小説 詩篇 3篇
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もう入学して1ヶ月が経つのに、僕には友達がいない。
どうしても、大学生のノリについていけないのだ。
当然のように彼女もできない。
墨田聖書教会が僕の逃げ場所だった。
教会はいい。
座っている僕に誰も話しかけることはなく、そっとしておいてくれた。
静かな空間の中で寂しさが癒されていく。
この日も静かに端っこに座っていた。
そのうちに古い讃美歌が流れてきた。
「主よ、わがあだびと、いとも多し」
『敵は言う「彼には神の助けはない」と』
自分のことを歌っていると思った。
祈った。
「神様、あなたこそ、あなたこそ、僕を守ってくれる方なんでしょう。
それなら、僕が胸を張って生きることができるようにしてください。
どうか、どうか、僕を支えてください」
讃美歌は続いた。
「主は、聖なる山から、答えたまえり」
祈りは続いた。
「神様、僕は今日、寝て、また明日、起きます。
あなたが支えてくれるからです」
自分でも何を言っているのかわからないが、心は締め付けられていた。
「もう、他の人のことを恐れません。
あなたがいるからです。
あなたが救いだからです。
どうか、どうか、僕が今、敵だと思っている人にも、あなたの救いがありますように。
あなたが幸せに、してください」
眠りにつく時、ケータイの電源は切れていたけど、気にならなかった。