
ゲザ・アンダ+クーベリック+ベルリン・フィル
録音:1964年(シューマン)
シューマン弾きの名手、ゲザ・アンダ。
これほど安心してシューマンミュージックが聴けるピアニストはいない。シューマンが唯一完成させたピアノ・コンチェルト。指揮者はクーベリックで、オケはベルリン・フィルという完璧な布陣。
アンダは、ワイセンベルクと並んでカラヤンに見込まれたピアニストでもあって、カラヤンと、ブラームスやバルトークのピアノ・コンチェルトを演奏している。だがこれは”おつきあい”という程度の演奏で、彼の本領は発揮されていない。
面白いのは、モーツァルトの21番をカラヤンと共演したライブ盤。アンダにとってモーツァルトは、最重要の音楽家。アンダは、「史上初めてモーツァルトの全ピアノ・コンチェルトを弾き振り」して録音した演奏家としても知られる。
この時のアンダは、カラヤンにまったく手加減せず、フル・スイングで自分のモーツァルトを弾き切る。第3楽章のアレグロなど、アンダはノリに乗った高速演奏で疾走し、カラヤンはタイミングに合わせるのに精一杯という状態。
さて、このシューマンも心地よいシューマン時間が満喫できる名演奏なのだが、残念ながら、聴くことが難しい。LPでは見かけても、CDにすらなっていない。だがアンダを深く愛し、共感し、高く評価するドイツ・グラモフォンは、17枚組の素晴らしいボックスセットを製作している。そこにはオリジナル・ジャケットで、この演奏が収録されている。