまともな価値あることを実現するためには、⺠主的な信任 (mandate) が必要なんです。
薄っぺらい信任は不安定な結果しか⽣まないということを、私たちは忘れてしまったの でしょうか?
しかし⾃国⺠たちの声にもっと応えるようにすることで得られる⺠主的な信任があれば、実に多くの有意義なことが実現できると思います。
競争⼒のある経済を享受 したいなら、⼿ごろなエネルギーや安定したサプライチェーンを享受したいなら、それを司 る信任が必要です。
というのもそうしたものをいろいろ享受するには、つらい選択も必要に なるのですから。 そしてもちろん、私たちはそれを熟知しています。
アメリカでは、⺠主的な信任を勝ち取 るためには、政敵を検閲したり投獄したりはできません。
それが反対政党の党⾸だろうと、 ⾃宅で祈る慎ましいキリスト教徒だろうと、ニュースを報じようとするジャーナリストだ ろうと。また、基本的な有権者たちの質問を無視してそれを勝ち取ることもできません。た とえば、だれが共有社会の⼀員になれるのか、といった質問です。
そしてここで代表されている各国⺠が直⾯する各種の重要問題の中で、⼤量移⺠ほど喫 急のものはないと私は信じています。
今⽇、このドイツに暮らす五⼈に⼀⼈は外国からの移 住者です。もちろんこれは空前の⾼さです。
ちなみに、アメリカでも似たような数字で、こ れまた空前の⾼さです。2021 年から 2022 年にかけてだけでも、EU へ⾮ EU 国に⼊った移 ⺠の数は倍増しています。そしてもちろん、その後これは⾼まる⼀⽅です。 そして状況はもうご存じですよね。パッと湧いて出たものじゃない。この⼤陸全⼟の、世 界中の政治家たちが⼗年がかりで⾏った、⼀連の意識的な決定の結果なんです。
こうした決 定がもたらした恐怖は、まさにこのミュンヘンで昨⽇⽬撃したばかりです。そしてもちろ ん、それを考えるとミュンヘンでの美しい冬の⼀⽇が台無しになった、悲惨な被害者たちの ことを考えずにはいられません。懸念と祈りを、いまもこれからも捧げ続けたい。だがそも そも、なぜそんなことが起こったりしたのでしょうか?ひどい話ですが、ヨーロッパではあまりに多く⽿にしたことだし、残念ながらアメリカで も多すぎることなんです。
難⺠申請者、しばしば⼆〇代半ばの若者で、すでに警察に⽬をつ けられていた⼈物が、群集に⾞で突っ込んで、コミュニティを崩壊させます。国⺠の連帯を 崩壊させたんです。
こういう唖然とするような後退で何度苦渋を舐めたら、私たちは道筋を 変えて、共通の⽂明を新しい⽅向に向かわせられるのでしょうか?
この⼤陸で、何百万も の何の⾝元保証もない移⺠の洪⽔に⾨⼾を開くよう選挙で⽀持した⼈間はいません。
でも 有権者が何を⽀持したかご存じですか?
イギリスではブレグジットを⽀持しました。
そし てそれに賛成か反対かはさておき、有権者はそれを⽀持したんです。
そしてますますヨーロ ッパ全⼟で、⼈々は収拾がつかなくなった移⺠を終わらせると約束する政治指導者に投票 しています。
さて、私はたまたまそうした懸念の多くに同意する者ですが、別にあなた⽅が私に同意してくれる必要はないんですよ。 ただ、⼈々は⾃分の家のことを気に掛けるとは思います。⾃分の夢を気に掛けます。⾃分 の安全と、⾃分や⼦供の⽣計をたてる能⼒は気に掛けます。 そして彼らはバカじゃない。これは私が政治にかかわった短い期間で学んだ最も重要な ことの⼀つだと思います。⼭をいくつか隔てたダボスで⽿にする話とはちがって、私たちの すべての国の国⺠は、⾃分のことを教育を受けた家畜だとか、グローバル経済の交換可能な ⻭⾞だとか思ったりはしていないんです。そしてあちこち追い⽴てられたり、指導者に無視 されたりしたくないのも、まったく意外でもなんでもない。そしてそうした⼤きな問題を投 票箱で差配するというのが、⺠主主義の仕事なんです。私は、⼈々を無視すること、⼈々の懸念を無視すること、いやもっとひどいこととして、 メディアを潰し、選挙を潰し、⼈々を政治プロセスから閉め出すことは、何も守らないと信 じています。それどころか、それは⺠主主義を破壊する最も確実な⽅法です。⼝を開いて意 ⾒を述べるのは、選挙介⼊なんかじゃない。その⼈々が⾃分の国の外で意⾒を述べたり、そ ういう⼈々がすごく影響⼒を持つ場合ですら̶̶そして信じてくださいよ、これは完全に ジョークですからね̶̶アメリカの⺠主主義が、グレタ・トンベリのお説教に⼗年耐えられ たんだから、あなたたちの⺠主主義だってイーロン・マスクの数ヶ⽉ほどで死にやしません って。 しかしあらゆる⺠主主義、アメリカだろうとドイツだろうとヨーロッパだろうと死んで しまうやり⽅があります。それは何百万もの有権者たちに、おまえたちの考えや懸念、野⼼、 救済の訴えなど、無効だとか無価値だとか、そもそも考慮にすら値しないと告げることで す。⺠主主義は、⼈々の声が重要だという聖なる原則に基づいています。
ファイアーウォール の余地はありません。この原則は、従うかそうでないかのどちらかです。ヨーロッパ⼈、 ⼈々には声があります。ヨーロッパの指導者たちは選択肢があります。そして私の強い信念 は、私たちは未来を恐れる必要などない、というものです。 ⼈々がみなさんに告げることを受け⼊れましょう、それがびっくりするようなことでも、 みなさんが同意できないことであっても。それができてはじめて、確信と⾃信をもって未来 に直⾯できるのです。国⺠がみなさん⼀⼈⼀⼈の背後についているとわかるから。そして私 にとっては、それが⺠主主義の⼤いなる魔法です。それは、こんな⽯造建築だの美しいホテルだのにあるものじゃない。共通の社会として私たちがいっしょに作り上げてきた、偉⼤な 制度機関の中にあるものでさえないんです。 ⺠主主義を信じるというのは、市⺠の⼀⼈⼀⼈が叡智と声を持つと信じることです。そし てその声に⽿を傾けるのを拒むなら、戦いでどんなに成功しても、保障される安全などない も同然です。この⼤陸だろうと他のどこだろうと、最も傑出した⺠主主義⽀持者であるヨハ ネ・パウロ⼆世教皇がかつて述べたように「恐れてはいけない」。国⺠を恐れてはいけませ ん、彼らがその指導層とちがった⾒解を述べるときですら。ご静聴ありがとうございます。 みなさんにご幸運をお祈りします。神の祝福を。
2. 2024 年 2 ⽉パネルディスカッションでのヴァンス発 ⾔
書き起こしは以下から得たが、YouTube に上がっているビデオを聞いてもこの書き起こしに不備はない。 ⼩⾒出しは後付で、そのときのパネルで出た質問の要約。 https://www.americanrhetoric.com/speeches/jdvancemunichsecurityconference2024.htm
ウクライナ⽀援のボトルネックは、お⾦ではなく軍事⽣産
同席できて光栄です。で̶̶私としては̶̶私はドナルド・トランプを代弁はできません。 ⾃分の意⾒は⾔えます̶̶そして⼤統領も私の⾔うことに同意はすると思いますが、アメ リカの元⼤統領や将来⼤統領になりそうな⼈の代弁もできませんからね。 で、まずはあれやこれやと⾔われてはいますし、私的公的な会合でもいろいろ聞かされて はきましたが、ドナルド・トランプはロシアを抑⽌するのにこの世代で最⾼の⼤統領だった だろうということは忘れちゃいけません。
実際、過去 20 年でロシアが外国を侵略しなかった唯⼀の時期は、ドナルド・トランプが ⼤統領だった四年間です。
そして実に多くの⼈は、トランプや私や、その他の⼈々がプーチ ンのポチだと糾弾しますが、おもしろいことにドナルド・トランプが̶̶じゃないや̶̶ウ ラジーミル・プーチンが次の⼤統領になってほしいと⾔ったのは、ドナルド・トランプではなかったんですよ。ジョー・バイデンのほうが望ましい候補だと⾔ったんです。先が読める からって。
さてヨーロッパの安全保障の問題ですが、ここにはヨーロッパが本当に⽬を覚ますべき 根本的な問題があると思います。
そして私は̶̶これは友情の精神で述べることであって、 批判じゃありません。というのも私はアメリカが NATO から脱退すべきだとは思わないし、 ヨーロッパを⾒捨てるべきだとも思ってませんから。でも、⽅向転換はすべきだと思ってい ます。
アメリカは東アジアにもっと注⼒しなくてはならない。
それが今後 40 年のアメリカ の外交政策になるし、ヨーロッパはその事実に⽬を覚ますべきなんです。
さてまずいくつか事実を提⽰しましょう。
第⼀に、アメリカから⾒たウクライナ問題。
そ して̶̶そして私はアメリカの世論の⼤半を代表しているとは思いますが、このミュンヘ ン会議にくる上院議員たちの⼤半とは意⾒がちがいますが、私の意⾒は、はっきりした終わ りが⾒えないというものです。そしてアメリカ⽀援の根本的な制約要因は、お⾦ではなく、 弾薬なんです。アメリカは、ちなみにこれはヨーロッパにも当てはまりますが、東欧と中東 と、東アジアでの潜在的な紛争を⽀援できるだけの弾薬が作れない。
だからアメリカは根本 的に制約されているんです。
さていくつかすごく̶̶ものすごく具体的な細部を挙げましょう。
PAC-3、つまりパトリ オット迎撃ミサイルですが、ウクライナは⼀ヵ⽉でアメリカの年間⽣産量を使い果たしま す。ね? パトリオットミサイルシステムは、5 年分のバックオーダーが積み上がっていま す。
155 ミリ砲弾は 5 年以上のバックオーダーです。
アメリカ国内では 2025 年末までに弾 薬⽣産量を⽉産 10 万に強化する話をしています。
ロシアはいまこの瞬間に⽉産 50 万近い。 だからここでのウクライナ関連の問題は、アメリカが⼗分に武器を作れないということな んです。
ヨーロッパだって⼗分に作れない。
そしてこの現実は、アメリカの政治的意思は、 どれだけお⾦を刷ってヨーロッパに送れるかという問題より遥かに重要なんです。
そして̶̶お答えする最後の論点ですが、というのも私も……えー、トランプの発⾔を聞 いたのはわかっているし、ねえ、それを批判して「ふん、トランプはヨーロッパを⾒捨てる んだ」とか⾔ってますよね。私は、それは全然まちがってると思います。トランプは実際に は、⽬を覚ませといってるんです。
ヨーロッパが⾃分たちの安全保障でもっと⼤きな役割を 果たさなければと⾔っているんです。
ドイツは今年、GDP の 2%以上を⽀出します。
もち ろんそれは、アメリカでは本当にがんばらないと実現できないことで、やっとそのしきい値 を超えたところです。
しかし、話は⽀出額だけじゃない。ドイツは今すぐに、機甲旅団をいくつ船上に投⼊でき ますか? ⼀つですかね。⼀つかな。ね? ヨーロッパの問題は、⾃前で⼗分な抑⽌を提供し ないということなんですよ、それはヨーロッパが⾃前では⼗分な̶̶⾃分の安全保障につ いて⾃らイニシアチブを取らないからなんです。アメリカの安全保障の傘のおかげで、ヨー ロッパの安全保障は衰退したと思うんです。
繰り返しますが、これはアメリカがヨーロッパを⾒捨てたいということじゃない。⾔いた いのは、アメリカは国として東アジアに注⼒する必要があるし、ヨーロッパではヨーロッパ の同盟国にもっと頑張ってほしいということなんです。
私は̶̶ありがたかったのは̶̶ こちらのイギリスの友⼈ [デヴィッド・ラミー] が⾔ったことです。そしてもちろん、イギ リスは数少ない例外の⼀つで、過去⼀世代にわたりきわめて有能な軍を戦場に投⼊してく れました。しかしそれはヨーロッパの他の国については⾔えません。それは変えてもらわな いと。
ウクライナ戦争では和平交渉が必要
プーチンがヨーロッパの⽣死に関わる脅威だという考えと、同盟国に GDP の 2%を防衛 費に使わせようとしているという考えを並べると、かなり厳しい。
この両者はかなりの緊張 関係にある。私はウラジーミル・プーチンがヨーロッパの⽣死に関わる脅威とは思わない が、脅威である限り、ヨーロッパは⾃分たちの安全保障にもっと強い役割を果たすべきだと いうことになる。
これが̶̶これが第⼀。しかし̶̶しかし改めて「ウクライナを⾒捨てる」という問題に 話を戻すことになります。もし議会でいま審議されているパッケージ、ウクライナへの 610 億ドル補助⽀援が可決しても、正直⾔って、それが戦場の現実を根本的に変えたりはしない んだ。いまウクライナに送れる弾薬の量はきわめて限られている̶̶繰り返しますが、アメ リカの意思がないとかアメリカがケチだとかいうせいではなく、アメリカの製造能⼒のせ いです。さっき強調したバックオーダー、これは将来の問題じゃない。いまここの問題だし、 それが本当の制約になっている。 だから私が⾔ってるのは、こういう現実の制約がある中で、ウクライナでの現実的な成果 って何だ、ということです。
今後 18 ヶ⽉も、過去 18 ヶ⽉に送ったような兵器を送れるの か?
端的に無理です。アメリカ議会がどれだけ⼩切⼿を切っても、その物理的な制約があ る、わかりますか?弾薬は̶̶弾薬は戦争では⼤きな問題です。
まだ語っていないことと しては、もちろん、兵⼒も戦争では重要だということで、ウクライナ⼈がその⾯できわめて 限られているのも分かっていますよね。 だから私たちの議論、少なくともここでの私の主張は、こういう直⾯する現実、弾薬と兵 ⼒のきわめて実物的な制約を前にして、現実的に何が達成できると考えるべきで、それを具 体的にいつ達成できると考えるのか、ということなんです。そして私の主張としては、なあ、 現実的に達成できるのは、何らかの交渉による和平だろうということなんです。
ウクライ ナ、ヨーロッパ、⽶国は、交渉の席につくインセンティブがあると思う。それを実現させよ う。これは交渉による和平で終わる。問題は、それが交渉して終わるのはいつで、それがど んな条件のものになるかということです。
敵との対決におけるアメリカ利害の優先について まずはじめに、私は AUKUS (英⽶豪安全保障パートナーシップ) のファンです。そし てナワリヌイの死についていえば、いや彼は明らかに勇敢な⼈物です。その死は悲劇です。 彼が投獄される理由はなかったと思う。獄中で殺されるべきではなかったと思う。それをや ったプーチンは⾮難する。 しかし問題は、それで別にプーチンについて何か新しいことがわかるわけじゃないんで す。 プーチンが親切で優しい⼈物だなんて⾔ったことは⼀度もない。彼は独特な利害を持つ ⼈物で、アメリカはその独特な利害の⼈物に対応しなくてはならないと論じた。彼と考えを 同じくする必要なんかない。そんな必要はない̶̶それを⾮難できるし、実際そうすること も多い。が……あいつが悪者だからといって、基本的な外交や優先順位づけができないとい うことにはならない。世界中に悪い奴はたくさんいるし、私としてはヨーロッパよりは東ア ジアの問題の⼀部のほうに関⼼があるんです。
⻄側の武器製造能⼒、脱⼯業化によるリスク、GDP などの指標では 国の軍事⼒が測れないこと
さて、前に出た質問らしきものの⼀つに答えましょう。というのは、『ヘリテージ 2025』 についての質問です。
私は̶̶それが NATO について何を⾔っているかは漠然とは知って いますし、それがここで私の主張してきたことと整合しているのも知っています。ヨーロッ パは安全保障でもっと⼤きな役割を果たせということですね。そしてそれは、ヨーロッパな んかどうでもいいと思ってるからじゃない……⾃分たちが希少性の世界に暮らしていると いうことを認識する必要があるからです。
この⼿の質問を聞いたり、これまでの私的な会話の実に多くを聞いたりしていると、ミュ ンヘン安全保障会議でやたらに⽀配的だと思う態度の⼀つが、アメリカ超⼤国はあらゆる ことを同時にこなせるというものなんです。そして私が⾔っているのは、ここは希少性の世 界であり、アメリカの武器製造能⼒や決定的な戦争装置の製造能⼒があって、希少性の世界 なんだから、私としてはみんなに⽬を覚ましてほしいんですよ。その希少性の世界では、ウ クライナと中東と東アジアの有事には対応できない。まったく筋が通らない。兵器製造の点 で計算が合わないんです。
それと̶̶⼀つ最後に⾏っておきたいのは、この部屋でいろいろ⾃⼰満⾜げな⾃画⾃賛 が聞こえてくるし、故郷アメリカでもそういう会話はありましたから、これはヨーロッパだ けの批判ではなく、うちらの GDP はロシアよりこんなにでかいぞ、という話でした。はい はい、うちらはロシアよりは豊かです。うちらの国⺠は平均的なロシア国⺠よりいい⽣活を しています。それは確かに祝って誇るべきことです。しかし戦争は GDP やユーロやドルで勝つものじゃない。
兵器で勝つんだし、⻄側は⼗分 に兵器を作っていない。
さて私は̶̶別にドイツ叩きをしたいわけじゃなくて、ドイツは⼤ 好きなんですが、ラングさん [ドイツの⼥性国会議員] がさっき⾔ったことに答えましょう。 ねえ、ドイツは NATO の中で、あのバカげたワシントン・コンセンサスにしたがわず、70 年代、80 年代、90 年代に国を脱⼯業化に任せなかった唯⼀の国ですよねえ。それなのに、 まさにプーチンがどんどんどんどん強⼒になったその瞬間、ロシア軍がヨーロッパ諸国を どかどか侵略しているときに、まさにそのときになんでドイツは脱⼯業化なんか始めるん ですか?
ドイツの製造業就業者数を⼗年前と⽐べてみなさいよ。
ドイツでの重要原材料⽣産の⽔ 準は⼗年前と⽐べてどうですか。脱⼯業化はやめないと、ヨーロッパには成功してほしいで すよ。でもヨーロッパは⾃分たちの安全保障にもっと⼤きな役割を果たさないといけない し、⼯業なしにそれは無理なんです。
米副大統領発言が波紋 欧州反発、新たな火種に―ミュンヘン安保会議
時事通信 外信部2025年02月17日06時57分配信
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【ミュンヘン時事】バンス米副大統領がミュンヘン安全保障会議で欧州の同盟国を激しく非難したことが、波紋を呼んでいる。ドイツのショルツ首相は15日、「われわれの民主主義と選挙への介入は受け入れられない」と反発。トランプ米政権発足後、亀裂が深まる米国と欧州の新たな火種となる恐れがある。
米副大統領、異例の欧州批判 「脅威はロシアでない」と主張―ミュンヘン安保会議
バンス氏は14日の演説で、欧州における偽情報やヘイトスピーチ(憎悪表現)などの規制を「言論の自由の弾圧」と非難。さらに23日の独総選挙を前に、移民排斥を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への実質的な支持も表明した。
これに対し、ショルツ氏は戦前にナチス台頭を許した反省に触れ、「ファシズムも人種差別も侵略戦争も、決して繰り返さない」と強調。ナチスが犯した罪をAfDが矮小(わいしょう)化しているとして、「『決して繰り返さない』という誓いとAfDへの支持は両立しない」と語った。
支持率トップの保守野党キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首もバンス氏を批判し、「われわれは特定のメディアを記者会見から排除しない」と述べた。メキシコ湾を「アメリカ湾」と表記しなかったとして、米AP通信を記者会見から排除したトランプ政権をやゆした形だ。
欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表(外相)は「われわれに戦いを挑もうとしているようだ」と指摘。
フランスのバロ外相も「誰にもわれわれのやり方を押しつけないが、誰もわれわれにやり方を押し付けることはできない」と嫌悪感をあらわにした。
欧州メディアも発言を大きく報じた。仏紙ルモンド(電子版)はバンス氏の発言を「欧州に対する政治思想上の宣戦布告」と伝えた。
ヘイト規制「検閲」 米副大統領、異例の欧州批判 安保会議
毎日新聞2025/2/16
米国のバンス副大統領は14日、ドイツで開幕したミュンヘン安全保障会議で演説し、欧州諸国に対し、ヘイトスピーチ規制を言論の検閲と主張するなど異例の批判を繰り広げた。会議の主要議題であるウクライナ情勢にはほとんど触れなかった。「米国第一主義」を掲げるトランプ政権と欧州の亀裂が鮮明になった。
一方、バンス氏は「(トランプ大統領が)欧州の友人たちが未来に向けてより大きな役割を果たすと信じている」とも述べ、欧州各国に防衛費の増額を求めた。
16日までの同会議では、世界約60カ国の首脳や閣僚が外交・安全保障問題について話し合う。バンス氏は演説で、欧州が直面する脅威は「ロシアでも中国でもない。内側にある」として、「検閲」を批判。現在の欧州の政治家らは「自分と異なる考えの人が意見を表明したり、投票したり、選挙で勝ったりすることを好まない」との持論を語った。
ミュンヘン安全保障会議 米とウクライナが戦闘終結めぐり主張
2025年2月15日 9時18分 安全保障
世界各国の首脳や閣僚が安全保障をめぐり意見を交わす国際会議がドイツで始まり、アメリカのバンス副大統領は、ウクライナにおける戦闘の終結は実現可能だという考えを示しました。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナ抜きで戦闘の終結に向けた交渉が進められることは受け入れられないという立場を強調しました。
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ドイツ南部のミュンヘンでは14日、世界各国の首脳や閣僚が安全保障をめぐって意見を交わすミュンヘン安全保障会議が3日間の日程で始まりました。
初日はアメリカのバンス副大統領が演説し、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり「トランプ政権はヨーロッパの安全保障に高い関心を持っており、ロシアとウクライナの間で合理的な和解に達することができると信じている」と述べ、戦闘の終結は実現可能だという立場を示しました。
また「今後数年間でヨーロッパがみずからの防衛のために大きく踏み出すことが重要だと信じている」と述べ、ヨーロッパ各国に対して国防費の増額などに取り組むよう求めました。
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一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、別の会場で行われたイベントで発言し、アメリカとロシアが、ウクライナにおける戦闘の終結に向けた交渉を始めることで合意したことについて「どんな決定もウクライナ抜きではありえない。これはわれわれの譲れない立場だ」と述べました。
さらに「私はロシア側と会談は行うが、相手はプーチン大統領だけだ。それもトランプ大統領やヨーロッパ各国と戦闘の終結に向けた共通の計画で合意したあとだけだ」などと強調しました。
ゼレンスキー大統領「米は和平計画 準備できていないのでは」
ウクライナのゼレンスキー大統領は現地で会見し、アメリカのトランプ大統領による和平交渉の仲介に向けた動きについて問われ「アメリカは和平に向けた計画の準備ができていないのではないか。トランプ大統領には『いつでも話し合う準備ができている』と伝えてある」と述べました。
そして、今後については「私はアラブ首長国連邦とサウジアラビアを訪れ人道支援や捕虜交換について話し合うほか、トルコでエルドアン大統領に会う予定だ」と明らかにする一方、「現地ではロシアともアメリカとも会わない」と述べ、和平交渉の見通しは立っていないとしました。
その上で、侵攻を続けるロシア軍について「2000人から3000人ほどの部隊が、北朝鮮からロシア西部クルスク州の前線に移送される準備が進められている」と述べ、北朝鮮の部隊の追加派兵が近いという見方を示しました。
中国 王毅外相「全当事者が和平交渉プロセスに参加すべき」
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ミュンヘン安全保障会議に出席している中国の王毅外相は、14日の演説後の質疑で、ロシアによるウクライナ侵攻について、対話と交渉によって解決されるべきだとする立場を改めて示した上で「中国はアメリカとロシアが合意に達した内容をはじめ、平和に向けたあらゆる努力を歓迎する」と述べました。
そのうえで「利害関係者を含むすべての当事者が、適切なタイミングで和平交渉のプロセスに参加すべきだと考えている。ヨーロッパが重要な役割を果たし、ともに危機の根本的な要因の解決に取り組むことが、これまで以上に必要だ」と述べ、各国の関与の必要性を強調しました。
米 バンス副大統領 欧州の言論の自由や移民政策 強く批判
アメリカのバンス副大統領は14日の演説で、ヨーロッパにおける言論の自由や移民政策を強く批判しました。
バンス副大統領は演説で「ヨーロッパに対し最も懸念している脅威は、ロシアでも中国でもない。ヨーロッパ内部からの脅威で、アメリカと共有する最も基本的な価値観から後退していることだ」と述べました。
さらにヨーロッパでは移民が無秩序に流入し、有権者は政治家に対応を求めていると指摘した上で、有権者の懸念にこたえないことは、民主主義の破壊だと批判しました。
また、去年行われたルーマニア大統領選挙をめぐり、ロシアの偽情報が選挙の結果に影響を与えたと指摘されていることについて「外国からの数十万ドルのデジタル広告で民主主義が破壊されるなら、そもそもその民主主義はそれほど強くなかったということだ」と主張しました。
このほか、今回の会議に移民や難民に排他的なドイツの一部の政党などが招かれなかったことについて「政治指導者たちが重要な支持層を代表している場合、対話に参加する義務がある」などと述べ、主催者の対応に疑問を投げかけました。
一方、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるカラス上級代表は、会議のイベントでバンス氏の発言について問われ「私たちに戦いを挑もうとしているように聞こえるが、私たちは友人と戦いたくない」と述べました。
ドイツのピストリウス国防相は、ドイツの民主主義が疑問視されたとし「受け入れられない」と不快感を示しました。
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