トークン発行のリアル
ブロックチェーンゲームについて取り組んでから早2年半。もうすぐ、コインムスメのゲームとムスメトークン(MSM)がリリースされます。
人生初のトークン発行とゲームリリースを目前に控えて、今の自分の気持ちを新ためて記します。
少しだけ、ブロックチェーンゲーム「コインムスメ」のアイデアが固まるまでの経緯を書きます。
オリジナルのブロックチェーンゲームを作る
2021年8月、Axie Infinityの売上400億という衝撃を受け、ブロックチェーンゲームに可能性を感じ、その年の年末にとりあえずシンガポールに移住することを決めました。
※参照:僕がシンガポールに行こうと思った理由
色々なところで言ってますが、僕がブロックチェーンゲームに参入しようと思ったきっかけは、「ゲーム体験にNFTやトークンが掛け合わせられることで新しい体験が作れる」と思ったからです。
やるからにはど真ん中で勝負したい。これからブロックチェーン、Web3を牽引するのはヒットコンテンツだと考え、オリジナルタイトルを作ることにしました。
参照:ブロックチェーンゲームの未来
そしてその際、絶対トークンを発行したいと思いました。
現時点でのWeb3の本丸はトークンであり、せっかく新しい分野に飛び込むなら、真正面から挑みたいと思ったからです。
ゴールドラッシュの際にはツルハシを売る方が儲かる、みたいなことをよく言われますが、僕は何も考えず真っ先に金を掘りに行きたいタイプなんだなとつくづく思います。(笑)
ただこのトークン発行というのが、僕の想像を超えてとんでもなくやっかいなものでした。
株式会社とトークンプロジェクトの違い
何度か書いていますが、株式会社とトークンプロジェクトは、根本的に仕組みが違います。
※参照:ブロックチェーンビジネスって本当に儲かってるの?
株式会社の儲けは経営陣と株主のもの
株式会社は、売上から利益を引いて税金を払った残りが会社に残り、会社の資産は株主の資産になります。
会社を経営するのは経営陣ですが、株主は経営陣がちゃんと会社を経営していることを監視することができたり、会社の資産が私的に使われてないかを主張することが出来ます。
また株式は新規発行による資金調達や、M&Aによる所有権の移転など、資本主義市場ビジネスを進める上でとてもやりやすい様に設計されています。
トークンプロジェクトの利益はトークンホルダーに還元されるべき
ところがトークンプロジェクトはそもそも根本が違います。運営主体や運営の売上といった概念はなく、トークンホルダーによる分散的な運営(DAO)、売上も直接役割を果たした主体に分散的に入ります。
トークンを使った「資金調達」や「上場」といった株式会社的な用語がトークンの文脈で使われていることが、株式とトークンが比較されてしまっていますが本来は横並びで話されるべきではないのかもしれません。むしろ円やドルといった通貨と比較する方が正しいという人もいます。
ただ僕はその実態を知ってなお、トークンを発行したいと思いました。トークンを使うことでこそ、新しい価値体験が作れるからと思ったからです。
ですがそのせいで色々な矛盾に対して向き合わなければならず、文字通り寝れない日々が続きました。
コンテンツ×トークンプロジェクトの苦難
僕が直面し続けた一番大きな困難は「トークンプロジェクトとしてコンテンツプロジェクトをやる」ということでした。
トークンプロジェクトはDAOで分散的にやるものですが、コンテンツ作成はクリエイター、プロデューサーによる極めて中央集権的なプロジェクトで、やり方は真逆です。
そのため、僕はプロデューサーとして極めてトップダウンで意思決定を進めつつ、トークンプロジェクトとして将来的には分散的にしていかなければいけない、ということを常に意識し続けました。
そしてゴールは、株式価値の向上(中央集権的な利益)ではなく、トークン価値の向上なので、トークンホルダーの利益がどうすれば最大化するかをとことん考えました。
まずそもそも僕が感じた違和感は、株式の価値とトークンの価値をどう分類するか、でした。
稼いだお金は誰のもの?
トークンプロジェクトを運営していく上で、発行されたトークンの価値と発行主体法人の株式の価値は利益相反します。
これは法人がトークンを発行する上で最大の課題だと思っています。運営法人に入った売上を会社の利益とするのかトークンに価値を還元するのかは、法人に委ねられてしまうのは、非常に難しい問題だと思います。
色々と試行錯誤がされているのですが、現時点では正解はありませんが、僕は何事もシンプルなものが正解だと思っているので、会社に利益は残さず全ての利益をトークンに充てる設計にしました。
また最小限の費用で継続できる設計を意識して、運営主体に入った売上の大半がトークンの買い圧に回り、トークン価値が上がりやすい構造にしました。
そしてトークン価値の向上を目指していく上で、以下の2つのことに最大限注意を図りました。
1.トークンを安易に配らない
2.運営コストを極限まで下げてトークンの買い圧を作る
これは本当に身を削るキツい決断の連続でした。ですが本当に大事な答えを出せたと誇りに思っています。
1.トークンを安易に配らない
トークンプロジェクトを進める上で、資金調達は欠かせません。多くの場合、ベンチャーキャピタル(VC)からお金を集めるのですが、彼らは金融のプロであり、彼らの利益で動きます。
トークンが上場したら多くの場合、彼らは当然トークンを売ります。僕は決してVCを批判している訳ではないです。
長期で保有してくれるVCもいるので一概には言えないですが、多くの場合VCから資金調達するということは、トークンの売り圧が生まれます。そしてそれを受け止めるのは、ユーザーや一般のトークンホルダーだということだと強く意識していました。
VCにトークンを売る場合、そうすることで得られる金銭的な意味以外なものも大きくないと安易に頼るべきではないと強く思っていました。
また、トークンを配るメンバーやパートナーも、かなり慎重に吟味しました。創業メンバーにトークンを配る契約をして、結局逃げられてトークンを売られた、みたいな話は日常茶飯事で、これは株式の世界でも同じだと思います。
ここは経営者としての15年の経験が生きたと思います。トークンをインセンティブに動いているメンバーで離脱した人は一人もいませんし、トークンホルダーは相当一体感を持って長期目線でプロジェクトに取り組んでいます。
2.運営コストを極限まで下げてトークンの買い圧を作る
トークンの理想の形式(DAO)は、運営コストがゼロの状態です。完全にトークンホルダーにより運営が分散されているので、コストがかからず、永続的に続く仕組みになっています。
コンテンツプロジェクトである以上、中央集権的な部分を完全にゼロにするのは難しいとは思いつつ、その理想を常に意識してきました。
具体的には、トークン発行とゲームパブリッシングの法人(Eureka Entertainment Ltd)には法人に利益を貯める必要はない設計にしており、社員もゼロなので、固定費を限界まで減らせる体制になっています。
またコインムスメでは、IPとゲームを切り分けました。
ムスメトークン(MSM)はコインムスメというIPに紐づいたトークンなので、仮に何年か後に今のゲームが終了しても、次のゲームや別のコンテンツが展開される様な設計になれば、トークンの価値は永続すると考えました。
もちろん、新しく展開するゲーム「コインムスメ」は直近ではムスメトークンの大きな一つの軸であり、ゲームの売上が上がれば上がるほど、トークンの価値が上がっていくという仕組みになっています。
※トークンに関する詳細は別途発表予定です。
ここまでこだわってトークンのエコシステムを作られているプロジェクトはかなり少ないと思います。
またこういったロジックを組み立てる一方、XやDiscordも活用して、IPやコミュニティとしての熱狂の火種も作れており、ロジックだけではなく、ソフトな側面でも業界ではかなり注目して頂いているのかと思っています。
コインムスメでこだわったところ
僕が今回こだわったところをまとめると、以下です。
トークンをなるべく配らずに売り圧を発生させない
運営コストを下げて、売上をほぼ全て買い圧に回す
コインムスメIPによる価値の永続化
熱狂的なのコミュニティ
ここにめちゃくちゃこだわって作り上げたのがコインムスメです。
「成功している」トークンプロジェクトの実態
では一方、グローバルで「成功している」プロジェクトはどうなのかというと、どちらかのというと今まで書いてきたアプローチとは真逆の方向に見えています。
大量にお金を集めて大量に人を雇用して「すごそう」な雰囲気を醸成して、プロダクトが出る前にトークンを上場させて初期投資家や取引所が儲かる、という仕組みになっているものも多いのが実情です。
僕は全くVCや取引所のことを悪く言うつもりはないですし、そういった金融テクニックを駆使することも大切なマーケティングの手法の一つだと思っています。
ただ自分はそれに頼り過ぎたくないし、そもそもVCや取引所と違ってトークンを売って終わりには出来ません。むしろファウンダーは長期にわたってトークンと向き合い続けないといけないと感じているので、一時の熱狂でプロジェクトを短命にしたくありません。
株式における熱狂も実は似ている
僕は自分自身の会社は上場はしてませんが、友人や先輩後輩では上場経験者は沢山いて、彼らの話をきいていて、株式を上場する、ということがどういうことなのかを割と身近に感じています。
株式市場も以前はバブル気味で、とりあえず新しそうな分野で上場すれば、もっと値上がりするという期待で買う人が殺到して、更に値段が上がっていく、という錬金術の様なことが起きていました。
ところが徐々にそんな魔法は溶けて、ちゃんと業績が見られるし、また初期にVCが入りすぎている銘柄はちゃんと売られるし、本質的な価値が問われていっていると思います。
※参照:「スモールIPOに幸せはない」by M&A CAMP
トークンだけがダメではなく、株式でも同じ様な歴史を繰り返してきたのだと思います。
トークンの世界の狂気
今のトークンの世界は、株式市場のバブルよりも更に激しく、どんな実態があるのかも曖昧なトークンに「儲かりそう」という理由で投機のお金が飛び交う、狂気の世界です。
現状のトークンプロジェクトの勝ち筋としては、有名なVCが出資して、それを見てユーザーが値上がりを期待する。上場されるとそういった期待のお金が飛び交って、初期にお金を入れいてる人が売り抜けてまた次のプロジェクトに向かう、という短期的な出来レースを繰り返しています。
さらにすごいのは、株式会社と違い、売上や利益や社員もいらないので、プロジェクトの中身よりも、市場の過熱度合いや大量のbotやフェイクによる「すごそう」な雰囲気が醸成されているか、が重視されてきました。
またその多くが取引所を中心としたエコシステムのため、彼らと立ち位置が近い中華系プロジェクトがその輪の中心で、日本のプロジェクトはなかなかそこに入っていけません。
繰り返しますが、僕はそれが絶対ダメだとかおかしいとか言う負け惜しみを言いたいのではなく、利用できる部分は大いにある思っていますが、あくまで飛び道具ではあり本質ではないし長くは続きません。
トークンプロジェクトの本質とは
トークンプロジェクトで追及するべき本質は、そのプロジェクトが具体的に世の中に何を残しているかです。
BTCやETHの例で言うと実際に多くの場所で使われていて、世の中のインフラになっています。そして長期に渡る歴史がより一層信頼性を生み、トークンの値段は上がり続けています。
そしてそれをコンテンツの分野で成功させたタイトルは何といってもAxie InfinityとSTEPNです。
Axie Infinityはデュアルトークンとスカラーという発明により「Play to Earn」という言葉を生み出し、STEPNはそれを「Move to Earn」という新しい体験価値に昇華させました。
投機によるマジックではなく、プロダクトのすばらしさにトークンという飛び道具を掛け合わせて大成功した例だと思ってます。
日本のゲームやコンテンツプロジェクトは今、世界から注目を集めていますし、Axie InfinityとSTEPNの次のプロダクトとなるポテンシャルは間違いなくあります。
チェーンの分野では渡邊創太さん率いるAstar Networkや、ゲーム特化チェーンのOASYSが、注目されていますが、まだコンテンツやゲームプロジェクトとしては、もっと戦えるはずだと思っています。
繰り返しになりますが、僕がブロックチェーンゲームに参入しようと思ったきっかけは、「ゲーム体験にNFTやトークンが掛け合わせられることで新しい体験が作れる」と思ったからです。
「面白い」「楽しい」と思ってもらえるものを作りたい。ゲーム体験としても、トークン体験としてもそう思っています。
ゲーム「コインムスメ」については春にリリース予定になります。トークンについては、どういった設計で作っているのかを再度ホワイトペーパーに書いていこうと思います。
本質しか残らない
僕は日本で会社経営を15年してきて、色々な人を見てきました。その中で感じるのは、本質しか残らない、ということです。
しっかりと顧客に向き合い、社員に向き合い、社会に価値を残す。それをやり続けた企業しか長期で繁栄はしません。
真正面からプロダクトで勝負する。普通からしたら当たり前の話なのですが、そんな当たり前のことがされてこなかったのが今までのWeb3業界だったと思っています。
僕はWeb3業界にどっぷりとつかり、この業界の面白さやすばらしさを心の底から感じていますし、必ず業界は正しい方向に向かいます。
なのでこの業界の未来を信じてますし、新しい価値を作れると思っています。僕が取っている当たり前のアプローチは、今のweb3の勝ちパターンからすると、かなりゲリラ的でアウトローです。無謀なのかもしれません。
ですが、やるからにはホームラン打ちたい。金を掘り当てたい。(笑)
幸いにして、今のトークンホルダーの方々はヒットはいらないから全力でバットふってくれ、という長期目線の方々なので、遠慮せずにオリジナル路線を突き進んでいきます。
これからいよいよ、ゲームを通じてトークンホルダーの方々を増やしていくことに、不安でいっぱいですが、同時にとても楽しみでもあります。きっと何か想像もしなかったことが起こるのだと思います。
最後に宣伝です
2月6日から、CBT(クローズドβテスト)に向けた最後のガチャセールが始まります。ご案内はこちら。会場はこちら。
今回の売上は全て報酬プールに回すという前提なので、運営の利益はゼロで、かつ特定の衣装のキャラクターを引くとゲームリリース後に新しく発行予定のムスメトークン(MSM)がもらえるというおまけつきです。
ソーシャルログインなので、googleやFacebookのアカウントでログインでき、クレジットカードの課金でもガチャが引けますので、トークンに触れたことない方でも参加できる仕組みになってますので、興味のある人はぜひ参加してみてください。
リリースまであと少し、いよいよこれからが本番なので引き続きよろしくお願いします。
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