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政治講座ⅴ1920「中国のプロパガンダ」

中国経済光明論が示す通り、経済良好を言う中国のプロパガンダと考えた方が良い。
今回はそのような報道記事を紹介する。

     皇紀2684年9月2日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

急成長する中国のハイテク製造業、産業全体をリードする理由―中国メディア

Record China によるストーリー

中国のハイテク製造業が急速に成長し、産業全体をリードする役割を担うようになっている。© Record China

ここ数年、中国のハイテク製造業が急速に成長し、産業全体をリードする役割を担うようになっている。その理由とは何か。

加速する技術的ブレークスルー

人間のボイスを模倣して自動車のスマートキャビンをテストする検査ロボット、衣類を折りたたみ、掃除をするサービスロボット、効率的にネジを締めたり荷物を運んだりする人型ロボット。このほど北京で開催された世界ロボット大会では、600以上の革新的製品が披露された。現在、中国は世界におけるロボットの技術革新、応用拡大、産業ガバナンスの重要なパワーであり、ロボット関連の「専精特新(専門化・精密化・特徴化・新規性)」の特徴を持つ「小巨人企業(高い成長性または大きい発展のポテンシャルを持つテクノロジーイノベーション中小企業)」は400社を超え、世界最大のロボット製造大国、産業ロボット市場となっている。「ロボット+」の応用分野が加速度的に拡大し、産業ロボットは国民経済の71業種を網羅している。

絶えず発表される新製品

中国船舶集団が研究・開発・設計・建造した「緑能瀛」号は、世界の大型LNG(液化天然ガス)輸送船の中で最高の技術水準に達した。スマホメーカーの栄耀(Honor)は新世代の折りたたみ式スマートフォンを発表し、厚さを9.2ミリメートルにまで抑えて、折りたたみ式ディスプレーの最薄記録を更新した。

次々と実現する応用

海信視像の黄島拠点ではインダストリアル・インターネットが大規模に活用されており、在庫から出荷、受取までの供給サイクルを20%短縮した。全国で「5G+インダストリアル・インターネット」の応用が41の主要産業類別に広がっている。

新たな質の生産力が中国で発展を加速し、ハイテク、高効率、高品質等の特徴を備えたハイテク製造業が活況を呈し、力強く成長し、中国経済の新たな原動力と新たな優位性を象徴する存在となっている。

産業全体をリードする成長の勢い

今年に入ってから、中国のハイテク製造業は産業全体をリードし続けている。7月には、一定規模以上のハイテク製造業の生産額(付加価値ベース)が前年同月比で10%増加し、伸び率は6月を1.2ポイント上回り、一定規模以上の産業全体を4.9ポイント上回った。イタル・タス通信は「中国のハイテク製造業は急速な成長の勢いを示しており、ハイテク分野の発展が経済の質的向上を最も直接的に体現している」と報じた。

一歩抜きん出た利益

ハイテク製造業は、しばしば研究開発(R&D)投資が多く、製品の付加価値が高く、市場の広がりも大きい。今年1-7月、ハイテク製造業の利益は前年同期比で12.8%増加し、一定規模以上の産業全体の平均を9.2ポイント上回り、一定規模以上の産業の利益成長を2.1ポイント押し上げた。その牽引作用は顕著だ。

旺盛な輸出

1-7月に、中国の機械・電力設備製品の輸出額の割合は59%に達し、前年同期比で0.9ポイント増加した。自動データ処理機器とその部品、集積回路、船舶などの輸出はいずれも急速に増加した。特に目立ったのは家電製品で、2023年3月以来、輸出額は17カ月連続で前年同期比プラス成長を続けている。

十分な投資

1-7月に、ハイテク製造業への投資は前年同期比で9.7%増加し、投資全体の増加率を6.1ポイント上回った。これは、現在の中国のハイテク製造業が旺盛な市場需要を維持していること、企業や投資家がこれらの産業の発展に強い信頼を持っていることを物語っている。

中国マクロ経済研究院の専門家・張于[吉吉](ジャン・ユージャー)氏は、「投資と市場の拡大から、利益の増加、そして研究開発と製造の拡大まで、ハイテク製造業では好循環が生まれており、明らかな高成長性を示している」と指摘する。ブルームバーグの記事は、「中国の科学技術の進歩とそれに伴う旺盛な輸出が、経済成長率5%前後という目標達成に寄与する」との見方を示した。

ハイテク製造業の目覚ましいパフォーマンスは、産業の高度化と経済成長を支え、信頼を下支えし、中国の長期的な発展の基盤をさらに固めるものとなっている。(提供/人民網日本語版・編集/NA)


「中国経済光明論」が跋扈するなかで実態がみえにくくなる懸念

~スローガン在りきの政策運営の背後でデフレ懸念に繋がる動きは一段と深刻化する可能性~

西濵 徹


要旨

  • 2023年の中国は経済成長率が政府目標をクリアしたが、供給サイドをけん引役に景気の底入れが続く一方、需要サイドは力強さを欠くなど需給ギャップが広がる動きがみられる。昨年の経済成長率は「名実逆転」するなどデフレ懸念が強まっているが、人民元安を警戒して中銀は利下げに動けないなど「自縄自縛」状態に嵌っている。

  • よって、足下の中国経済を取り巻く環境には不透明感が一段と高まる状況にある。

  • 1月の製造業PMIは49.2と底打ちするも4ヶ月連続で50を下回る推移が続いており、生産活動は活発化するも国内外で受注は弱含むなど先行きに対する不透明感がくすぶる状況にある。

  • 他方、非製造業PMIは50.7と上昇しており、サービス業は3ヶ月ぶりに50を上回る水準を回復しているが、製造業同様に国内外双方で受注は弱含むなど先行きへの不透明感がくすぶる

  • さらに、製造業、非製造業問わず雇用調整圧力が強まることで、先行きの内需が弱含むとともにディスインフレ圧力強まる懸念がくすぶる状況にある。

  • 昨年末に実施された中央経済工作会議では「中国経済光明論」を高らかに謳う方針が示され、その喧伝に向けて何でもありの様相をみせるなかで統計の「水増し」が疑われる動きもみられる。

  • 中国経済の実情をみえにくくするとともに、スローガン在りきの政策運営は世界経済の「悩みの種」となる展開も予想される。

2023年の中国の経済成長率は+5.2%と政府目標(5%前後)をクリアするとともに、10-12月の実質GDP成長率は前年同期比+5.2%、前期比年率ベースでも+4.1%とプラス成長で推移するなど堅調に推移している様子がうかがえる(注1)。なお、足下の景気は供給サイドをけん引役に底入れの動きが続いている一方、需要サイドを巡っては内・外需双方で不透明要因が山積するなど力強さを欠く推移をみせるなど需給ギャップの拡大が意識されやすい状況にある。
当局によるゼロコロナへの拘泥が長期化した『後遺症』により若年層を中心とする雇用回復が遅れるなか、不動産市況の調整の動きが幅広い分野にバランスシート調整圧力を招いており、家計消費をはじめとする内需の足かせとなる展開が続いている。また、米中摩擦に加えて、デリスキング(リスク低減)を目的とする世界的なサプライチェーン見直しの動きが外需の足かせとなっている上、昨年の反スパイ法(反間諜法)改正や治安管理処罰法改正案を巡る不透明感も重なり、足下の対内直接投資は純流出に転じるなど景気の足を引っ張る懸念も高まっている。
このように需給ギャップが広がる懸念が広がっていることを反映して、昨年の名目成長率は+4.6%と実質(+5.2%)を下回るなど『名実逆転』状態となるなどデフレを意識せざるを得ない状況に直面している。
他方、昨年の国際金融市場においては米ドル高の動きを反映して人民元相場が調整の動きを強めたため、米ドル建で換算したGDPは29年ぶりの減少に転じるなど世界経済における存在感低下を招く一因になったと捉えられる。よって、金融市場においては景気下支えに向けた金融緩和に動くとの観測が強まっているものの、中銀(中国人民銀行)は24日に来月5日付で預金準備率を50bp引き下げる動きをみせるも、人民元安を招くことが懸念される政策金利の引き下げには及び腰となるなど『自縄自縛』状態に陥っている可能性がある。こうしたなかで足下の中国経済を取り巻く環境には不透明感が高まっているものと捉えられる。「中国経済光明論」が跋扈するなかで実態がみえにくくなる懸念

2023年の中国は経済成長率が政府目標をクリアしたが、供給サイドをけん引役に景気の底入れが続く一方、需要サイドは力強さを欠くなど需給ギャップが広がる動きがみられる。昨年の経済成長率は「名実逆転」するなどデフレ懸念が強まっているが、人民元安を警戒して中銀は利下げに動けないなど「自縄自縛」状態に嵌っている。よって、足下の中国経済を取り巻く環境には不透明感が一段と高まる状況にある。

  • 1月の製造業PMIは49.2と底打ちするも4ヶ月連続で50を下回る推移が続いており、生産活動は活発化するも国内外で受注は弱含むなど先行きに対する不透明感がくすぶる状況にある。他方、非製造業PMIは50.7と上昇しており、サービス業は3ヶ月ぶりに50を上回る水準を回復しているが、製造業同様に国内外双方で受注は弱含むなど先行きへの不透明感がくすぶる。さらに、製造業、非製造業問わず雇用調整圧力が強まることで、先行きの内需が弱含むとともにディスインフレ圧力が強まる懸念がくすぶる状況にある。

  • 昨年末に実施された中央経済工作会議では「中国経済光明論」を高らかに謳う方針が示され、その喧伝に向けて何でもありの様相をみせるなかで統計の「水増し」が疑われる動きもみられる。中国経済の実情をみえにくくするとともに、スローガン在りきの政策運営は世界経済の「悩みの種」となる展開も予想される。

2023年の中国の経済成長率は+5.2%と政府目標(5%前後)をクリアするとともに、10-12月の実質GDP成長率は前年同期比+5.2%、前期比年率ベースでも+4.1%とプラス成長で推移するなど堅調に推移している様子がうかがえる(注1)。なお、足下の景気は供給サイドをけん引役に底入れの動きが続いている一方、需要サイドを巡っては内・外需双方で不透明要因が山積するなど力強さを欠く推移をみせるなど需給ギャップの拡大が意識されやすい状況にある。当局によるゼロコロナへの拘泥が長期化した『後遺症』により若年層を中心とする雇用回復が遅れるなか、不動産市況の調整の動きが幅広い分野にバランスシート調整圧力を招いており、家計消費をはじめとする内需の足かせとなる展開が続いている。また、米中摩擦に加えて、デリスキング(リスク低減)を目的とする世界的なサプライチェーン見直しの動きが外需の足かせとなっている上、昨年の反スパイ法(反間諜法)改正や治安管理処罰法改正案を巡る不透明感も重なり、足下の対内直接投資は純流出に転じるなど景気の足を引っ張る懸念も高まっている。このように需給ギャップが広がる懸念が広がっていることを反映して、昨年の名目成長率は+4.6%と実質(+5.2%)を下回るなど『名実逆転』状態となるなどデフレを意識せざるを得ない状況に直面している。他方、昨年の国際金融市場においては米ドル高の動きを反映して人民元相場が調整の動きを強めたため、米ドル建で換算したGDPは29年ぶりの減少に転じるなど世界経済における存在感低下を招く一因になったと捉えられる。よって、金融市場においては景気下支えに向けた金融緩和に動くとの観測が強まっているものの、中銀(中国人民銀行)は24日に来月5日付で預金準備率を50bp引き下げる動きをみせるも、人民元安を招くことが懸念される政策金利の引き下げには及び腰となるなど『自縄自縛』状態に陥っている可能性がある。こうしたなかで足下の中国経済を取り巻く環境には不透明感が高まっているものと捉えられる。
このように足下の景気を巡っては足かせとなる懸念がくすぶるなか、国家統計局が公表した1月の製造業PMI(購買担当者景況感)は49.2と前月(49.0)から+0.2pt上昇するなど頭打ちしてきた流れが反発する動きがみられるものの、4ヶ月連続で好不況の分かれ目となる水準を下回る推移が続いており、製造業企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況にある。足下の生産動向を示す「生産(51.3)」は前月比+1.1pt上昇するなど生産拡大の動きが確認されているものの、先行きの生産活動に影響を与える「新規受注(49.0)」は同+0.3pt、「輸出向け新規受注(47.2)」も同+1.4pt上昇するも内・外需ともに受注動向は50を下回る推移が続いており、足下の生産拡大の動きは期待先行で底入れの動きを強めている様子がうかがえる。事実、こうした状況を反映して生産活動が拡大する動きがみられるにも拘らず「購買量(49.2)」は前月比+0.2pt、「輸入(46.7)」も同+0.3ptとともに小幅な上昇に留まるとともに50を下回る推移をみせるなど原材料の調達を抑制させる展開が続いており、「受注残(44.3)」が同▲0.2ptと受注動向が下振れしていることも影響していると捉えられる。このところの商品市況の調整の動きは「投入価格(50.4)」が前月比▲1.1pt低下する動きに繋がっている一方、家計部門が節約志向を強めるなかで価格競争が激化していることを反映して「出荷価格(47.0)」も同▲0.7pt低下するなどデフレ傾向を後押しする可能性はくすぶる。さらに、生産活動を活発化させているにも拘らず「雇用(47.6)」は前月比▲0.3pt低下するなど調整圧力が強まる動きが確認されており、家計部門にとっては雇用環境を巡る不透明感が消費意欲の重石となるとともに、節約志向を一段と強めることも考えられる。なお、企業規模別では「大企業(50.4)」は前月比+0.4pt上昇して50を上回る推移が続く一方、「中堅企業(48.9)」は同+0.2pt、「中小企業(47.2)」は同▲0.1ptと中堅企業や中小企業を取り巻く状況は厳しい展開となるなど、足下の中国経済が『国進民退』色を強めている様子がうかがえる。
一方、製造業と同様に昨年以降は頭打ちの動きを強めてきた非製造業PMIも1月は50.7と前月(50.4)から+0.3pt上昇して好不況の分かれ目となる水準を維持しており、相対的に企業マインドは堅調さが続いていると捉えられる。業種別では過去2ヶ月に亘って好不況の分かれ目を下回る推移をみせた「サービス業(50.1)」が前月比+0.8pt上昇して3ヶ月ぶりに50を上回る水準に回復する一方、当局による公共投資の進捗促進や前倒しの動きを反映して底入れの動きを強めてきた「建設業(53.9)」が同▲3.0pt低下して一服する動きが確認されており、不動産価格の調整の動きに歯止めが掛からない展開が続くなど需要が弱含みする動きがみられるなかで建設投資の足かせとなっている可能性が考えられるなど、過去数ヶ月とは対照的な様相をみせている。サービス業のなかでは鉄道輸送関連や物流関連、金融関連で好調さがうかがえる一方、このところ低迷が続く資本市場サービス関連や不動産関連に加え、公共サービス関連が弱含みする対象的な動きをみせており、調整の動きに歯止めが掛からない展開が続く不動産市場を巡る状況が足かせとなっていると捉えられる。なお、足下の生産活動に底打ちの動きが確認されているものの、先行きの生産活動を左右する「新規受注(47.6)」は前月比+0.1pt、「輸出向け新規受注(45.2)」は同▲5.7ptと大幅に低下して内・外需双方で受注動向は50を下回る水準となっている上、「受注残(43.7)」も同▲0.2pt低下するなど先行きの生産活動を取り巻く状況は厳しさを増している。また、製造業同様にこのところの商品市況の調整の動きを反映して「投入価格(49.6)」は前月比±0.0ptと横這いで推移しているほか、こうした動きに加えて家計部門の節約志向や価格競争の激化を受けて「出荷価格(48.9)」は同▲0.4pt低下するなど幅広くディスインフレ圧力が強まる流れが続いている。そして、「雇用(47.0)」も前月比▲0.1pt低下して雇用調整圧力が一段と強まる動きもみられるなど、家計部門を取り巻く状況は一層厳しさを増すことは避けられないであろう。
このように足下の景気を巡っては足かせとなる懸念がくすぶるなか、国家統計局が公表した1月の製造業PMI(購買担当者景況感)は49.2と前月(49.0)から+0.2pt上昇するなど頭打ちしてきた流れが反発する動きがみられるものの、4ヶ月連続で好不況の分かれ目となる水準を下回る推移が続いており、製造業企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況にある。足下の生産動向を示す「生産(51.3)」は前月比+1.1pt上昇するなど生産拡大の動きが確認されているものの、先行きの生産活動に影響を与える「新規受注(49.0)」は同+0.3pt、「輸出向け新規受注(47.2)」も同+1.4pt上昇するも内・外需ともに受注動向は50を下回る推移が続いており、足下の生産拡大の動きは期待先行で底入れの動きを強めている様子がうかがえる。事実、こうした状況を反映して生産活動が拡大する動きがみられるにも拘らず「購買量(49.2)」は前月比+0.2pt、「輸入(46.7)」も同+0.3ptとともに小幅な上昇に留まるとともに50を下回る推移をみせるなど原材料の調達を抑制させる展開が続いており、「受注残(44.3)」が同▲0.2ptと受注動向が下振れしていることも影響していると捉えられる。このところの商品市況の調整の動きは「投入価格(50.4)」が前月比▲1.1pt低下する動きに繋がっている一方、家計部門が節約志向を強めるなかで価格競争が激化していることを反映して「出荷価格(47.0)」も同▲0.7pt低下するなどデフレ傾向を後押しする可能性はくすぶる。さらに、生産活動を活発化させているにも拘らず「雇用(47.6)」は前月比▲0.3pt低下するなど調整圧力が強まる動きが確認されており、家計部門にとっては雇用環境を巡る不透明感が消費意欲の重石となるとともに、節約志向を一段と強めることも考えられる。なお、企業規模別では「大企業(50.4)」は前月比+0.4pt上昇して50を上回る推移が続く一方、「中堅企業(48.9)」は同+0.2pt、「中小企業(47.2)」は同▲0.1ptと中堅企業や中小企業を取り巻く状況は厳しい展開となるなど、足下の中国経済が『国進民退』色を強めている様子がうかがえる。

一方、製造業と同様に昨年以降は頭打ちの動きを強めてきた非製造業PMIも1月は50.7と前月(50.4)から+0.3pt上昇して好不況の分かれ目となる水準を維持しており、相対的に企業マインドは堅調さが続いていると捉えられる。業種別では過去2ヶ月に亘って好不況の分かれ目を下回る推移をみせた「サービス業(50.1)」が前月比+0.8pt上昇して3ヶ月ぶりに50を上回る水準に回復する一方、当局による公共投資の進捗促進や前倒しの動きを反映して底入れの動きを強めてきた「建設業(53.9)」が同▲3.0pt低下して一服する動きが確認されており、不動産価格の調整の動きに歯止めが掛からない展開が続くなど需要が弱含みする動きがみられるなかで建設投資の足かせとなっている可能性が考えられるなど、過去数ヶ月とは対照的な様相をみせている。サービス業のなかでは鉄道輸送関連や物流関連、金融関連で好調さがうかがえる一方、このところ低迷が続く資本市場サービス関連や不動産関連に加え、公共サービス関連が弱含みする対象的な動きをみせており、調整の動きに歯止めが掛からない展開が続く不動産市場を巡る状況が足かせとなっていると捉えられる。なお、足下の生産活動に底打ちの動きが確認されているものの、先行きの生産活動を左右する「新規受注(47.6)」は前月比+0.1pt、「輸出向け新規受注(45.2)」は同▲5.7ptと大幅に低下して内・外需双方で受注動向は50を下回る水準となっている上、「受注残(43.7)」も同▲0.2pt低下するなど先行きの生産活動を取り巻く状況は厳しさを増している。また、製造業同様にこのところの商品市況の調整の動きを反映して「投入価格(49.6)」は前月比±0.0ptと横這いで推移しているほか、こうした動きに加えて家計部門の節約志向や価格競争の激化を受けて「出荷価格(48.9)」は同▲0.4pt低下するなど幅広くディスインフレ圧力が強まる流れが続いている。そして、「雇用(47.0)」も前月比▲0.1pt低下して雇用調整圧力が一段と強まる動きもみられるなど、家計部門を取り巻く状況は一層厳しさを増すことは避けられないであろう。


なお、昨年末に実施された中央経済工作会議においては、今年のマクロ経済政策の運営に当たって過去に行われた施策の『焼き増し』とみられる対応が羅列されるなど、足下の中国経済が直面する状況に鑑みれば物足りないと捉えられる。その後に当局が公表している政策についても『小粒感』が強い展開が続いているほか、突如株価対策を目的に2兆元規模の安定化基金創設のほか、ファンドに対して株価指数先物の空売り制限を要請するなどPKO(株価維持政策)に舵を切る動きをみせているものの、起こっている問題への対応としてはちぐはぐ感が否めない。他方、中央経済工作会議においては『中国経済光明論』を高らかに謳うべきという指針が示されるとともに、後押しすべく経済統計にも影響を与える可能性が高まっている。事実、今月26日から始まった春節期間中の人の移動(春運)を巡って、交通運輸部が今年は延べ数として90億人を上回ると昨年から約2倍となるとの見通しを示す一方、その集計方法について自家用車による移動を含めたとするなど『水増し』が疑われるような動きがみられる。こうした状況は、今回のPMIをはじめとして今後公表される経済統計に対する疑念をあらためて惹起することが予想されるほか、中国経済の実態をこれまで以上にみえにくくする可能性がある。ただし、党中央が中国経済光明論を声高に唱える背景には、すべての政策運営を巡って『習近平の中国の新時代の特色ある社会主義』の実現というスローガン在りきで進められていることを勘案すれば、こうした状況を脱却することは極めて難しいのが実情である。党中央が中銀への関与を強めるなど政策の手足を縛る動きがみられることも重なり(注2)、世界経済にとっては中国経済の不透明感という『悩みの種』が尽きない展開が続くことになろう。以 上

中国の消費不足、世界需要に「300兆円の穴」

Greg Ip によるストーリー

中国の消費不足、世界需要に「300兆円の穴」

中国経済は特殊だ。消費が国内総生産(GDP)に占める割合は40%に過ぎず、他の主要国の50~75%と差がある。不動産、インフラ、工場などへの投資と輸出が残りの大半を占めている。

最近では、かつて需要の主な構成要素だった不動産投資が激減したため、消費の低迷が中国の経済成長に対する逆風となっている。

これは中国だけでなく世界全体の問題だ。中国企業は国内で売れないものを輸出している。その結果、現在の年間貿易黒字は9000億ドル(約130兆円)近くに達している。これは世界全体のGDPの0.8%に相当する規模だ。この黒字は事実上、他国に貿易赤字を強いている。

中国の黒字は長年、米国にとって頭痛の種だったが、最近では他の国も頭を悩ませている。米外交問題評議会(CFR)のブラッド・セッツァー氏がまとめたデータによると、中国の12カ月間の貿易収支は2019年以降、対米黒字が490億ドル増、対欧州連合(EU)黒字が720億ドル増となっている。日本およびアジアの新興工業国に対しては、赤字幅が740億ドル減った。

米調査会社ロジウム・グループの中国調査責任者、ローガン・ライト氏によれば、中国が世界の消費に占める割合は13%にとどまるが、投資は同28%を占めている。投資がこれほどの割合になるのは、中国が他国から市場シェアを奪い、他国の製造業投資が成り立たなくなった場合でしかないという。

「中国の経済成長モデルは、現時点では他の国々とのより対立的なアプローチに依存している」とライト氏は述べた。

多くの発展途上国は初期の成長の原動力として投資と輸出に頼ってきたが、中国はその規模の大きさと消費不足という点で例外的存在と言える。ロジウムはリポートで、中国の消費シェアがEUや日本のそれと同等であれば、中国の年間家計支出は6兆7000億ドルではなく9兆ドルになると推計している。この2兆3000億ドル(イタリアのGDPにほぼ相当)という差は、世界需要に2%の穴が開いていることを意味する。

こうした消費不足の原因は、中国の財政システムと政策選択の両方に深く根ざしている。

中国の所得格差は非常に大きい。富裕層は所得に占める消費支出の割合が貧困層よりも低いため、所得格差が大きいと消費は必然的に抑えられる。ロジウムは、上位10%の世帯が貯蓄全体の69%を占め、3分の1の世帯は貯蓄率がマイナスであるというデータを引用している。

他国では、富裕層への課税を強化し、現金給付や公的医療・教育を通じて中低所得層の消費力を高めることで、このような格差に対処している。中国はそうした取り組みをあまりしていない。ロジウムの推計によると、税収に占める個人所得税の割合が8%にとどまる一方、増値税(消費税に相当)は38%に達しており、相対的に所得が低い層への負担が大きくなっている。

また、中国は主要な市場経済国よりも医療や教育への支出が少ないため、貧困層や中所得層は可処分所得からより多くの資金をこれらの項目に回す必要がある。

中国の消費不足、世界需要に「300兆円の穴」

一方、抑制された賃金・金利は家計の所得・支出を押し下げる反面、国有企業の利益を押し上げている。

地方政府は課税権限が限られているため、製造業支援やインフラ整備向けの資金を捻出するために不動産を売却せざるを得ず、さらに投資を膨らませる要因となっている。

中国指導部は10年前、欧米の経済学者と同様に、マクロレベルでは中国は投資から消費への転換を進める必要があると考えていた。中国共産党は2013年、今後の経済成長は市場原理と消費者に委ねると述べた。

習近平国家主席は結局、逆の方向に進んだ。消費の停滞が続く中、経済に対する国家統制を強めた。改革派を排除し、経済全体の成長よりも分野別の目標達成に主眼を置く腹心を要職に起用した。

貿易の根底にある原則は「比較優位」であり、各国は得意分野に特化し、それを輸入と引き換えに輸出する。習氏はこの原則を否定している。「独立と自立」を追求し、国内でできるだけ多くのものを作り、輸入をできるだけ少なくすることを望んでいるのだ。

中国の消費不足、世界需要に「300兆円の穴」

龍洲経訊(ガベカル・ドラゴノミクス)のアンドリュー・バトソン氏によると、中国当局は「国連が定めた工業製品分類の全項目を生産している国は中国だけ」と自賛している。

中国は電気自動車(EV)や半導体などの先端製品をターゲットにしているからといって、相対的に価値の低い製品の市場シェアを明け渡すつもりもない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、習氏は官僚らに「先立後破(先に新しいシステムを作り、後から古いシステムを壊す)」を命じた。

その結果、「中国が輸出市場として提供する機会は減る一方で、同国はローテクやミッドテクの分野で新興国と真っ向から競合している」とロジウムは指摘する。

中国はかつて多くの国から顧客と見なされていたが、今では競争相手と見なされている。韓国銀行(中央銀行)の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は昨年、「中国企業の多くは、韓国の主な輸出品である中間財を製造している」と述べた。「中国の好景気に伴う(韓国経済への)10年来の後押しは消滅した」

メキシコのロヘリオ・ラミレス・デラオ財務・公債相は7月、「中国はわれわれに売ることはあっても、われわれから買うことはない。これは互恵的な貿易ではない」と不満を漏らした。

中国の消費不足、世界需要に「300兆円の穴」

皮肉なことに、2018年にドナルド・トランプ米大統領(当時)が中国に高関税を課し、他の貿易相手国への関税を削減して以来、各国当局は、米国を世界貿易システムに対する最大の脅威と見なす傾向にある。トランプ氏は、今秋の大統領選で勝利すれば、これらの関税を拡大すると約束している。

もっとも、トランプ氏が導入した関税は、既存の貿易ルールが通用しないことが明らかになった、中国の「近隣窮乏化」経済モデルへの対抗策とみるべきだろう。

とはいえ、この問題を解決できる国は一つもない。洪水をそらす堤防のように、米国の関税は中国の輸出を他の市場へと迂回(うかい)させているのだ。

その他の国々は今、行動を起こしている。メキシコ、チリ、インドネシア、トルコはいずれも、年内に対中関税を検討すると表明している。カナダは8月下旬、中国のEV・鉄鋼・アルミニウムに新たな関税を課すと発表し、米国の発表済み措置と足並みをそろえた。

しかし、世界各国は今のところ、中国の消費不足に対する統一的な解決策を見いだせずにいる。中国がそれを問題と認めないからだ。

習氏は家計への財政支援について、怠慢を生む「福祉主義」だとして反対している。ジャネット・イエレン米財務長官は4月、中国の「弱い家計消費と過剰な企業投資」が米国の雇用を脅かしていると批判した。中国国営の新華社通信はこれを保護主義の口実と呼んだ。8月には国際通貨基金(IMF)が中国政府に対し、4年間でGDPの5.5%を費やして未完成住宅を買い取るよう勧告した。中国側はこれを丁重に断った。

中国がこのままでは、さらなる摩擦が起こり、ただでさえ脆弱(ぜいじゃく)な世界貿易システムは限界までストレスを受けることになるだろう。

***

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

参考文献・参考資料

急成長する中国のハイテク製造業、産業全体をリードする理由―中国メディア (msn.com)

「中国経済光明論」が跋扈するなかで実態がみえにくくなる懸念 ~スローガン在りきの政策運営の背後でデフレ懸念に繋がる動きは一段と深刻化する可能性~ | 西濵 徹 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)

中国経済 実態隠す「光明論」 共産党・政府 宣伝と世論誘導強化…編集委員 小川直樹 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

中国の消費不足、世界需要に「300兆円の穴」 (msn.com)

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