【楽曲・MVレビュー】平手友梨奈「ALL I WANT」はかつての天才が成熟する難しさを痛感させる。
天才的に時代の流れに乗っちゃったアイドルが成熟しきった姿ってなんだろ?これって絶対答えなんかない。
中産階級の進学・就職・結婚みたいにn=100000以上は同様のケースがある人生じゃなく、天才的なアイドルは天才的であるがゆえにオリジナルだ。n=1で比較できる対象なんてない。
それでも成熟後の、長いこれからの人生の土台になるのはなんだろうという疑問は止められない。てち…いやもう平手って書いた方がしっくりくるかな・・・平手はどうなるのか。
前田のあっちゃんは女優業を固めたことで現在の成熟がある。ゴマキは破天荒な人生を送りつつも、なんというか地元に根差しながらゲーマーやったりそのゲームから不倫したりむちゃくちゃなのに、タレントとして泰然とした何かがある。やっぱりn=1であり参考にはなりにくい。
平手は成熟、そしてその後の長い人生の活動の地盤になる方向に(たぶんクラウドナインも、本人も)進めようとしてるんだけど、新曲「All I want」のMVやFNS歌謡祭のパフォを見る限り冷や汗はある。
平手がハイペースで新曲を出すのは、しばらく塩漬けにされてた空白を埋めるみたいに性急に成熟した姿を見せるようだ。
それ自体は喜ばしいこと。ただ私が平手の才能で圧倒的にJポップの分野でコンテンポラリーダンスをやれるところがすごいと思ってるので、今回の女優〜R&Bシンガーという成熟の見せ方は引っかかる。
昔、ゴマキだったかモーニング娘。卒業後はありがちなR&B系〜女性アーティスト系の方向に行っちゃって、「かっこいいけど、アイドル時代より凡庸にみえてつまんなく見えちゃう」という、華やかな袋小路に行ってしまうもどかしさがあった。
これが、天才アイドルの成熟は時間がかかるしその過程はぜんぶ楽しいものじゃないという私の初めての経験で、それから10数年以上もかけてゴマキの成熟を見届けた感覚がある。
平手の女優〜R&Bシンガー的なアプローチはn=20〜50くらいは同じ成熟の事例がある。だからこそ安易で、なにか才能が使われていないもどかしさがある。
先ほどのFNS歌謡祭のパフォもコンテンポラリーダンスではなく、女優的なアンニュイな演技とシンガーを混ざるようなものだった。そしてそれは圧倒的にAdoとのコラボで見せたダンスよりも面白くはないし、未成熟さをテーマとしていた「うちの弁護士は手がかかる」の演技よりも安易だった。
トラウマを超えて大人にはなるが、そこから長い人生を生きる土台の成熟には時間がかかるという事実を久しぶりに思い知らされる。n=1の天才はやがてn=20〜50の凡庸さを経て、またn=1であると感じさせるのは先になりそうだ。
それにしても、FNS歌謡祭でかつて平井堅とのコラボで伝説的なコンテンポラリーダンスを見せてから、定期的に同じ番組で才能を見せてくれた平手がここで凡庸な成熟の選択をするとは・・・という苦さはある。ここから人生は長い。