
政治講座ⅴ2050「中国の政変の兆し」
毛沢東は「革命は銃口から」と言っていた。
意図するところは権力には「力」の源泉として武力(軍事力)を必要であると説くのである。
世界の政治・歴史を俯瞰すると軍事力(武力)なしには政権の維持が難しいのである。
国家とは、「一定の領土と国民と排他的な統治組織とを供えた政治共同体」や、「一定の領土を基礎にして、固有の統治権によって統治される、継続的な公組織的共同社会」と言える。
要約すると国家の三要素として、領域(Staatsgebiet:領土、領水、領空)人民(Staatsvolk:国民、住民)権力(Staatsgewalt)ないし主権である。
正統な物理的実力つまり軍事力である。対外的・対内的に排他的に行使である。
いま、中国ではこの武力行使者(解放軍)が台頭してきたのである。一説によると軍区ごとに分裂するだろうという噂が以前からある。それがどのような展開と結末むかえるのであろうか。中国共産党の指導部と軍部において権力闘争の綱引きが始まっている。そして、徐々に軍部が台頭してきている。日本も防衛に力を入れないと中国の侵略が目前に迫っている。
皇紀2684年12月1日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
報道記事紹介
中国で「軍最高幹部」2名が続けて失脚……習近平の海軍優遇人事に対する「陸軍大逆襲」の成功で「習体制打倒」の動きがさらに加速
石 平(評論家) によるストーリー
董軍国防相の汚職調査に続き苗華政治工作部主任解任
11月27日、英紙フィナンシャル・タイムズは、米当局の現職および元関係者の話を引用し、中国の董軍国防相が汚職の疑いで調査を受けていると報じた。

これに関し、中国外務省の毛寧報道官は27日の定例記者会見で外国記者の質問に答えて、「雲を掴むような話(捕風捉影)」との表現で否定的なニュアンスのコメントをしたが、コメントはその一言に止まった。彼女はその際、「事実ではない」「捏造だ」というような断言的な表現で完全に否定していないところがミソだ。また、筆者自身のルートからの情報としても、董氏が汚職調査を受けていることは概ね事実であると考えられる。
そして28日、中国国防省の報道官は、共産党中央軍事委員会政治工作部主任の苗華氏が解任され、「重大な規律違反」で調査を受けていると発表した。

2日連続で、中国軍の最高幹部が2人とも事実上失脚したのはまさに驚天動地の大事件であるが、その背後に何かあるのか。
それを解くカギの一つは「海軍」というキーワードである。まず董氏は海軍一筋の軍人で、海軍司令官を務めた後、習近平主席によって国防相に任命された。実は、中華人民共和国の歴史上、海軍出身者が国防相に任命されたのは董氏がはじめてのこと。今までの歴代国防相の14名の中の12名が陸軍出身であって、国防相のポストはほとんど陸軍によって独占されてきた。
習近平の本流外し、海軍優遇
それではどうして、習主席はそれまでの慣例を破って海軍出身の董氏を国防相に任命したのか。その背後には、28日に解任が発表された共産党中央軍事委員会政治工作部主任の苗華氏の存在がある。
苗氏は元々陸軍の出身であるが、習近平政権成立後の2014年12月に海軍政治委員に任命された。そして2017年9月には共産党中央軍事委員会政治工作部主任に昇進した。
中国人民解放軍の中では、「政治工作部主任」が全軍の思想統制と人事を司る大きな権限を持つ重要ポストである。習主席が海軍政治委員を務めた苗氏を、その政治工作部主任に任命したことの背後には二つの理由があると考えられる。
(1)習主席が「南シナ海制覇・台湾併合」という自らの軍事戦略推進のために陸軍よりも海軍を重要視していること、
(2)習主席が政権の一期目に軍に対する腐敗摘発を断行した中で、標的にしていたのはほとんど陸軍の軍人(郭伯雄・徐才厚など)であったから、陸軍と習主席との間に不信感が生じてきて現在に至っていることである。
だからこそ習主席は政権の2期目が始まると同時に海軍政治委員だった苗氏を軍事委員会政治工作部主任に任命した。それ以来約7年間にわたって、苗氏はずっとこの重要ポストに座り、まさに軍における習主席の代理人として思想統制と人事の両面で権勢を振るった。
ロケット軍も海軍出身者がトップに
そしてこの間、苗氏は習主席の意向を受けながら自らの勢力拡大も狙って、全軍において徹底した「海軍優遇」の人事を行なってきた。
その典型的な例が昨年7月、いわゆる腐敗問題でロケット軍の司令官を更迭した際、新しい司令官に任命されたのはロケット軍生え抜きの幹部ではなく、海軍一筋の軍人であったことだ。これは、苗氏が自らの息がかかっている海軍軍人を習主席に推薦したことの結果であると思われる。
そして昨年7月、陸軍出身の前国防相の李尚福が失脚したあと、その後任に任命されたのが海軍出身の前述の董氏である。そのままでは、習主席=苗政治工作部主任のラインで、中国軍は海軍によって制覇されていく勢いであった。
「習近平の軍」から「張又侠の軍」に
こうした経緯から考えみると、今回の董氏汚職調査の背後に浮上してきているのが、「海軍重視の習主席=苗氏ラインに対する陸軍の逆襲」という可能性である。そして、この逆襲の中心人物となっているのは、陸軍出身の大物軍人であって、軍事委員会筆頭副主席の張又侠氏であると思われる。
筆者が今まで数回にわたって伝えてきているように、今年10月辺りから、張氏が中心となって「静かな政変」を起こして、軍に対する習主席の指導権を排除する挙動に出ている模様であるが、どうやらここにきて、この張又侠主導の政変は、海軍の軍支配に対する陸軍の反抗の側面が露わになった。
海軍出身の董氏の粛清、苗氏解任と、どうやら張氏たちが、軍における「習近平・苗氏ライン」の潰しに大きな成果をあげた。
そしてそのことは当然、張又侠たちの「静かな政変」は成功裡に終わったことを意味し、苗華の排除と共に、習主席の軍支配はほぼ終焉した。これで人民解放軍はもはや「習近平の軍」ではなくなり、「張又侠の軍」となった。

これからの習政権はどうなっていくのか、そして中国軍はどうなっていくのか。今はまさに、巨大な嵐が巻き起こる前夜なのである。
中国軍の最高機関委員を調査 「重大な規律違反」で 中国国防省
毎日新聞 によるストーリー

AP通信によると、中国国防省は28日、中央軍事委員会の苗華委員を「重大な規律違反」の疑いで調査中だと明らかにした。中央軍事委は軍の最高指導機関。中国軍では昨年から大規模な汚職疑惑が発覚し、軍高官が相次いで解任されている。
苗氏は海軍上将で政治部門を担当。習近平・中央軍事委員会主席(国家主席)の信頼が厚いとされていた。違反の詳細については明らかにされていない。苗氏は10月9日に、新疆ウイグル自治区で視察する様子が報じられて以降、動静は途絶えていた。
また英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は今週、董軍国防相が汚職容疑で調査されていると報じていたが、これについて国防部の報道官は、董氏はいかなる調査も受けていないとしたうえで報道について「全くの捏造(ねつぞう)だ」と否定した。
中国軍を巡っては、中国共産党は今年6月、地位を利用し巨額の賄賂を受け取っていたとして、同じ委員経験者の李尚福前国防相、魏鳳和元国防相について、党籍をはく奪していた。【北京・岡崎英遠】
習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握
石 平(評論家) によるストーリー
張又侠、踊り出る
今年10月に入ってからの中国軍上層部の動きを時間列順に追っていくと、大きな異変が静かに起きていることに気がつく。解放軍に対する習近平主席の指揮権は実質上解除され、それに取って代わって、共産党中央軍事委員会筆頭副主席で制服組のトップの張又侠氏がすでに軍の掌握に成功している模様である。

まずは10月14日、15日、解放軍の「全軍軍事理論工作会議」が北京で開かれた。習主席がその間、福建省などで地方視察中であって会議に出席しなかった中で、前述の張又侠氏は会議を主宰し講話を行なった。
会議は一応、「軍事理論の構築」に関する習主席の「重要指示」を受けて開催されたものではある。しかし、解放軍各軍種と五大戦区のトップたちが揃って参加する重要会議に習主席が欠席するのはやはり異様なことである。特にそれは「軍事理論」に関する全軍会議であれば、軍の方向性を示す立場の習主席こそが本来、自ら参加して仕切るべき会議のはずである。
ところが今回、全軍会議の事実上の中心人物となったのは張氏である。習主席はその間、緊急性の全くない地方視察に出かけているが、その理由に関しては、習主席は自分が軍会議に呼ばれなかったことを覆い隠すためにわざと地方に出かけたのではないかとの観測も成り立つ。
ロシア、ベトナムも認める
10月15日、張又侠氏は今度は、北京において来訪中のロシア国防大臣と会談した。14日、中国国防大臣がそのカウンタパートナーのロシア大臣と会談したが、張氏はここでは、まさに中国軍の代表としてロシア国防大臣との会談に臨み、存在感を示した。
実は2018年10月、当時のロシア国防大臣が北京を訪問した時、習主席は自ら彼との会談に臨んだが、今回、習主席が北京不在の中で、張氏は主席の「代行」としてではなく、まさに軍のトップとしてこの重要会談を行い、自分こそが中国軍を実際に仕切っていることを暗に示しているのではないかとも思われる。
そして10月20日から、習主席のロシア訪問中において、張氏はまたもや軍のトップとしての単独行動に出た。20日から22日までの三日間、張氏は中国軍の重要拠点の一つである河北省張家口市の軍基地で「全軍合同訓練現場会議」に出席した。さまざまな軍事訓練を視察した後、それを総括する講話も行なった。
この「全軍訓練会議」も一応、「習主席の許可」を得て催されたと説明されているが、各軍種・各戦区のトップたちが揃って参加したこの「現場会議」はわざと習主席外遊中のタイミングを狙って開催されたことはやはり尋常ではない。張氏はやはり、これを好機にして自らの軍掌握を誇示しようとしたのではないか。
それに続いて、10月24日からの三日間、張氏は今度、軍事委員会副主席の肩書きでベトナムを訪問した。その訪問中、ベトナム共産党総書記、国家主席、首相、国防大臣がそれぞれ、張氏との会談に臨んだ。
中国共産党指導部においては、張氏は24名からなる政治局委員の一人にすぎず、最高指導部の政治局常務委員にすらなっていない。このような張氏に対するベトナム側の厚遇ぶりはまさに異例中の異例であってまるで「国賓待遇」。一軍人の張氏のことを実質上、中国最高指導者の一人として迎えた。同じ共産党独裁国家のベトナムはやはり、張氏による「軍掌握」を事実として把握しそれを認めているのか。
習主席の指揮権は排除
以上は、10月に入ってから、軍活動と軍外交における張氏の突出ぶりであるが、実はそれとは対照的に、もう一人の軍事委員会副主席である何衛東氏は10月に入ってから全く公の場に出てこないという異常事態も生じてきている。
何氏が公の活動に出たのは9月13日、北京で開催された安全保障関係の国際フォーラムに参加しに来た外国の防衛関係者と会談した時である。しかしそれ以後は、彼のいっさい動静が伝わっていない。特に、前述の二つの張氏主宰の全軍会議には、同じ軍事委員会副主席の何氏が参加していないのはもはや完全なる異常事態。普通ならばそれは、彼の失脚さえ意味するものである。
何氏という人物は、習近平独裁体制が完全確立した2022年10月の党大会で習主席によって政治局員・軍事委員会副主席に大抜擢された軍人であり、まさに軍における習主席側近の一人である。しかし今、この何氏が張氏によって軍指導部の重要会議から排除されたのであれば、それは当然、張氏はすでに、軍における習主席の指揮権を排除して軍の掌握に成功していることを示している。
昨年からの軍幹部粛清で習近平との関係に亀裂
張氏は解放軍古参将軍を父親に持ち、1979年の対ベトナム国境戦争に参戦したという実戦体験の実力派軍人だ。
習近平政権以前は大軍区の瀋陽軍区の司令官にまで上り詰めたが、習近平政権になってから五年間にわたって解放軍総装備部部長・中央軍事委員会装備発展部部長を勤めた。習政権の2期目には政治局員・軍事委員会副主席に昇進して現代に至る。
こうしてみると、張氏は本来、習主席と同様に共産党高官を父親にもつ「太子党」として主席とは緊密な関係にあり、習主席の軍掌握の要でもあり続けたが、二人の関係に亀裂が生じてきたきっかけは、昨年から始まった習主席主導の腐敗摘発としての軍粛清であると考えられる。
粛清された大物軍人の一人である前国防大臣の李尚福は、まさに張氏の後任として軍事委員会装備発展部長を五年間務めた人間であるから、李尚福の装備発展部長昇進はやはり張氏の推薦によるものであると知られて、李は張氏人脈の軍人であることは明らかである。したがって、習主席による李尚福粛清は張氏にとっても大打撃であるだけでなく、装備発展部長としての李尚福の腐敗問題に対する追究はいずれかその前任の張氏の身に及んでくる可能性もある。
その一件から張氏は徐々に反習近平へ傾いてきているが、その痕跡の一つとして挙げられるのは、解放軍機関紙が事実上の「習近平批判」を展開した珍事にある。
今年7月27日付の解放軍機関紙「解放軍報」は、「いま、個別なところでは党内政治生活が正常さを失い、個人は党組織の上に凌駕し、家長制的なやり方で、鶴の一声で物事を決めるようなことが起きている」と、独裁者の習近平主席を暗に批判している論説を掲載した。これに続いて、8月10日付の解放軍報はまたも、「民主的な意思決定はすなわち党組織の集団的意思決定であって、個人的な独断による意思決定があってはならない」とする論評を掲載して露骨に習近平独裁を批判した。
そして今年8月の北戴河会議で長老たち中心の「反習近平政変」が起きたことは色々と伝わってきている中で、どうやら実力軍人の張氏は長老の支持と、習主席の軍粛清拡大を恐れている軍幹部の支持を受けて軍に対する習主席の実質上の指導権を排除した上で軍の掌握に成功しているのではないかと考えられる。
軍でも政府でも習近平はお飾りに
ただし、習氏は依然として共産党総書記・軍事委員会主席である以上、張氏に掌握された軍は今後においても、少なくとも形的には習主席の「指導下」にある体裁をとり、習主席をいわば「飾り物」に祭り上げておきながら軍独自の路線を自主的に走ることとなろう。
その一方、習主席のもう一人の側近であった李強首相も今、習氏から離反して独自路線を走り始めているから、3期目の習近平政権は早くも空中分解の局面を迎えている様相である。
ただし権力闘争の激化が双方の共倒れと政権そのものの崩壊をもたらす危険性もあるから、おそらく2027年秋の党大会開催までは、共産党指導部は習氏を名目上の最高指導者として担ぎながら、「軍は張又侠、政府は李強首相」という形で政権運営を行なっていくことになろう。しかしそれでは、3期目の満了に伴う習近平政権の終焉は現実味を帯びてきているのである。
中国軍幹部にまた汚職疑惑 制服組ナンバー4の職務を停止、調査へ
朝日新聞社 によるストーリー

中国国防省は28日、中央軍事委員会委員で中央政治工作部主任の苗華氏に重大な規律違反の疑いがあるとして職務を停止し、調査を進めると発表した。汚職に関与した疑いとみられる。中国軍では2代続けて国防相が汚職で処分されており、上層部の深刻な腐敗問題が続いているもようだ。
国防省ウェブサイトでは、軍の最高指導機関である中央軍事委の中で苗氏を制服組ナンバー4の序列で掲載している。従来は上位に国防相がいるが、現在の董軍国防相には中央軍事委のポストは与えられていない。同省は28日の定例会見で発表したが、呉謙報道官は苗氏の「規律違反」の詳しい内容は明らかにしなかった。
共産党は今年6月の中央政治局会議で、昨年10月に国防相を解任された李尚福氏と、前任の魏鳳和氏の党籍や軍籍の剝奪(はくだつ)を決定していた。李氏は職務を利用して巨額の賄賂を受け取ったり、贈ったりした疑いがあり、魏氏にも収賄の疑いがある。
この他にも昨夏にはミサイルを運用するロケット軍の司令官らが事実上解任されるなど、軍内の腐敗に対する調査が進んでいた。(北京=畑宗太郎)
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