藤吉夏鈴の演技力で気になるのは「声」。「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」観てきた
そこさく情報だけで判断するのもあれだけど、夏鈴ちゃんの映画の趣味はかなり本気なんだって思う。役者をこれからも続けていく意味で。
確か是枝監督の「怪物」と、ウェス・アンダーソン監督の「グランドブダペストホテル」だったかな?映画が好きな人だったら「わ、夏鈴ちゃんしっかりと観てる!」ってなると思う。単純にこのふたりの監督が世界的な映画祭で賞をもらってるという実績だけでも、まあすごさはわかりやすいんじゃないかな。
私は欅坂〜櫻坂を半分くらい「アイドルソングの範囲で一番ポップに観れるコンテンポラリーダンス」っていう、ちょっとよこしまなモチベで見てる。ちょっと難しい場所でやってるコンテンポラリーは敷居が高いものだし、Jpopの範囲でやろうとするとどうしてもすべっちゃう危ういものだけど、櫻坂のやってるのって自然に見れてるところがある。それどころか、やっぱりグループが持つ物語性が一気に噴出する凄さがなによりダンスに出るのがすごいなと。
Takahiro先生から乃木坂のSeishiroさんはちょっとアカデミックなコンテンポラリーの物語表現をアイドルソングに絡めることで、推しを追いかける物語性をパフォに全部凝縮するってフォーマットを作り出したと思う。
そして、楽曲の世界を演じられるメンバーとして、一気に現実とは一線を画せる能力がある人がセンターに選ばれてる。その意味で夏鈴ちゃんは代表的。なぜ恋からスタオバは、やっぱり夏鈴ちゃんの気質の能力が相まって楽曲世界に持っていかれる。
さて、そんな夏鈴ちゃんも櫻坂のライブステージ以外でも最近はドラマ出演が目立ち、あの厭世的な雰囲気(わかりやすい例だとエヴァの綾波レイぽいとかbuddiesのみなさんに言われがちな)でいくつかの作品に出演してる。
そこで満を辞しての映画主演の「トロっ子」である。夏鈴ちゃんの力はスクリーンで持つのか・・・・・とちょっとドキドキして観にいきましたよ。
正直言うとややコメディチックだったりするトーンのせいで、ちょっとミスマッチかもとは思う。まあ文芸志望の新聞部っていう高校生の役柄を、夏鈴ちゃんの雰囲気に求めたんだろうけど。でも面白いなと感じたのはやっぱり本業の役者の圧力とやり合う夏鈴ちゃんって気もする。
「ベイビーわるきゅーれ」の高石あかりさんがその意味で圧力すごかった。観た人はまずまず同意してくれそうだけど、映画の印象のかなりの部分を持っていかれる。
あとは文芸部部長役のお嬢様の久間田琳加さんがかなりよかった。なにより声の演技で映画の世界観を作り物じゃなく信じさせるとこある。お嬢様役ってもっとコメディチックでバカっぽくもできて、演技から逃れると思うけどそれをこの映画はやってない。実は久間田さんはこの映画で初めて知ったんだけど、もともとモデルさんとして活動してたところから今の役者業とのことでびっくり。
こういう意外な強豪揃いの映画で夏鈴ちゃんはたしかにカメラに写された映像の面では善戦してる。まあ、アイドル映画だから演技より雰囲気というのもあるんだろうけど、やっばり本人がある程度は女優志向がありそうと思うとちょい声の演技が気になったりする。
てちのドラマから、翻っては前田あっちゃんとかもそうだけど、アイドルでは雰囲気とか表情管理とかで存在感を出してたメンバーって、映画やドラマに出たとき喋る演技になると「あれ?」ってなることある。「てちの演技があんま上手いと思わない」って感想をたまに見かけるけど、たぶん声の演技のせい。アイドルの時と使うエンジンが違うんだと思う。ここがもったいないなと思うし、本業の役者さんのすごいとこかもって。
そういう意味で「トロっ子」はストーリー自体が新入りの新聞部員として食らいついて努力していく主人公みたいに、夏鈴ちゃんが高石あかりさんなど、これからの強豪役者さんたちに演技で食らいついていくみたいな映画って感じだ。
ちなみに黒幕役の髙嶋政宏さんは作品のわりと落ち着いたトーンをぶち壊す自分の得意演技の展覧会みたいにしていて「おじさん!自重しろ!」って思う。夏鈴ちゃんは反面教師にしてほしいところ。参考にするわけないか。