【連続短編小説】男子高校生が女子中学生に激詰めされる話~120分の復讐④~【noteクリエイターフェス】
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うちの家族は5人家族だ。父親、母親、8つ上の姉ちゃん、俺、妹の有紗。
家族構成こそありきたりだが、確かに花巻が言うとおり、「サイテー」な家族であることは否定できない。
「有紗ちゃん、前言ってた。お父さんは家族に興味がないし、お母さんはカレシのことしか考えてないし、お姉ちゃんは学歴コンプレックスこじらせた挙句に、自己中心的な主張ばっかりするから超うざいって」
「いじめられている、って言ってた割りに、結構具体的に話聞いてるんだな」
俺が指摘すると、花巻は俺を再び忌々しそうに見つめた。
「最初は友達だったんだもん」
背けた顔の動きに合わせて、花巻の髪が揺れる。表情が少し見えなくなった。その代わりに花巻がぎゅう、と制服のスカートを握りしめる様子が伺えた。
「仲間だって思ってたのに。有紗ちゃんのこと。この世の中サイテーだけど、一緒に頑張ろうねって励まし合ってたのに」
スカートのプリーツが崩れるのも構わないのか、花巻のスカートは持ち主が強く握れば握る程、深い皴が盛り上がるようにして刻まれていく。まるで血管が浮き上がっていくようにも見えた。花巻の怒りがそのまま具現化したかのようなそれから、俺は何故だか目が離せない。
「友達だったのに。いつの間にか、有紗ちゃんは」
そこで花巻は言葉を切った。
花巻が黙った瞬間に、俺と花巻の間を何とも言えない重たい空気が支配し始めて焦ってしまう。花巻と話だしてほんの数分のはずなのに、俺の身体は一日走りまわったかのように重たく沈んでいくのを感じた。
この世の中サイテーだけど、一緒に頑張ろうね。
有紗がそんな風に思っていたことを、俺は見て見ぬふりをしていた。そんな事実を赤の他人に突き付けられたことが、何よりも痛い。