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ひとり時事通信<2>追憶の新宿/アルタより先になくなったいくつかの店について(2024年3月号)

大小原
新宿ゴールデン街劇場
養老乃瀧歌舞伎町店

新宿から姿を消した僕が愛した店だ。

「大小原」。新宿でよく飲んでいた頃、通っていた居酒屋だ。雑居ビルで営業しており、今にも故障しそうなエレベーターで上がらなければならなかった。座敷席があり妙に落ち着くため、ガバガバ酒が進み、いつも友人芸人とベロベロになり、「10年後にも一緒に飲もうな!」とクダを巻きまくった店。

店の名物は、店のオヤジ・大小原さん。オリンピックが東京で再び開催されることを心から喜び、64年の五輪話も聞いてもないのに客にダミ声でプレゼンしてくれる店主。落語とお笑いが好きで、売れてもないのに「芸人してます」と友人が言うと、「サイン貰っていいかい?」と色紙を出してくれるオヤジ。サイン色紙は、有名な芸人さんの膨大なサイン色紙のなかに飾ってくれた。コロナ禍に久々に行こうと思ったが、閉店していた。オヤジさんは2021年の五輪を見れたんだろうか。あの膨大なサイン色紙はどこに行ったんだろうか。

「新宿ゴールデン街劇場」はかつてトークイベントをさせてもらったライブハウスだ。スペシャルゲストにマック赤坂氏を招き、「スマイル体操」を披露してもらった。マック氏は劇場にロールスロイスで現れ、ゴールデン街の狭い路地に駐車。「ギャラはいつくれるんだい?あと、ウイスキーをくれ」と言い、楽屋を占拠なさった。ギャラと角瓶を渡したら嬉しそうになさっていた。この劇場も姿を消した。

そして、「養老乃瀧歌舞伎町店」。昼過ぎから明け方まで営業する店だったが、スタッフが全員高齢者だった。昼過ぎに行っても、明け方に行っても、祖父母ぐらいの年齢の方々がバリバリ働いてらした。日本の高齢化を感じながら酒を飲んだもんだ。

大小原、新宿ゴールデン街劇場、養老乃瀧。あれから20年が経ち、すべて新宿から姿を消した。そして、来年、アルタもなくなるらしい。新宿で飲まなくなってから、長く時間が過ぎすぎた。久々に新宿の話をしながら、新宿で飲むのも一興かもしれない。



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