政治(貿易)講座ⅴ2019「中国貿易黒字と我が国の経常収支等の動向」
中国の貿易の実態を俯瞰すると世界貿易の不均衡を悪化させ、中国と世界の主要経済国・経済圏との衝突を引き起こすとともに、トランプ氏を激怒させる可能性がある
そして、それは、現在のペースで推移すれば1兆ドル(約154兆円)になる。中国はますます多くの国からの反発を招いている。南米から欧州に至るまで、各国は鉄鋼や電気自動車(EV)などの中国製品に対する関税を既に引き上げた。
中国は不動産バブル崩壊に伴う過剰債務と併せて各国からの関税の制裁により、価格競争力を失い、補助金では太刀打ちできなくなるであろう。そして、製品の競争力を失い、不良在庫となり、結果として、国家としても、企業としても、過剰債務に泣くことになるであろう。
中国はいい加減に中間所得層を増やして、国内消費できる体制にすべきであろう。
今回はそのような貿易と関税と日本の経常収支についての報道記事を紹介する。
皇紀2684年11月13日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
トランプ氏が激怒?中国の貿易黒字が過去最高の約1兆ドルへ―米メディア
Record China によるストーリー
2024年11月11日、香港メディア・香港01は、中国の貿易黒字額が年間1兆ドル近くに達する見込みであり、大統領への返り咲きが決まったトランプ氏を激怒させる可能性があると米ブルームバーグが報じたことを伝えた。
記事は、ブルームバーグの11日付報道として、中国政府が7日に発表した今年1〜10月におけるモノの貿易黒字が前年同期比約16%増で、同時期としては過去最高の7850億ドル(約121兆円)に達したと紹介。年間の貿易黒字は現在のペースで推移すれば1兆ドル(約154兆円)近くにまで達する見込みだとブルームバーグが予測したことを伝えた。
そしてブルームバーグが中国の貿易黒字拡大について「世界貿易の不均衡を悪化させ、中国と世界の主要経済国・経済圏との衝突を引き起こすとともに、トランプ氏を激怒させる可能性がある」と評し、米外交問題評議会(CFR)シニアフェローのブラッド・セッツァー氏がXで「中国の輸出価格は下落しているが、輸出量が大きく増えている。輸出の伸びが再び中国経済をけん引している」と指摘したことを紹介した。
記事はさらに、ブルームバーグが「国内需要の低迷を補うために中国は輸出への依存を強めている」とした上で、貿易黒字が膨張する偏った状況は「ますます多くの国からの反発を招いている」と伝え、トランプ次期政権が中国からの対米輸出を減らすべく関税を発動する可能性が高いほか、南米から欧州に至るまでの一部諸国ではすでに中国製の鉄鋼や電気自動車(EV)などに対する関税を引き上げたと報じたことを伝えている。(編集・翻訳/川尻)
中国貿易黒字、年1兆ドルに迫る勢い-トランプ次期政権との摩擦必至
Bloomberg News によるストーリー
(ブルームバーグ): 中国の貿易黒字は今年、過去最高となる見通しだ。世界貿易の不均衡を悪化させ、トランプ次期米大統領による対抗措置を招くリスクを高めそうだ。
ブルームバーグの推計によると、中国の輸出と輸入の差額は、今年に入ってからのペースで拡大が続けば、通年でほぼ1兆ドル(約154兆円)に達するとみられる。
先週発表されたデータによると、1月から10月までの10カ月間の物品貿易黒字は7850億ドルに及んだ。同時期としては過去最高で、前年同期から約16%増加している。
最新のデータによると、対米貿易黒字は前年同期比で4.4%増加した。対欧州連合(EU)の黒字は9.6%、東南アジア諸国連合(ASEAN)の10カ国に対する黒字は約36%増加した。
米外交問題評議会(CFR)シニアフェローのブラッド・セッツァー氏は、X(旧ツイッター)で「中国からの輸出は価格下落が続いているが、数量の伸びが著しい。全体的な傾向としては、輸出が再び経済成長をけん引している」と指摘した。
国内需要の低迷を補うため、中国は輸出への依存を強めている。中国政府は10月にようやく、景気刺激策を導入し始めた。
10月の貿易黒字は過去最高だった6月に迫る史上3番目の規模。人民元建てて計算すると、貿易黒字は今年9月までで名目国内総生産(GDP)の5.2%に達する。過去10年間の平均を大きく上回り、2015年以降で最高だった。
こうした偏った状況はますます多くの国々からの反発を招いている。米国のトランプ次期政権は中国製品の流入を減らそうと、関税を課す可能性が高い。南米から欧州に至るまで、各国は鉄鋼や電気自動車(EV)などの中国製品に対する関税を既に引き上げた。
外国企業は中国から資金を引き揚げつつある。8日遅くに発表されたデータによると、1-9月の外国直接投資は流出超となった。この傾向が年末まで続けば、比較可能なデータが存在する1990年以降、年間で初めての流出超になる。
中国政府は8日、対外貿易の着実な成長を後押しするとともに経済発展と雇用安定を促す目的で、産業向けの補助金を増強すると発表した。
中国企業はここ数年、輸出実績を伸ばしている。一方、経済の減速、電化の進展、外国製品から国内製品への置き換わりの増加により、輸入需要は低調だ。
原題:China Nears Record $1 Trillion Trade Surplus as Trump Returns(抜粋)
上期の経常収支は過去最大の15兆8248億円で黒字 旅行収支も過去最大の黒字に
FNNプライムオンライン によるストーリー
日本が貿易や投資でどれだけ稼いだかを示す2024年度上半期の経常収支は、15兆8248億円の黒字でした。
年度の半期ベースで過去最大となり、円安の進行や金利の上昇を背景に海外への投資で受け取った利子や配当が増えたのが主な要因です。
訪日外国人観光客の増加で、旅行収支も過去最大の黒字となっています。
日本の経常収支の推移
第Ⅰ部 第3章 我が国企業による貿易及び投資の動向
第2節 我が国の経常収支等の動向
前節では、我が国グローバル企業の動向と我が国グローバル企業を取り巻くグローバル・バリューチェーンの動向について確認した。本節では、日本を中心としてみた財・サービスの貿易・投資の動向を、我が国の経常収支から確認する。2022年の我が国の経常収支は、資源高や円安の進行により、貿易収支が過去最大の赤字に直面する一方で、過去最高水準の第一次所得収支黒字に支えられた構造であったが、2023年は、資源高の一服で鉱物性燃料の輸入額が減少し、貿易収支の赤字幅が縮小したことにより、経常収支の黒字幅は昨年から拡大した。以下では、その状況について仔細に見ていく。
1.経常収支
2023年の経常収支は20兆6,295億円の黒字となり、昨年の10兆7,144億円の黒字から黒字幅が92.5%拡大した(第I-3-2-1図)。内訳を見ると、第一次所得収支が引き続き過去最高水準の黒字となった一方、貿易収支とサービス収支は昨年に引き続き赤字であったが、赤字幅は昨年から縮小したため、全体の経常収支は昨年から黒字幅が拡大した。
第Ⅰ-3-2-1図 日本の経常収支の推移
2.貿易収支
2023年の貿易収支は6兆6,290億円の赤字となり、昨年の15兆7,436億円の赤字から赤字幅が57.9%縮小した25。貿易収支について、財務省「貿易統計」で輸出額と輸入額の内訳別に仔細に見ていくと、2023年の輸出額は100兆8,738億円で前年比2.8%の増加となった一方、輸入額は110兆1,956億円で同7.0%の減少となり、輸出額の増加と輸入額の減少が貿易収支の赤字幅の縮小に寄与した(第I-3-2-2図)。
第Ⅰ-3-2-2図 日本の貿易収支の推移
品目別の輸出額の内訳を見ると、輸送用機器(主に乗用車)の増加が輸出額全体の増加に寄与した一方で、化学製品、鉱物性燃料、電気機器(主に半導体等電子部品)が減少に寄与した(第I-3-2-3表)。
第Ⅰ-3-2-3表 日本の輸出額(主要商品別)
輸入額では、資源高の一服により鉱物性燃料が大きく減少し輸入額全体の減少に寄与した。次いで化学製品、原料別製品(主に非鉄金属)の減少が全体の減少に寄与した(第I-3-2-4表)。
第Ⅰ-3-2-4表 日本の輸入額(主要商品別)
また、地域別の内訳を見ると、米国向け輸出やEU向け輸出の増加が輸出額全体の増加に寄与した一方で、中国、NIEs3、ASEANを始めとしたアジア地域向け輸出が減少した(第I-3-2-5表)。
第Ⅰ-3-2-5表 日本の輸出額(主要地域別)
輸入額では、地域別に見て大きく増加した地域はなく、大半の地域で輸入額全体が減少した。とりわけ鉱物性燃料の輸入が多い大洋州や中東からの輸入が減少し輸入額全体の減少に寄与した(第I-3-2-6表)。
第Ⅰ-3-2-6表 日本の輸入額(主要地域別)
続いて、2023年は2022年に引き続き、円安方向への動きが見られたが、こうした動きが貿易収支に与えた影響について、貿易収支の変化を実質数量要因、為替変動要因、契約通貨建て物価変動要因の三つの要因に分けて確認する(第I-3-2-7図)。令和5年版通商白書でも指摘したとおり、2022年は過去最大の貿易赤字に直面したが、その主な要因は契約通貨建て物価要因であり、とりわけ鉱物性燃料の輸入物価の上昇に起因するものであった。2023年は鉱物性燃料の輸入物価が落ち着きを見せる中で、契約通貨建て輸入物価要因による貿易赤字方向への圧力が2022年よりも小さくなったことにより、貿易収支が改善したことが分かる。また、円安の進行による円建て輸入物価の上昇が貿易赤字方向に寄与した一方で、円建ての輸出物価の上昇は貿易黒字方向に寄与しており、差し引きで見れば、円安進行が貿易収支に与えた影響は、昨年に引き続き限定的であったと言える。一方、円安は輸出の好機であるにも関わらず、実質でみた輸出は伸び悩んでおり、この背景には、円安による輸出数量押し上げ効果が現れるには一定期間を要することや、輸出によるメリットを数量ではなく為替差益に求める企業行動もあるものと考えられるが、今後の輸出競争力の強化も課題となっている。
第Ⅰ-3-2-7図 貿易収支の変動要因分解(2021年の水準からの変化、試算値)
25 財務省・日本銀行「国際収支統計」
3.サービス収支
2023年のサービス収支は3兆2,026億円の赤字となり、昨年の5兆5,288億円の赤字から赤字幅が42.1%縮小した(第I-3-2-8図)。
第Ⅰ-3-2-8図 日本のサービス収支の推移
内訳を仔細に見ると、サービス収支の赤字縮小の主因は旅行の受取額増加であった。訪日外国人旅行者数が新型コロナウイルス感染症拡大前の約8割26に回復したことにより、訪日外国人旅行者の日本での消費額を示す旅行の受取額は5兆2,241億円となり、昨年の1兆2,147億円から330.1%増加した(第I-3-2-9表)。日本人海外旅行者の海外での消費額を示す旅行の支払額は1兆8,203億円となり、昨年の5,906億円から208.2%増加した(第I-3-2-10表)。旅行収支で見ると、3兆4,037億円と過去最大の黒字となり、昨年の6,242億円の黒字から黒字幅が大幅に拡大した。
第Ⅰ-3-2-9表 日本のサービス受取(内訳別)
第Ⅰ-3-2-10表 日本のサービス支払(内訳別)
知的財産権等使用料は、産業財産権等使用料の受取額が増加したことにより、3兆2,210億円の黒字となり、昨年の2兆4,667億円の黒字から黒字幅が拡大した。知的財産権等使用料についてさらに仔細に見ると、著作権等使用料は、1兆7,300億円の赤字となり、昨年の1兆5,223億円の赤字から赤字幅が拡大した。
通信・コンピュータ・情報サービスは、1兆6,745億円の赤字となり、昨年の1兆5,988億円の赤字から赤字幅が拡大した。
その他業務サービスは、専門・経営・コンサルティングサービスの支払額が増加したこと等により、4兆6,097億円の赤字となり、昨年の4兆3,810億円の赤字から赤字幅が拡大した。
このように、インバウンドの回復でサービス収支の赤字幅は縮小したものの、デジタル部門における赤字が拡大傾向にあり、人材育成も含めたデジタル部門の稼ぐ力の強化が課題となっている。また、我が国の強みであるコンテンツの輸出強化を図っていくことも重要である。
26 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」
4.第一次所得収支
2023年の第一次所得収支は34兆5,573億円の黒字となり、昨年の34兆4,621億円の黒字から黒字幅が拡大し、過去最高水準となった(第I-3-2-11図)。証券投資収益が黒字幅を拡大したことが主因である。
第Ⅰ-3-2-11図 日本の第一次所得収支の推移
内訳を仔細に見てみると、海外に設立した子会社からの配当金や利子等の受取・支払を示す直接投資収益は20兆6,033億円の黒字となり、昨年の22兆4,570億円の黒字から黒字幅が縮小した。これは、特に出資所得の受取額が減少したことによる(第I-3-2-12表)。
第Ⅰ-3-2-12表 日本の第一次所得受取(内訳別)
株式配当金及び債券利子の受取・支払を示す証券投資収益は12兆953億円の黒字となり、昨年の10兆2,878億円の黒字から黒字幅が拡大した。これは、債券利子の受取額が増加したことによる。
貸付金・借入金や預金等に係る利子の受取・支払を示すその他投資収益は1兆8,900億円の黒字となり、昨年の1兆7,795億円の黒字から黒字幅が拡大した。これは、利子所得の受取額が増加したことによる。
雇用者報酬は、支払額が増加し、283億円の赤字となり、昨年の242億円の赤字から赤字幅が拡大した(第I-3-2-13表)。
第Ⅰ-3-2-13表 日本の第一次所得支払(内訳別)
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