【楽曲・MVレビュー】コンテンポラリーダンサー平手の帰還。「bleeding love」
HYBE移籍のニュースで最初に求めていたのはこの楽曲だったんだよね・・・といきなりしみじみした。
ご存じHYBEはニュジのミン・ヒジンを排除したり、我が世の春と見せかけながら混乱を抱えた企業という状況下で、てちの世界的な活躍が期待されるもやったことはスマホゲームの音楽一曲のみ。一転して第一線から退いたアイドルにありがちな道に行っちゃったように見えてかなしかったりしたけど、この楽曲でなんとか戻ってこれたように見えて安心する。
なにより、MVではてちの一番才能があるコンテンポラリーダンスを生かしたものになっているのが良かった。
ソロ以降、「ダンスの理由」、「かけがえのない世界」など純然たるダンスだったので、かえっててちの魅力、楽曲とダンスで物語性を表現する方向と逆を行ってしまっていたので、クラウドナインは想像よりもてちの理解度が高いと思った。
直近で櫻坂の「IWTC」がスタジオを暗くして、一部だけをライティングしたコンテンポラリーダンスだったことに繋がるかのように、今回のてちもおそらくクローズドなスタジオで近いことをしている。
たぶん予算はかけない方針だと思うけど、暗闇でのダンス、暗闇で照らされる水槽とミニマルな構成は、むしろ今のてちに合ったものに見える。
そうしたロケーションで展開される、過去の欅坂的な物語性を取り払った、てちのミニマルなダンスにどんなものがあったか。振り付けは日向坂などで活躍するCRE8BOY。もはや伝説化した平井堅の「ノンフィクション」で見せた、学生の孤独と憤りのコンテンポラリーダンスを表現した組み合わせだ。
「bleeding love」はてちのドラマティックな来歴も、大掛かりな物語的な演出もなしに、ただ哀しみを見せる振り付けを堪能できるのがよかった。
ここには欅坂的な物語性もない。かつてビリー・アイリッシュの歌で踊ったときのような世界がある。ダンスは究極的にはリズムに合わせた楽しさや気持ちよさも超えて、言葉のない身体表現だけで物語を伝えてゆくものと思う。その意味で、前に進んでいける可能性を見せてくれたんじゃないかな。
このままコンテンポラリーダンスの路線を極めて行ってくれれば、私は満足ではある・・・というか、やっぱり私が言わずとも関係者はみんな望んでいたということかもしれないね。