政治講座ⅴ1546「中国からドン引きする世界」
世界は威圧的な中国からドン引きしだした。中国は鄧小平からの改革開放が軌道に乗り世界GDP2位にまで大きくなったが、横暴で横柄な態度に豹変してしまった。今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2683年12月15日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
「中国売り」に転じる米金融業界
Lingling Wei によるストーリー • 1 時間
米共和党の対中強硬派の1人であるマイク・ギャラガー下院議員(ウィスコンシン州)は9月中旬にニューヨークを訪れ、金融業界の幹部らと面会した。同氏の任務は、中国への投資をやめるよう説得することにあった。
中国共産党に関する下院特別委員会の委員長を務めるギャラガー氏は、説得らしい説得が不要だったことに驚いた。幹部らから中国への投資をすでに縮小しているという話が聞けたのだ。
投資縮小に動いている理由は中国の人権問題ではなく経済問題にあった。米外交問題評議会での非公開会合で幹部らは懸念事項を列挙した。例えば、中国の景気減速が深刻化しつつあることや、前例のない不動産不況により、中国の不動産開発会社が発行した数千億ドルの債券を保有する投資家が動揺していること。さらに、中国の習近平国家主席が国家安全保障を重視しているため、データへのアクセスが制限され、同国内での投資リスクを評価する外国企業などを対象にした家宅捜索や調査が行われていることを挙げた。
中国の公式統計によると、同国の株式・債券に対する機関投資家の投資額は今年1月~10月に310億ドル(約4兆5100億円)余りの流出超過となり、中国が2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟して以降で最大の出超額となった。
ヘッジファンド勢は中国証券の保有を大幅に減らしており、創業者のレイ・ダリオ氏が中国に対して長年強気だった米ブリッジウォーター・アソシエーツもその一つだ。
カーライルをはじめとするプライベートエクイティ(PE)投資会社は、アジア向けファンドの資金調達目標を引き下げたり、中国向けファンドの調達を全面的に中止したりしている。バンガード・グループやヴァン・エック・アソシエーツなどの投資信託運用会社は、中国関連の計画を撤回あるいは中止した。
この10年間、中国を対象とするPEファンドは毎年平均1000億ドル近くを調達してきた。調査会社プレキンによると、今年に入ってからの調達額は43億5000万ドルにとどまる。
米企業は何年もの間、中国ビジネスに伴うリスクを警戒してきた。だが米金融機関は、巨額の利益を得られる可能性を秘めているとみて中国市場に一斉に参入した。中国政府にとって米国内で最も信頼できる支援者の一角を占めるようになった米金融業界がここにきて撤退しているのは、中国の数十年にわたる好景気が終わりつつあることを如実に物語っている。
それでも米金融業界の幹部は皆、中国で再び稼げるようになったときに同国に戻る道を閉ざさないようにしている。公の場では、多くの金融機関が中国に引き続きコミットしていると表明するなど、中国政府の機嫌を損ねないよう注意しているようだ。
多国籍企業に助言を行っている米コンサルティング会社オルブライト・ストーンブリッジ・グループのパートナー、エイミー・セリコ氏は「米金融業界は中国を(投資対象から)外すのが非常に遅かった上、今後もそれは続く」と話す。「中国経済が安定すれば、すぐにでも本格的な活動を再開できるだろう」
米投資会社ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)、米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEO、ブリッジウォーターのダリオ氏の3人は、11月15日にサンフランシスコで開催された夕食会で習氏が登壇した際、約350人の米企業トップらによるスタンディングオベーションを主導した。3人とも座席は習氏と同じテーブルだった。
この夕食会では、ブラックストーンとブラックロックが企業スポンサーに、ダリオ氏が個人スポンサーに名を連ねていた。
企業トップらは、自分たちの不安を和らげるような発言が習氏から聞かれるのではないかと期待していた。習氏の政策によって外資系企業が中国で事業展開するリスクが一段と高まっていたからだ。しかし、習氏は米国の投資家を取り戻そうとはしなかった。人的交流や米中友好について淡々と語るだけで、中国強気派として知られる一部の出席者は肩透かしを食らった。
習氏の発言を称賛した企業トップもいた。複数の出席者によれば、シュワルツマン氏は退場時に「習氏のスピーチは素晴らしかった」と語っていた。シュワルツマン氏に近い人物は、安定した米中関係の必要性に関する習氏の発言を高く評価していると語った。
ダリオ氏は文書で、自身は38年以上にわたって中国と交流し、米中間の相互理解の促進に取り組んできたと述べた。
そうした中国に対する二重アプローチも、9月11日にギャラガー氏と面会した金融業界幹部のほぼ全員が、匿名を条件に面会に応じた理由を説明している。その中には、米金融大手のJPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、シティグループの幹部もいたと、事情に詳しい関係者らは述べた。
米金融業界は長年、中国の新興企業への投資、中国の金融機関の資金運用、中国企業の株式公開によって莫大な利益を得てきた。中国政府とは常に互いの損得をベースにした関係にあった。中国への投資で大きなリターンを得られるということは、米金融業界が中国政府から、米政府に対中貿易・投資規制の緩和を働きかけるよう期待されているという意味だった。
米金融業界からの資金流入減少は、すでに外国メーカーなどの撤退に直面している中国経済に新たな打撃となっている。7-9月期には、中国内の工場や店舗などの資産に対する外国からの投資が、1990年代末以降で初めて流出超過となった。
9月にギャラガー氏一行と面会した金融業界幹部の中には、中国の政策決定を予測するのは難しくなっており、中国向けファンドを組成するのに過去のデータはもはや当てにならないと話す者もいた。
面会出席者の1人は、米金融業界の幹部らは中国への投資リスクについて「少し目を覚ましつつある」と語った。
もっとも、誰もがあきらめたわけではない。中国内での投資信託会社設立について当局から承認を得ている資産運用会社のブラックロックとフィデリティ・インターナショナルは、1兆ドル規模の年金市場への参入を現在も目指している。それでもブラックロックは8月のリポートで、中国の経済成長率はコロナ禍前のトレンド水準を下回る見通しだと警鐘を鳴らした。
米金融業界が中国に関心を持つようになったきっかけは数十年前にさかのぼる。1990年代末、中銀の朱鎔基首相(当時)は米投資銀行の関係者に対し、中国の大手銀行が抱える大量の不良債権の整理を手助けするよう依頼した。朱氏は、中国の四大国有銀行の株式を米国の投資家に売却するという米側の提案を支持した。
中国はWTO加盟の一環として金融セクターの自由化に合意したが、何十年もの間、米国の銀行や証券会社などは中国国内で端役的存在のままだった。近年、中国政府は欧米の金融サービス会社に対し、中国の投資家向けの資金管理ライセンスの供与を徐々に増やしている。
ダリオ氏はブリッジウォーターの投資リサーチャーに対し、中国に関してあからさまに否定的な見通しを書かないよう繰り返し注意してきた。同社は2018年、中国内で投資するための資金調達ライセンスを獲得した。中国を拠点とする同社の1号ファンドの運用資産は現在約40億ドルとなっている。
ブリッジウォーターは最近、中国証券の保有を大幅に減らしている。1号ファンドの規制当局への提出書類によると、7-9月期には、電気自動車(EV)メーカーの小鵬汽車(シャオペン)や電子商取引大手のPDDホールディングスなど、30社以上の中国企業のポジションを清算または削減した。9月末時点で、同ファンドが保有する中国企業株の価値は前年同期比60%減となっていた。
ブリッジウォーターは9月30日付の調査リポートで、「中国は長期のレバレッジ解消の真っただ中にあり、解消には何年もかかるだろう」と述べた。「経済成長は期待に届かないままだ」
習政権が誕生した直後の2013年、ブラックストーンのシュワルツマン氏は、習氏の母校である清華大学に米国などの留学生を招くための奨学金プログラムに1億1700万ドルを寄付した。それ以降、シュワルツマン氏は米中関係に関わるようになり、中国政府の上級幹部との中国の上級指導者たちとの絆を深めてきた。中国の貿易慣行を巡ってトランプ政権と中国政府が対立した際には、シュワルツマン氏をはじめとする金融業界幹部が対話役を務めた。
それでも2021年、中国の規制当局が民間企業に対する大規模な締め付けを行う中、ブラックストーンは商業用不動産開発大手SOHO中国の過半数株を30億ドルで取得する計画について、当局の審査が長引いたことで中止を余儀なくされた。
ギャラガー氏は米金融業界と中国の関係性に批判的だ。
同氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への回答書で、「ベンチャーキャピタル、財団、資産運用会社など、あまりにも多くの米投資家が、人権侵害に加担し中国軍向け兵器を製造している中国企業に資金を提供している」とし、「これを止める必要がある」と述べた。
ギャラガー氏は、習氏が出席した夕食会の主催団体である米中関係全国委員会(NCUSCR)と米中ビジネス評議会(USCBC)に対し、個人・団体の有料出席者リストを提出するよう求めた。また、中国の新疆ウイグル自治区における人権侵害を考えると、同会合への出席は良識を欠く行為だったと述べた。中国は、新疆ウイグル自治区におけるウイグル族やその他のイスラム少数民族に対する弾圧疑惑を否定している。
中国では長い間、米金融業界幹部が公然と批判されることはなかった。
だが今では、中国当局から疑惑の目を向けられている。中でも習氏が登用した「治安官僚」は、中国の資産価格が下がる方向に賭けているとみられる投資家を監視している。ある国営新聞は今年、ゴールドマン・サックスのアナリストが中国の大手銀行株の一部を売却するよう推奨したことを受け、同社の分析は中国の銀行セクターに関する「悲観的な仮定」に基づいていると非難した。
経済当局の高官は今でも米金融業界幹部と会っているが、その目的は主に資本流出ペースを抑えることにある。中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は10月20日、不動産市場のてこ入れ策が投資家の信頼回復につながらなかったことを受け、ブラックストーンのシュワルツマン氏と北京で会談し、低迷する不動産セクターの立て直しに向けた政府計画などについて話し合った。
ギャラガー氏は、中国と関係のある米企業が中国の超大国としての野望を可能にしているとして、そうした企業に圧力をかけようとしている。
ギャラガー氏は、米国の資金がシリコンバレーやウォール街を経由して中国のテクノロジー企業の資金調達源になってきたと話す際に、米ベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタルを何度も引き合いに出した。同社は動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」運営企業の親会社に出資している。セコイアは6月、複数のビジネス上の理由により中国と米国の事業を分離すると発表した。
ギャラガー氏一行が9月に米金融業界幹部と会談した際、複数の幹部は、中国市場が改善すれば、中国で今起きている資本逃避の流れが反転する可能性が高いことを認めた。ギャラガー氏率いる委員会は、米国から中国への投資、特に米ファンドによる中国のブラックリスト企業の株式・債券への投資を恒久的に停止したいと考えている。
ブラックロックとMSCIは数年前、主要な株価指数に中国株を組み入れることを決めた。これが一助となり、米国の年金基金や財団から中国に投資資金が流入した。両社は現在、中国への資金流入を手助けした疑いでギャラガー氏率いる委員会の調査を受けている。
両社に詳しい複数の関係者によると、ブラックロックもMSCIも委員会に協力しており、調査に関連する情報を提供している。ブラックロックは全ての米国法を順守していると述べた。MSCIは委員会の調査について確認中だとした。
ベンチャーキャピタル会社ラックスキャピタルのマネジングパートナーで、9月にギャラガー氏一行を招いて昼食会を開いたジョシュ・ウォルフ氏は、ラックスが5年前に中国への投資を見送ったのは、中国政府が社会監視のためにテクノロジーの利用を拡大していることが国家統制強化の前兆に思えたからだと述べた。
中国からの資本流出は今後も続くだろうとウォルフ氏は言う。「これは長期的な変化であり、長らく続く可能性がある」
中国からの融資受け入れ慎重に パプアニューギニア首相
AFPBB News によるストーリー • 18 時間
【AFP=時事】パプアニューギニアのジェームズ・マラペ首相は11日、AFPの取材に応じ、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の下での資金借り入れについて、外国からの融資に「軽率に」依存することはしないと語り、慎重に対応する姿勢を示した。
パプアニューギニアは2018年、太平洋諸国として早期に一帯一路に参加した。しかし、翌19年のマラペ首相就任後は対米関係を徐々に強化し、今年に入ってからは米国と防衛協力協定を締結している。
エネルギー関連の会合に出席するため豪シドニーを訪問中のマラペ氏は、中国が提供する融資を無条件に受け入れる考えはないと強調。「仮に一帯一路の下でのプロジェクトについて、財務省が定めた要件に合わない場合は公正な検討がなされる」と語った。
また、「われわれは軽率ではない。投資は確かな見返りがあるものに対して行う」と述べた。
中国は一帯一路を通じて開発途上国に過度の貸し付けを行い、返済が困難な状態に陥らせる「債務のわな外交」を展開していると批判されている。同じ太平洋の島国トンガは、中国輸出入銀行(中国輸銀、China Eximbank)に対し、国内総生産のほぼ3分に1に相当する約1億3000万米ドル(約190億円)の債務を負っている。(c)AFP/Steven TRASK
【翻訳編集】AFPBB News
【翻訳編集】AFPBB News
中国「信用バブル崩壊」へのカウントダウンが、「影の銀行」破綻から始まる
ニューズウィーク日本版 によるストーリー •
中国「信用バブル崩壊」へのカウントダウンが、「影の銀行」破綻から始まる© ニューズウィーク日本版
<中国の大手資産運用会社「中植」が「深刻な債務超過」を発表。顧客の多くが中国共産党幹部とつながりのある裕福な個人や企業であるため、いかに軟着陸させるかが課題>
11月下旬、中国の大手資産運用会社の中植企業集団(中植)は自社が「深刻な債務超過」に陥ったと発表した。約2000億元(約4兆600億円)の保有資産に対し負債は推定4600億元(約9兆3400億円)。
数日後に捜査が始まり、12月1日には同社と関係の深い2社の会長2人と連絡が取れなくなった。
問題は、中植が中国のシャドーバンキング(影の銀行)の重要なプレーヤーであることだ。シャドーバンキングはノンバンク企業による融資や投資で、中国では盛んに行われている。
もっとも、中国の多面的な経済危機の中で破綻するシャドーバンクは、中植だけではなさそうだ。中国のシャドーバンキングにはマイクロファイナンスや信用保証会社、さらには質屋なども含まれ、3兆ドル規模に発展している。
中国の銀行は国有で融資業務に対する規制も厳しいが、シャドーバンキングは銀行が規制をかわす手段になっている。
2015年のある報告書は、中国のシャドーバンキングの3分の2が銀行からの資金と推定している。
「影」の濃さも多様で、中国最大のシャドーバンクの1つは政府系の資産運用会社とみられる。また、業務の多くはグレーゾーンで、当局から正式に承認されていない。
2008年の金融危機以降、中国では大規模な景気刺激策により信用が拡大し、シャドーバンキングの役割が急激に広がった。資金の大半は不動産市場に投資され、株式市場や商品市場にも流れ込んだ。
当局はリスクを認識しつつ「その場しのぎの規制」に追われたと、ローディアム・グループのアナリスト、ローガン・ライトは言う。
規制が強化されると銀行は手法を変え、通常の融資で提供していた資金もシャドーバンキングを経由するようになった。
ライトによると、2016年には「中国の規制当局は、金融システム内の資金の流れを監視するのに必死だった」。
規制強化で成長が減速
シャドーバンキングに対する締め付けは厳しくなっていったが、新たな規制は2つの望まない副作用をもたらした。
まず、民間企業、特に中小企業が信用を得るのが難しくなり、経済成長が鈍化した。さらに、不動産バブルが拡大した。
銀行は高金利の住宅ローン、特に販売前のローンを奨励した。不動産開発業者は、これらの資金を元手に信用取引を行った。このような信用、規制、不動産建設の結び付きは、不正や腐敗の機会を生んだ。
あるスキームが危機にさらされた際に規制当局は、誰が利害関係者で、誰をつぶせば影響は小さいかを見極めなければならない。
例えば、2018年に中国でネットワーク金融業者が相次いで破綻し、オンライン投資の手軽さに流れた一般の人々が深刻な影響を受けた。
政府は抗議デモを鎮圧しつつ、部分的な補償を提供して、業者の詐欺的行為に対する国民の怒りを鎮めた。
しかし、中植の顧客は、中国共産党幹部とつながりのある裕福な個人や企業だ。経済にこれ以上ダメージを与えることなく、利害関係者の莫大な富を混乱させることなく、状況をどう整理すればいいか。
中国政府は厳しい課題を突き付けられている。
中国「白紙デモ」から1年、何が変わったのか【朝鮮日報コラム】
15 時間
「白紙で出したんだから、成績はいいはずがない」
中国で起きた「白紙デモ」から1年、北京で会ったある知識人は当時の運動をこう評価した。「白紙デモ」とは、昨年11月26日に上海で始まり、首都・北京など中国全土に拡大したゼロコロナ政策への抗議デモだ。参加者たちは当時、公安(警察)の制裁を避けるために、反政府スローガンなどが書かれたプラカードの代わりに真っ白な紙を掲げて街に繰り出した。中国ではめったに見られない大規模デモが発生したため、外信は「中国人たちが政府に立ち向かい始めた」と評価した。
しかし、1年が過ぎた現在、中国人たちはデモ以前よりもおとなしくなった。大衆メディアや芸術作品についても、反体制メッセージに対する自己検閲は強化され、私的な場でも国家指導者に対する批判は自制するような雰囲気だ。「習近平のライバル」と言われた李克強前首相が死去したときも、SNS(交流サイト)上では李前首相に対する再評価は匿名で書き込まれた。白紙デモが中国人にとって、「抵抗の経験」ではなく「国による厳しい統制に遭った」という記憶として残り、「傷弓の鳥(一度弓矢で傷つけられた鳥は、弓の弦音を聞くだけで恐れおののく意から、前の事に懲りて後の事を極端に警戒する人の例え)」が増えてしまったようだ。
白紙デモをけなすつもりはないが、「三日天下」「竜頭蛇尾」だったということは否定できない。実名を出して戦うデモ隊の主役もいなければ、中心的な役割を果たす組織もなかったせいだ。デモの目標が「ゼロコロナ政策の即時解除」なのか「政府の謝罪」あるいは「体制変化」なのかが明確ではなかった。デモの過程で北京大や清華大など名門大学の学生たちは、大学当局の目を気にして立場表明の文書すら出さなかった。対照的に、中国政府はデモ発生翌日から参加者らを探し出して警告・処罰するというやり方で一気に事態を鎮静化させた。
白紙デモ以降、中国で発生した大小のデモや公の場での抗議は「上訴」に近い動きだった。ガラスの天井でも生まれたかのように、中国人たちが非難を浴びせる対象は地方政府や下級官僚にとどまった。今年8月に中国が豪雨に見舞われた際、北京と雄安新区を洪水から守るために河北省保定市が「濠(ほり)」の役割を果たし、その結果同市の被害が大きくなったが、住民らの批判は中央政府ではなく地方の役人に向けられた。中国人にとってもはや政府は打倒・批判の対象ではなく、すがるべき「兄貴」なのだ。
今後、中国人が国家に対抗して戦う可能性はほとんどないとの分析も聞かれる。新疆ウイグル自治区と香港に対する中国政府の統制を目の当たりにし、白紙デモを通じて自分たちの限界を知った中国人の間に、「抵抗しても無駄だ」という認識が根付いてしまったのだ。
中国人は抵抗しないだろうという予想は、中国は変わらないだろうという結論へとつながる。米中の競争の中で、かたくなに計画経済・一人体制をつくり上げてきた中国は、もはや内部的に変化する可能性までも遮断しているからだ。韓国は、このような中国の姿が今後も続くと想定して戦略を練るべきだと考える。北京=イ・ボルチャン特派員
<視点>ゼロコロナ撤廃1年 萎縮ムード漂う中国 中国総局・新貝憲弘
行動制限の厳しさで知られた中国の「ゼロコロナ」政策が撤廃されて1年が過ぎた。財政的に大きな負担を強いた政策のツケで経済回復に勢いが欠ける上に、習近平(しゅうきんぺい)政権の「国家安全」最優先の姿勢は社会全体に萎縮ムードをもたらしている。
11月下旬にゼロコロナ政策に抗議する「白紙運動」の発端となった上海市中心部の「ウルムチ中路」を歩くと、カフェやバーで飲食を楽しむ若者らでにぎわっていた。一見すると1年前に抗議で騒然となった場所と気付かないが、抗議の中心場所となった交差点にはワンボックスカー型の警察車両が駐車。少し離れた路地裏には大型バス数台が並び保安要員らが待機していた。当局の異常な警戒体制で平穏が保たれている今の中国を象徴している。
中国経済は10月と11月の消費者物価指数が2カ月連続でマイナスになるなど「日本病」と言われる長期低迷の懸念が拭い切れない。この10年間、2桁%以上の伸びを続けてきた11月11日の「独身の日」セールも「消費者の自信が完全に回復していない」(中国紙)ことから今年の契約額は前年比2.1%増にとどまり買い控え感が強まっている。両親が地方政府の中堅幹部という知人女性は「最近の父親の口癖は『上の言うとおりにする』だ」と苦笑する。失敗して責任を問われないよう上司の意向を忖度(そんたく)するからだといい、「事なかれ主義」もまん延している。
こうした萎縮ムードに加え、「国家安全」に代表される政治優先の姿勢が排他的な対応につながっていると感じる。東京電力福島第1原発の処理水問題で日中関係が悪化した9月上旬、北京である話題を取材しようとしたら「時期が良くない」と断られた。中国では政治的理由でイベントが中止になることは珍しくないが、日中関係とは無関係でも日本メディアを忌避するケースが目立ってきた。中国政府は伸び悩む対中投資を呼び込もうとアピールするが、ある国内シンクタンクは「反スパイ法に代表される国家安全の強化」を外資が忌避する一因と指摘する。
こうした状況を懸念する声は中国内でも出ており、経済誌「財新」は11月上旬に「改革は早急に新たな進展を」と題した社説を掲載。3年間のコロナ禍で政府による干渉や画一的で重複した施策などの弊害が深刻化したと指摘し、改革開放の原点に戻るべきだと訴えた。10月27日に死去した李克強(りこくきょう)前首相を追悼する動きが各地で広まったのも、改革開放の継続を強く呼びかけていた李氏を惜しむ形で現状に不満を示したとみることができるだろう。
萎縮ムードの根底には、ゼロコロナ政策の堅持を強調しながら手のひらを返すように政策を撤廃した政権への失望があるように思う。中国がコロナ禍で受けた傷は見た目以上に広く深い。
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参考文献・参考資料
中国からの融資受け入れ慎重に パプアニューギニア首相 (msn.com)
中国「信用バブル崩壊」へのカウントダウンが、「影の銀行」破綻から始まる (msn.com)
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