#1 アンダーバー(under bar)
「BARってちょっと入りにくいイメージがあるじゃないですか。
気難しそうなマスターが寡黙に立ってるような。
そのハードルをちょっと下げて、
1人でも気楽にくつろいでもらえる場所にしたかったんです。」
少し酔った時、店の名前の由来を聞いてみた。
思いの外、なるほど。と思える言葉が返ってきた。
「あと、何か記号のようにイメージしてもらいやすい
お店にしたかったので、文字と文字を繋ぐ時に使う記号の
”アンダーバー”を、人と人を繋げるって意味にもなり得るな、
とか、それはちょっとやり過ぎですかね?」
ニカっと大きな口をあけて笑い、いつもの大久マスターに戻った。
かれこれ20年の付き合いになる大久マスターのお店
「アンダーバー」は大阪ミナミの少し外れ、難波元町にある。
家の近所ということもあり、飲みに訪れたこと数しれず、
ともすれば、人生で1番お世話になっているショットバーなのかもしれない。
ただ、近所だからという理由だけはではなく、
マスターの気さくでちょっぴりお茶目な存在がそうさせている。
その証拠に、ここのお客さんは、1人で来る方がほとんどだ。
そして、マスターの絶妙かつ緩い距離感の手ほどきで、
顔見知りになり、知り合いとなり、気がつけば
共に飲む仲間になっている。
今では、ほとんどのお客さんが顔馴染みになった。
扉を開けると今日は誰がいてるのか。
それもまた楽しみのひとつだ。
席について初めの一杯を飲む時に、
隣に居合わせた方々と「おつかれさま」と、
グラスを傾けるのも、ここでは日常の仕草だ。
「under bar」それは、バーよりも、ちょっと親しみやすい存在。
誰が言ったか、この街の集会所。
今日もまた誰かが扉を開け、グラスを傾ける。
「おつかれさま」