政治講座ⅴ1242「中国の費用対効果(収益性度外視)の過去と現在そして経済破綻」
権力者は必ずと言っていいほど天下統一後に威厳を見せつけるために建築物や建造物を作る。
血税で作り上げた「万里の長城」は殆ど防壁としての機能は果たしておらず、むしろ、大陸を平定した後の溢れた兵士の仕事のための公共事業と景気浮上策の性質だったのかと思われる。同様に、兵馬俑なども公共事業の面を併せ持っていたのではないだろうか。公共事業と言えど経済効果を考えるのが普通である。例えば道路の舗装整備なども社会的経済効果を考えてインフラ設備をするのである。同時に労働者・事業者へは所得として配分される効果を持つので所得増加政策としての一面を持つ。
翻って、現在の中国共産党の経済政策は国営企業においては費用対効果を考えない収益性度外視の事業が展開されているとしか思えないのである。労働者・事業者への所得配分の効果しか機能していないのである。出来上がった建築物・建造物は収益を生まないので、完成と同時に不良在庫と同じ資産となるのである。貸借対照表(バランスシート)上では借方の資産部に固定資産として計上され、貸方の負債の部には借入金として計上される。後述する超高層ビルのマンションが売れなければ、不良在庫となると売り上げにも計上されずに借入金の返済財源も捻出されない事態となる。中国の不動産(マンション)で支えられた中国経済は崩壊の寸前であることが予想されるのである。恒大集団の破綻は氷山に一角であり、不動産業者のみに限らず、焦げ付いた貸出金をもつ金融機関にも不良債権として資産計上されるのである。それ以外に企業の資金調達に融資平台という投資会社の存在がある。これらの投資資金も不動産業者に対する債権がデフォルトされて回収不能となっている。今回はそのような報道記事を紹介する。
皇紀2683年7月31日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
融資平台とは
融資平台(LGFV)は、中華人民共和国の地方政府が傘下に置く投資会社をいいます。
資金調達とデベロッパーの機能を兼ね備えた会社で、地方政府の信用力を背景に銀行借入や債券発行などを通じて資金を調達し、地方政府の指示に従って公共住宅や社会インフラなどを建設します(地方政府と出資関係があるが、政府機関でないため、政府の予算・決算の枠外)。
一般に中国では、地方政府の財政規律を維持するため、地方債の発行が原則禁止されていますが、一方で地方でのインフラ開発の抜け穴として「融資平台」が発達した。
その背景には、地方政府が高い経済成長を維持するため、積極的に融資平台を活用したことがあり、また融資平台に流れ込む資金の大半は、銀行や信託会社が販売する「理財商品」と呼ばれる個人向けの運用商品となっている。
昨今、中国経済が減速する中で融資平台は「隠れ借金」として、国際的に中国の地方財政に対する不信感が高まる要因となっている。個人から集めた高利の「理財商品」も焦げ付いていることは、当然想像がつくのである。
無用の長物の「万里の長城」と兵馬俑
匈奴のような北方の遊民族が侵攻してくるのを迎撃するために、秦代の紀元前214年に始皇帝によって建設された。長城は始皇帝によって建設されたと一般には考えられているが、実際にはその後いくつかの王朝によって修築と移転が繰り返され、現存の「万里の長城」の大部分は明代に作られたものである。この現存する明代の長城線は秦代に比べて遥かに南へ後退している。万里の長城は建設後常に維持・利用されていたわけではなく、積極的に長城を建設・維持する王朝と、まったく長城防衛を行わない王朝の2種が存在し、各王朝の防衛戦略によって長城の位置も大きく変動している。始皇帝による建設以後においては、秦・前漢・北魏・北斉・隋・金・明は大規模な長城建設を行ったのに対し、後漢・魏・晋・五胡十六国の諸王朝・唐・五代の各王朝・宋・元・清は長城防衛をほとんど、あるいはまったく行わなかった。長城の建設位置に関しても、秦・前漢・金は中原から遠く離れた草原地帯に長城を建設したのに対し、北魏・北斉・明は中原に近い山岳地帯を中心に長城を建設した。 これらの歴代王朝による長城の遺跡は次々と発見されており、長城の長さや区間を特定、定義することは困難なものとなっている
中国・不動産不況の象徴…天津市の1兆円117階建て「超高層ビルが資金難で工事頓挫」衝撃の背景
FRIDAYデジタル によるストーリー • 7 時間前
周囲を圧倒する存在感、天まで届くかと錯覚するような高さ――。
中国東部・天津市郊外にそびえる超高層ビル『高銀金融117』だ。117階建てで高さ597m。しかし、この高層建築は「世界一高い未完成ビル」という不名誉な異名を持つ。今年5月に現地を訪れた、ジャーナリストの高口康太氏が語る。
「まだ建設中という触れ込みですが、作業員の姿や重機はなく工事再開の気配すらありません。ところどころ雑草が生え鉄筋がむき出し、廃墟同然なんです」
高銀金融117は’08年に着工し、ショップやオフィスの複合施設として’18年には完成する予定だった。だがデベロッパーの資金難により、工事は数年前に頓挫。これまでに投入された建設費は、1兆円以上になるという。高口氏が続ける。
「現場は、天津市の中心部から車で30分ほど離れた陸の孤島です。周囲に目立った施設もなく、誰がここにオフィスを構えるのだろうと疑問を持ちました」
背景には、習近平国家主席の「失政」があるとされる。
「大都市への人口集中を解消しようと、習氏は郊外や地方に『新城』と呼ばれるニュータウンやオフィス街を作ったんです。経済が右肩上がりの時は、投資対象などのため人々が先を争い借金をしてまで購入。しかし新型コロナ禍やバブルを警戒した当局の引き締めにより、一気に熱が冷めます。人々は買い控えに走り、資金難に陥った不動産会社は工事を中断せざるを得なくなったんです」(高口氏)
現在も放置される高銀金融117は、中国が直面する不動産不況の象徴なのだ。
『FRIDAY』2023年8月4日号より
中国中小銀行に不安 地銀で取り付け騒ぎ、農村銀行破綻
2022年9月21日
【北京=川手伊織】中国で中小銀行の経営への不安が強まっている。今春、小規模な地域金融機関で預金が引き出せなくなった問題は、地方銀行大手の取り付け騒ぎに発展した。農村部を基盤とする2行の破綻も明らかになった。政府は地域発の金融不安が全国に広がりかねないと警戒する。不良債権処理の加速や公的資金の注入で中小銀行の経営健全化を急ぐ。
中国の中小銀行は日本の地銀に相当する都市商業銀行、農業協同組合に似た農村商業銀行、農村部に基盤を持つ村鎮銀行などがある。銀行数では全体の9割を占めるが、総資産は全体の3割弱にすぎない。
中小銀行への警戒感が強まったのは、河南省や安徽省の村鎮銀行で4月下旬から預金を引き出せなくなったためだ。投資グループを通じて銀行を実質支配していた犯罪集団が資金を不正流出させていた疑いがある。預金引き出しを求める抗議活動が広がり、社会問題となった。
政府は現時点で50万元(約1000万円)を上限に、預金の払い戻しを肩代わりしている。混乱の収束を狙ったが、上場地銀大手の南京銀行での取り付け騒ぎに発展した。問題の村鎮銀行が南京銀行の決済システムを使っていたことがきっかけだ。同行にも資金リスクが及びかねないと懸念した預金者らが9月初旬、一部店舗に詰めかけた。
銀行の破綻も発生した。中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は8月、遼陽農村商業銀行と遼寧太子河村鎮銀行が破綻手続きに入るのを認めた。当局は「違法な経営で地方の金融秩序を破壊した」と指摘した。乱脈経営などを問題視しているとみられ、別の地元銀行が事業を引き継ぐ。
中小銀行の多くが拠点を構える農村部や小都市は人口流出が続いている。そのうえ、新型コロナウイルスの感染を抑えるための厳しい移動制限や不動産市場の低迷が重なり、地域経済は疲弊している。
銀保監会などが2021年、営業拠点外の顧客からの預金受け入れを禁止したことも中小銀行の打撃となった。経営体力が弱い中小銀行が域外にも預金者を抱えると、経営難に陥ったときに金融不安が全国に広がりかねない。禁止措置は金融リスクを減らすが、営業エリアが小さい村鎮銀行などは資金集めの有力な手段を失った。
政府は中小銀行の経営健全化を急ぐ。中小銀行が金融当局の指導のもと、1~6月に処理した不良資産は6700億元に上った。前年同期より32%多かった。大手行も含めた全体の処理額も年々増えているが、その増加率(18%)を上回った。
銀保監会や中国人民銀行(中央銀行)はさらに、6省を「不良債権処理加速地域」に指定する。具体的な地域は未公表だが、政府関係者は「取り付け騒ぎが広がった河南省のほか、東北地方の省や村鎮銀行が多い省が対象になる」と語る。
公的資本の注入で将来リスクにも備える。3200億元のインフラ債を転用する。20~21年に投じた2100億元に続く第2弾となる。中国財政省は21年夏「インフラ債を使った公的資金の注入は(第1弾の)一度限り」と表明したが、中小銀行のリスクが再び高まり、方針転換した。
中国共産党は22年中に、金融行政の方向性を示す全国金融工作会議を開く予定だ。5年に1度の開催で今回が6回目となる。1997年の第1回以外はいずれも党大会前に開き、国有銀行改革や資産バブルの抑制など重要政策の方針を固めた。
中国の証券会社、東呉証券は「全国金融工作会議の開催は党大会後となる可能性が高い」と指摘する。そのうえで「新たな金融行政の方向性をめぐる不確実性が高まる」と懸念。全体方針が定まらないと、新たな取り付け騒ぎなどをきっかけに中小銀行に対する社会不安が一段と膨らむ恐れもある。
銀行の安全神話崩れた中国、取り付け騒ぎ頻発-SNSでうわさ拡散
Bloomberg News
2020年7月15日 16:45 JST
6月以降だけでも、預金を引き出そうと人々が銀行3行に殺到
資金不足をうわさされたためだが、いずれも事実ではなかった
中国で銀行取り付け騒ぎがかつてなかったほど頻発している。うわさが会員制交流サイト(SNS)で拡散し、銀行に押しかけた預金者を説得するため、監督当局のみならず警察までもが介入する事態となっている。
6月以降だけでも、預金を引き出そうと人々が銀行3行に殺到。資金不足をうわさされたためだが、いずれのケースも事実ではなかった。河北省で週末に起きた取り付け騒ぎを止めたのは警察だった。地元当局は金融機関の健全さを住民に請け合い、混乱の収拾を図った。
中国では10億人を超える人々が預金口座を保有。昨年は約20年ぶりに銀行が接収され、何行かは救済措置を受けた。43兆ドル(約4600兆円)規模に上る世界最大の銀行システムに対する信頼感が低下しつつあり、国内経済の基盤を脅かしている。新型コロナウイルス流行と景気低迷は、すでに揺らいでいる銀行システムの状況を一段と悪化させている。
中国国際金融(CICC)の張帥帥アナリスト(上海在勤)は、「最近でもほとんど全ての事例で預金が保護されているにもかかわらず、銀行に預けておけば安全と考えていた中国預金者の認識が変わりつつある」と指摘。「こういう風にいったんうわさが広がれば、銀行にとって直ちに流動性リスクとなる」と述べた。
中国人民銀行(中央銀行)は河北省で銀行の個人・法人顧客に大口の資金引き出しと預け入れを事前に報告するよう義務付ける試験的プログラムを始めたばかりだったが、それでも同省でまた銀行取り付け騒ぎが起きた。
期間2年のこの試験プログラムは10月には浙江省と広東省深圳市にも拡大される。企業は50万元(約765万円)を上回る取引が事前報告の対象。個人は10万ー30万元からと、地域ごとに異なる。
銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は11日、国内経済が40年ぶりの低迷に陥る中で銀行は不良債権の急増に見舞われていると再び警鐘を鳴らした。
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原題:Rumor-Stoked Bank Runs Break Out in China Like Never Before (2)(抜粋)
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参考文献・参考資料
中国・不動産不況の象徴…天津市の1兆円117階建て「超高層ビルが資金難で工事頓挫」衝撃の背景 (msn.com)
貸借対照表(バランスシート)とは?読み方・見方を解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード (moneyforward.com)
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