政治講座ⅴ1846「使用済核燃料を『核のごみ』とせずに再処理してエネルギーの再資源にする構想」
化石燃料の消費で地球温暖化が進み、地球環境に変化をもたらしている。喫緊の課題である。CO₂を出さずに快適な生活を営むには原子力発電は欠かせないと思うが、「使用済み核燃料」を「核のゴミ」とせずに再処理をして、有効利用すべきである。自然界に存在する濃度の無害なトリチウム水と同水準にした「処理水」を「汚染水」と言う中国の妨害行動に似ている。日本国内より6.5倍の放射性トリチウムを放出している中国原発などに注視すべきであろう。
中国のプロパガンダに乗せられて騒ぎ立てる報道機関や左派の勢力とに注意が必要であろう。日本の産業を潰そうとする左派勢力も要注意であろう。
今回はそのような報道記事を紹介する。
「核のごみ」は青森・むつ市へ、生まれた電力は首都圏へ…使用済み核燃料の「中間貯蔵」が始まろうとしている
各原発で保管される使用済み核燃料。容量の上限に近づく原発もある中、青森県むつ市で「中間貯蔵」が始まろうとしている。使用済み核燃料を持ち込み、再処理まで一時保管する試み。昨夏に山口県上関町でも浮上したが、むつで具体化すると原発敷地外で初の中間貯蔵となる。ただ地元には、最終処分場になる危惧がある。さらにいえば、持ち込むのは東京電力柏崎刈羽原発の分。首都圏の人々も無関心でいられない。(宮畑譲、西田直晃)
◆「核のごみ捨て場にしないで」住民の不安
「(核燃料サイクルの)政策の実現性はない。下北半島を核のごみ捨て場にしない。搬入に反対する」「(中間貯蔵施設からの)搬出先が不明確。到底、安心できない。最終貯蔵させない条例をつくってほしい」
中間貯蔵計画を巡り、3日に地元のむつ市内で開かれた住民説明会。参加者からこんな意見が出た。
会には中間貯蔵施設の運営会社や県、経済産業省、東京電力の担当者らが説明に参加。住民が紙に書いた質問に応答する形式で進み、終盤に口頭での質疑も。いずれも、施設の行く末を案じる意見が相次いだ。
使用済み核燃料の搬入が予定される中間貯蔵施設は、下北半島にあるむつ市の市街地の北約10キロに位置する。下北半島は建設中の電源開発大間原発や東京電力東通原発、運転停止中の東北電力東通原発に加え、六ケ所村で建設中の再処理工場もあり、「原子力半島」とも呼ばれる。
◆26回も完成延期…再処理工場は稼働メド立たず
中間貯蔵施設は東電と日本原子力発電が出資し、2005年に設立した「リサイクル燃料貯蔵(RFS)」が運営する。RFSは今年7〜9月の間に使用済み核燃料の集合体69体が入った金属製の容器1基の搬入を目指す。今のところは、26年度までに計8基、ウラン重量で96トンを貯蔵する計画になっている。
中間貯蔵施設が必要となるのは、核燃料サイクルが行き詰まっているからだ。
国は使用済み核燃料からプルトニウムやウランを再処理して取り出した上で、混合酸化物(MOX)燃料に加工し、再利用する仕組みを描く。
しかし六ケ所村の再処理工場は、完成延期が26回に上る。稼働のめどは立っていない。各原発からは使用済み核燃料を搬出できず、貯蔵プールに保管するが、満杯になれば運転できなくなる。そんな事情があり、使用済み核燃料を持ち込み、再処理まで保管する中間貯蔵施設が求められる。
◆「最終処分地になるのでは…という疑問が当然湧く」
ただ説明会に参加した一人で、脱原発を目指す市民団体「核の中間貯蔵施設はいらない!下北の会」の栗橋伸夫事務局長は「核燃料サイクルの整合性がとれていないことは原発を推進する側も分かっているはず。こんなのはサイクルでも何でもない」と吐き捨てる。
再処理工場が稼働しなければ、搬入された使用済み核燃料の行き先がなく、中間貯蔵施設が「最終貯蔵施設」となりかねない。
そのため説明会でも「搬入先が決まらない場合、最終処分地になるのではないかという疑問が当然湧く。最終処分地に絶対ならないという約束をすることができるのか」と質問が上がり「国策に協力することが本当に市民にとって幸せになることだと考えますか」と問いただす訴えも出た。
◆「貯蔵期間50年」その後、どこへ?
搬入を開始するには、青森県、むつ市、RFSの3者で安全協定を結ぶことになっている。協定案では、使用済み核燃料の貯蔵期間は50年とし、終了前には搬出すると定める。
しかし、3日の説明会では「50年後、どうなるのか不安。再処理工場に運ぶというが、クエスチョンマークだ」「50年を待たずに貯蔵を返上するような考え方をはっきり示してほしい」といった意見が相次いだ。
栗橋さんも「どこに持っていくか、協定書には書いてない。一番の懸念であるにもかかわらずだ。国策なのだから、法律で定めるべきだ」と憤る。
◆柏崎刈羽原発の使用済み核燃料が運ばれる予定
「こちら特報部」が改めてRFSに取材すると「その時に稼働する再処理施設に搬出する。どこになるかは(使用済み核燃料の)所有者の判断」と答えた。
青森にある中間貯蔵施設だが、その地域に限った話ではない。
搬入を予定するのは、新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発の使用済み核燃料。東京電力は本年度分の詳細な時期について「核物質防護に関わるため、事前に公表できない」として、事後の公表を検討中という。
◆「負担をむつ市になすり付けるだけ」
柏崎刈羽原発の再稼働に前のめりなのが岸田政権。だが、1〜7号機の使用済み核燃料を保管するプールの貯蔵率は81%に達した。特に再稼働を優先する6、7号機は90%を超えており、新潟県柏崎市の桜井雅浩市長は「6、7号機を80%以下にすること」を同意の条件として示している。
再稼働に慎重な新潟市の中山均市議は「青森の中間貯蔵施設を利用し、再稼働の障壁の一つを取り払いたいのだろう」と推し量る一方、「本質的な問題解決とは程遠い。目の前の使用済み核燃料を消しても、負担をむつ市になすり付けるだけ」と断じる。
改めて浮かぶのが「負担の構図」だ。
◆「二重、三重のおぞましい構造」
東京を中心とした首都圏が電力消費地となるのが東京電力の柏崎刈羽原発だ。ただ稼働するほどに使用済み核燃料の扱いに困り、中間貯蔵が想定される青森にしわ寄せが及ぶことになる。
中山氏は「恩恵のない原発が新潟に、今後が疑わしい中間貯蔵が青森に押し付けられる。二重、三重のおぞましい構造だ」と憤りの言葉を口にする。
東京経済大の礒野弥生名誉教授(環境法)は、昨夏に山口県上関町で浮上した中国電力と関西電力の中間貯蔵計画に触れ「今回と全く同じ構図」と強調する。
◆「負担が過疎地に転嫁される」
この計画は、福島第1原発事故後に原発を再稼働させてきた関電が、立地自治体の福井県から迫られた使用済み核燃料の県外搬出を実現するためだった。
「立地県は使用済み核燃料の存在を嫌がり、負担が過疎地に転嫁される」
むつ市、上関町の住民がいずれも「最終処分場にされる可能性」を危ぶむことについては「必要な説明や議論を省いており、欺瞞(ぎまん)と受け取られても仕方ない。地元の意見を拾い上げたのか疑問だ」と指弾する。
◆大都市から離れた困窮地域に「犠牲が組み込まれる」
いびつな負担の構図は、東日本大震災後にも取り沙汰された。
首都圏に恩恵をもたらすため、福島に原発が立地された一方、「原発事故により、福島が強いられてきた『犠牲』が浮き彫りになった」と東京大の高橋哲哉名誉教授(哲学)は説く。
「原発に組み込まれる犠牲は、大都市から離れた困窮地域が背負うことになる。関連施設が集中する下北半島はその典型」とも語り、こう続けた。
「一種の差別構造でもあり、国の経済・エネルギー政策の中で常にリスクを押し付けられている。原発政策全般を根本的に再検討しなければ、局地的な犠牲の強制が繰り返される」
◆デスクメモ
中山さんが語った「二重、三重のおぞましい構造」という言葉が痛い。首都圏のため、原発を新潟に建て、使用済み核燃料を青森に託す。東京で暮らす一人として「他地域に多大な迷惑をかけてまで原発を稼働させるべきか」と思わずにいられない。消費地の首都圏こそ声を上げねば。(榊)
2020-03-06
「六ヶ所再処理工場」とは何か、そのしくみと安全対策(前編)
これまでスペシャルコンテンツでは、原子力発電所(原発)で使い終えた燃料を再度活用する「核燃料サイクル」についてご紹介してきました。この核燃料サイクルに必要な、使用済燃料の再処理をおこなう「再処理工場」の建設が、青森県六ヶ所村で進められています。“再処理”とはいったいどのようなことをするのでしょう?また、再処理工場ではどのような安全対策がとられているのでしょうか?現地の写真をまじえながらお伝えします。
あらためて知りたい、「六ヶ所再処理工場」とは?
原子力発電で使い終えた燃料(使用済燃料)には、ウランやプルトニウムといった再利用可能な物質が約95~97%含まれています。このウランやプルトニウムを使用済燃料の中から取り出して(再処理)、ほかの物質と混ぜ合わせ「MOX燃料」と呼ばれる燃料に加工して、もう一度発電に利用する取り組みが「核燃料サイクル」です。
これにより、現在の「軽水炉」と呼ばれるタイプの原発における核燃料サイクルでは、使用済燃料を再処理せずに直接処分する場合と比べて、以下のことが可能になります。
1~2割の資源の有効利用をはかることができる
高レベル放射性廃棄物の量を4分の1に低減できる
高レベル放射性廃棄物の有害さの度合いが天然ウラン並まで低減するのに必要とする期間を、10万年から8千年に短縮できる
詳しく知りたい
核燃料サイクルの今
この中で重要な役割を果たすのが、ウランやプルトニウムを取り出す「再処理工場」です。現在、日本で使用されているMOX燃料は、すべてフランスで加工されたものですが、今後、使用済燃料の再処理を日本国内でおこなうべく、現在、青森県六ヶ所村で工場の建設が進められています。これが、日本原燃株式会社が運営する「六ヶ所再処理工場」です。
六ヶ所再処理工場の建設は、1993年から始まりました。2006年から開始した使用済燃料の試験的な再処理(アクティブ試験)では、ウランとプルトニウムを取り出した後に残る高レベル放射性廃液を、「ガラス溶融炉」内で溶かしたガラスと混ぜ合わせ、ステンレス製の容器に流し込み冷やし固める過程(ガラス固化)で、ガラスが流れにくくなり、「ガラス溶融炉」のノズルが詰まるなどのトラブルが発生して、試験がしばらく停止しました。しかし、2013年に日本原燃は「ガラス溶融炉」の運転管理方法を改善することで技術的な課題を克服し、安定してガラス固化作業をおこなうことができることを確認しました。
以降は、2013年に設けられた、原子力施設に対する新しい規制基準への適合審査に対応しており(「原発の安全を高めるための取組 ~新規制基準のポイント」参照)、
「『使用済燃料』のいま~核燃料サイクルの推進に向けて」でもご紹介した通り、2021年度上期の竣工に向けて、現在、工事と審査が進められています。完成すれば、年に800トンの使用済燃料を処理できる能力を持つ見通しです(フル稼働時)。
「再処理」っていったい何をするの?
六ヶ所村には、万が一の時のために石油を貯めておく「国家石油備蓄基地」や、大規模風力発電など、さまざまなエネルギー関連施設が点在しています。その六ヶ所村の真ん中あたりに、六ヶ所再処理工場を含む「原子燃料サイクル施設」があります。
敷地内には、再処理工場のほか、「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」(1995年操業)、「低レベル放射性廃棄物埋蔵センター」(1992年操業)、「ウラン濃縮工場」(1992年操業)があります。また、MOX燃料工場も2022年度上期竣工に向け建設中です。
再処理は、どのようなステップで進められるのでしょうか。まず、原発の使用済燃料が、「キャスク」と呼ばれる容器に入れられて、再処理工場に運ばれてきます。使用済燃料は、水中でキャスクの中から取り出され、プールで冷却・保管されます。
再処理工場では、プールから取り出した使用済燃料を約3~4cmほどに切り(せん断)、溶かして燃料と金属片などを分けます。その後、燃料が混じった溶液の中からウランとプルトニウムだけを分離します。さらにウランとプルトニウムを分け、それぞれ精製します。
次に、ウランは粉末の状態で「ウラン酸化物」として回収し、貯蔵します。また、プルトニウムは「核不拡散」の観点から核兵器の製造へ転用しにくくするため、同じ量のウランと混合・処理し、「ウラン・プルトニウム混合酸化物」として回収し、貯蔵します。この「ウラン・プルトニウム混合酸化物」を利用して、MOX燃料がつくられるのです。
一方、ウランとプルトニウムを分離した後に残る高レベル放射性廃液は、ガラスに溶かし固められ、「キャニスター」というステンレス製の容器に閉じ込めた「ガラス固化体」の状態で、六ヶ所再処理工場内でおよそ30年~50年間貯蔵した後、青森県外において、地下300mより深い安定した地層中に処分されることになっています。
「六ケ所原燃PRセンター」では、この工程を模型で再現したものを見ることができます。PRセンターは誰でも見学が可能です(スタッフによる案内や団体での見学を希望する場合は要予約)。
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「六ケ所原燃PRセンター」にある模型。せん断された使用済燃料は硝酸溶液で溶かされたのち(左)、ウランとプルトニウムだけが分離されていく(右)
(出典)日本原燃株式会社
2020-03-19
「六ヶ所再処理工場」とは何か、そのしくみと安全対策(後編)
原子力発電所(原発)で使い終えた燃料を再度活用する「核燃料サイクル」。
「『六ヶ所再処理工場』とは何か、そのしくみと安全対策(前編)」では、使用済燃料の再処理をおこなうフェーズを担い、現在青森県六ヶ所村で建設が進められている「再処理工場」について、どのようなことをおこなうのかご紹介しました。後編では、六ヶ所再処理工場が取り組んでいる安全対策についてお伝えします。
再処理工場の安全性は?
「『六ヶ所再処理工場』とは何か、そのしくみと安全対策(前編)」でお伝えした通り、六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場では、原子力発電所(原発)で使い終えた燃料(使用済燃料)の中からウランとプルトニウムを取り出し(再処理)、ほかの物質と混ぜ合わせ「MOX燃料」に加工します。
六ヶ所再処理工場は、現在、竣工に向けて工事と審査が進められているところですが、各原発からの使用済燃料の受け入れなど、一部運用を開始している施設もあります。それでは、六ヶ所再処理工場を含む六ヶ所村の原子燃料サイクル施設では、どのような安全対策がはかられているのでしょうか?
地震など災害への備えはだいじょうぶなの?
原子力施設に対しては、東日本大震災の反省を受けて2013年に新しい規制基準(「原発の安全を高めるための取組 ~新規制基準のポイント」参照)がもうけられました。
この新規制基準は、大規模な自然災害などへの対策を従来の基準から強化したり、新たに「重大事故」への対策などを求めたりしています。重大事故とは、あらかじめ設計した安全対策が機能せず、周辺に放射性物質を大量に放出するおそれがある事故のことです。この新規制基準は六ヶ所再処理工場にも適用されるため、新規制基準に適合させるべく、さまざまな対策が現在進められています。
再処理施設における新規制基準の全体図
まず、従来の基準から強化された、大規模な自然災害などへの対策です。具体的には、地震や津波、火山、竜巻、航空機の落下などが考えられます。このうち、たとえば、
津波については、もともと六ヶ所再処理工場は55メートルの高台に位置しており、海からの距離も5キロメートルと、津波の影響を受ける恐れのない場所に建設されています。
竜巻については、対策として、気体を外に出す「主排気筒」や屋外に設置されたダクトには、「飛来物防護板」を設置します。また、安全上重要な「安全冷却水系」の冷却塔などについては、鋼鉄ネットを用いた「飛来物防護ネット」を設置します。
航空機の落下については、六ヶ所再処理工場は、三沢空港および定期航空路から離れていることから、航空機が墜落するというような事故の可能性はきわめて小さいと考えられます。ですが、敷地から約10km離れたところで、訓練飛行がおこなわれていることを配慮し、自主的に、万が一航空機が衝突しても施設の安全に影響がでないように対策をしています。具体的には、施設内部の設備に影響がでないように、施設の外壁を堅固な鉄筋コンクリート製にしたり、施設の外にある冷却設備が同時に損傷しないように、同じ設備を十分離れた位置に複数配置したりしています。
飛来物防護ネットのイメージ
また、施設の安全を保つためには、常に電気を供給する必要があります。そのため、自然災害などにより外部電源が途絶えることのないように、送電線を2ルート3回線用意するなど多重化するとともに、万が一外部電源が途絶えた場合に備えて、非常用電源を複数台設置しています。加えて、移動ができる電源車も自主的に用意することで、電源の多様化をはかっています。
次に、新たに追加された「重大事故」への対策です。たとえば、再処理工場にある貯槽などでは、溶液に含まれる放射性物質が熱を発しています。そのため、溶液が沸騰・蒸発すると(重大事故の発生)、放射性物質を含む蒸気が発生し、放射性物質が外部に放出されるリスクが考えられます。これに備えて、冷却塔の冷却水によって、貯槽内の冷却系統を循環する水の温度を下げることで、常に溶液を冷却しています。さらに、万が一に備えて、次のような3重の対策をおこないます。
①発生防止 ~あらかじめ設計した安全対策が機能しなかったとしても、重大事故が発生することを防ぐ~
万が一電源が失われて、冷却塔が機能しなくなったとしても、溶液の沸騰・蒸発を防ぐことができるように、電源を必要としない運搬可能なポンプ(可搬式ポンプ)を使って、直接冷却系統へ通水するといった対策をおこないます。
②拡大防止 ~重大事故にいたったとしても、事故の拡大を防ぐ~
万が一、可搬式ポンプから直接冷却系統へ通水することができなくなり、溶液が沸騰・蒸発しはじめたとしても、その進行を緩和し、放射性物質を含む蒸気の発生を抑えることができるように、可搬式ポンプを別の配管につなぎ、貯槽内に直接注水するといった対策をおこないます。
③影響緩和 ~重大事故にいたったとしても、周囲への影響を可能なかぎり緩和する~
放射性物質が外部に放出されることを抑え、周囲への影響を可能な限り緩和することができるように、可搬型のフィルタで放射性物質を除去したり、大型のポンプ車やホースを使って施設へ直接放水したりするといった対策をおこないます。
重大事故対策の例
施設の近くには沼や川がありますが、工場からそれらへのアクセスルートが複数用意されており、水源の確保がはかられています。
万が一ガレキなどが散乱した際にもアクセスルートを確保できるよう、ホイールローダーなども多数用意されています。また、放水砲も準備されているほか、貯水槽も建設中です。
操業による放射性物質の影響は?
このように、六ヶ所再処理工場を含む六ヶ所村の原子燃料サイクル施設では、東日本大震災から得た教訓をもとに、安全性を高めるためのさまざまな対策が講じられています。では、そもそも再処理工場が操業する場合には、放射性物質による健康への影響はどのくらいあるのでしょうか?
再処理工場では、運転や点検などにともなって、気体および液体の放射性廃棄物が発生します。規制基準では、これらによる影響を「年間1ミリシーベルト以下」にすることに加え、努力目標として、原発の運転時に目標値とされている「年間0.05ミリシーベルト」をできる限り下回るようにすることを求めています。
六ヶ所再処理工場では、この放射性物質のうち気体に含まれるものについては、「高性能粒子フィルタ」などを通じて、可能なかぎり取り除きます。その後、安全を確認しながら、十分に希釈・拡散されるよう、排気筒から放出します。
また、液体の中に含まれるものは、低レベル放射性廃液を「蒸発缶」で加熱して、水蒸気とそれ以外に分離します。その後、水蒸気は水に戻され、貯蔵タンクへ集めて安全を確認してから、十分に希釈・拡散されるよう、海洋放出されます。一方、残留物は固化され、「低レベル放射性廃棄物」として保管されます。
これらの放出される気体や液体の中には、どうしても取り除くことが難しい物質が一部残っていますが、日本原燃株式会社は、六ヶ所再処理工場からの放出による影響を、最大で「年間約0.022ミリシーベルト」(海洋放出0.0031ミリシーベルト、大気放出0.019ミリシーベルト)と評価しています。これは規制基準である年間1ミリシーベルトや努力目標である年間0.05ミリシーベルトを下回っています。
この「年間約0.022ミリシーベルト」という数値は、自然界に存在する「自然放射線」による線量(年間約2.1ミリシーベルト)の100分の1ほどです。
なお、「年間約0.022ミリシーベルト」という数値は、「工場の周辺でとれた海産物や農畜産物を毎日食べ、もっとも放出の影響を受ける工場周辺の地点に毎日住み続けたうえで、ほぼ毎日漁業をいとなむ」という、実際の居住・生活状況とくらべると保守的なケースを仮定し、その人が受ける影響を評価した数値です。
海洋放出および大気放出に関しては、日本原燃が「放出管理目標値」をさだめ、その値以下におさまるよう管理しています。青森県と日本原燃は、六ヶ所村および青森県内各地域の環境放射能と放射線量を確認・分析し、その結果は専門家や学識経験者により評価・審議され、定期的に広報誌やホームページで公開されます。
詳しく知りたい
日本原燃HP「月別放出状況」
青森県HP「令和元年度第4回青森県原子力施設環境放射線等監視評価会議評価 委員会」
六ヶ所再処理工場では、安全性の向上に向けて、こうしたさまざまな取り組みがおこなわれています。一方で、安全性に“絶対”はありません。不確実なリスクにも対応できるよう、安全性の向上を常に目指す姿勢を持っておくこと、また“より安全”であることを目指し、自主的な取り組みを継続しておこなっていくことが重要です
中国で建設中の原子炉、26基で世界最多維持
新華社 によるストーリー
コンクリートが流し込まれる漳州原発3号機の原子力アイランド。(小型無人機から、2月22日撮影、福州=新華社配信)
【新華社北京3月25日】中国原子力学会の王寿君(おう・じゅくん)理事長はこのほど、北京市の北京展覧館で行われた「2024年中国国際原子力工業展覧会」の開幕式で、「中国は独自の整った原子力工業産業チェーンを持つ世界でも数少ない国だ。本土には稼働中の原子力発電ユニットが55基あり、その数は世界3位となっている。建設中のユニットは26基で世界1位を維持した。22年と23年には2年連続で年間10基の新規建設が承認され、原発の建設は品質の高い発展の軌道に乗っている」と述べた。
同展覧会の会期は今月19日から22日の3日間で、「『双炭』目標(二酸化炭素<CO2>排出量の2030年までの減少転換、60年までの実質ゼロ)実現をサポートし、原子力エネルギーの質の高い発展を共同で促進する」をテーマに掲げ、10数カ国・地域の110余りの企業・科学研究機関が参加し、展示面積は1万6千平方メートルを超える。
中国が独自の知的財産権を持つ第3世代原子炉「華竜1号」、次世代「人工太陽」と呼ばれる全超伝導トカマク型核融合実験装置(EAST)「中国環流三号」、多目的小型モジュール炉(SMR)の実証炉「玲竜1号(ACP100)」など、中国の原子力工業の成果が展覧会で注目を集めた。
王氏は「この展覧会は中国の原子力工業製品・技術、重点設備が世界に進出するための窓口であり、プラットフォームだ」と指摘。近年は中国の原子力に関する科学技術イノベーションシステムの能力が全面的に向上し、先進的な原子力技術の大規模化によって、国内の「双炭」目標の実現が力強く推進されており、原子力技術の応用や原発設備の国産化、原子力工業のデジタル化、スマート化などが経済発展を力強くけん引しているとの見解を示した。
国有原子力発電大手、中国核工業集団の余剣鋒(よ・けんほう)董事長は「中国で稼働中、建設中、承認済みで建設待ちの発電ユニットの総設備容量は1億キロワットを超え、全国の原発発電量は累計で約4兆キロワット時に上る。うち23年の発電量は4300億キロワット時で、CO2削減相当量は約3億2千万トンだった。カーボンニュートラル(炭素中立)の目標実現を後押しし、世界の気候変動に対応する上で建設的な役割を果たしている」と語った。
中国科学技術協会書記処の殷皓(いん・こう)書記は、原子力エネルギーを安全かつ秩序立てて発展させ、原子力の安全保障システムの構築を強化し、安全技術のレベルを持続的に高めることは、エネルギー構造の最適化とエネルギー安全保障の確保に役立つとの認識を示した。
中国の複数原発がトリチウム放出、福島「処理水」の最大6・5倍…周辺国に説明なしか
2023/06/23 05:00
中国が国内で運用する複数の原子力発電所が、今夏にも始まる東京電力福島第一原子力発電所の「処理水」の海洋放出の年間予定量と比べ、最大で約6・5倍の放射性物質トリチウムを放出していることが、わかった。日本政府が外国向けの説明用に作成した資料から判明した。中国政府は東電の処理水放出に強く反発し、官製メディアも動員した反対キャンペーンを展開している一方で、自国の原発はより多くのトリチウムを放出している。
それによると、2020年に浙江省・秦山第三原発は約143兆ベクレル、21年に広東省・陽江原発は約112兆ベクレル、福建省・寧徳原発は約102兆ベクレル、遼寧省・紅沿河原発は約90兆ベクレルのトリチウムを放出していた。東電は、福島第一原発の年間放出総量を22兆ベクレル以下に抑える計画で、放出後のトリチウムの濃度は、世界保健機関(WHO)などの基準をはるかに下回るとしている。
中国政府は福島第一原発の「処理水」放出を「一方的に強行しようとしている」(中国外務省報道官)と反発し、官製メディアも連日、「日本は世界の海洋環境や公衆の健康を顧みない」(共産党機関紙・人民日報)などの主張を展開している。だが、日本政府関係者によると、中国は自国の原発のトリチウム放出について、周辺国との間で合意はなく、説明もしていないという。
参考文献・参考資料
「核のごみ」は青森・むつ市へ、生まれた電力は首都圏へ…使用済み核燃料の「中間貯蔵」が始まろうとしている (msn.com)
「六ヶ所再処理工場」とは何か、そのしくみと安全対策(前編)|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
「六ヶ所再処理工場」とは何か、そのしくみと安全対策(後編)|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
政治講座ⅴ1709「中国の原子力発電の実態と国土放射能汚染。知らぬは人民のみ」|tsukasa_tamura (note.com)
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