【楽曲・MVレビュー】まさかの快作「足の小指を箪笥の角にぶつけた」は、なにか日向坂の本質的なことを突いてる

まさかの大逆転快作。「足の小指を箪笥の角にぶつけた」なんてタイトル、最初に知った時はやすす引退勧告を思わず宣言しそうになるものだった。乃木坂の「チートデイ」とか最近何かをファンが我慢しなくては追いきれないとか思ってたし。

先行配信されたすーじーセンター「suzuka」が「やすす、もしやすーじーの存在しらんの…?」とか、やっぱりアイドルファン(おひさまは比較的高齢なのもある)がびびらないようにする昭和歌謡メロディラインなど、「もうダメなのか…」みたいに思わせるものだった。

なにより表題曲が抱えている悲壮感が、一期生の性急な卒業発表とも重なって凄まじいのもあり、もうほんとここまで取り返せないとか思わせる流れを強める感じあった。

日向坂のとどめは「足の小指を箪笥の角にぶつけた」か・・・せめてもっとましなとどめがよかったな・・・でもこれがいまふさわしいのかな・・・と思いながらmvを再生してみたら、これがここのところの鬱々とした雰囲気をふっとばすような、多くの要素が噛み合った快作だったのだ。

やっぱりセンターはるはるがよかった。はるはるのキャラなんで「足の小指を箪笥の角にぶつけた」がしっくり来たというか。アイドルソングはその人の(芸能の上での)キャラにはまることが大事だったんだな〜とか当然のことを思い出したり。

おっかなびっくりだった日向坂4期が、なんだかんだで「日向坂ヒットパレード」や「もっと日向坂になりましょう」など専用の番組でいっしょにやってきてるのをひっそり観てたのもあるのか、シェアハウスで過ごすメンバーというのがしっくりきてる。そんな中ではるはるが主人公として動いてるのが、なんだか日向坂の当初の目標ハッピーオーラ感ある。

振り付けも楽しげでよかった。歌詞で「泣いたのに」って歌ってるのに合わせて泣いてる振りとかそんなばかっぽさを素直にやれるの、まさに坂道で日向坂しかおらんでしょ!って感じ。

こんなMV世界を彩るのはなにより楽曲だ。「キュン」「ドレミソラシド」から「君はハニーデュー」を手掛けた野村陽一郎さんが作曲と編曲を担当してる。野村さんの曲は絶妙に坂道テンプレ楽曲に思わせないし、またやすすアイドルのテンプレ昭和歌謡も避けてる。その上でなんだか明るくて、少し悲しい感じのポップスに仕上げられることがすごい。

4期曲では「見たこともない魔物」など、やっぱりぴしっとした曲を作った野村さん。野村さんの曲作りは、たぶん構造の部分で「なにが日向坂なんだろうか」って核の部分にかかわってる気がする。「キュン」はマイナーキーの楽曲なのにメンバーの力もあって明るくポップに聴こえるみたいな話があったけど、なにかそういうような。

欅坂〜櫻坂の本質を拾えるのがナスカさんなら、日向坂は圧倒的に野村さんなんだってあらためて思わせる一曲。本当に鬱々とした流れを払拭するような明るさ。それって欅坂が煮詰まっていたときにけやき坂〜日向坂が出てきたことを思い起こさせるものだった。

そういう明るさを出せるのって4期だとやっぱりはるはる以外いない。はるはるありがとう。はるはるがいなかったら、私はやすす完全引退運動を開始していたよ。いや、作詞は要所で変われとか思うが。