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レオナルド・ダ・ヴィンチに学ぶアート思考──創造の本質とビジネスへの応用
Hello, 辻原です。
最近めっきり本を読まなくなりました。忙しいからとかの理由ではなく「知りたい情報はAIで生成する方が早い」という状況でして。私の読書に対する主だった目的は知の獲得でしたから、その目的で本を読む理由が減ってしまったということです。ハウツー的な本を読むよりも、その領域の情報をざっとAIに食わせて知りたい部分を生成してもらう、ということが大変効率が良いんですね。とはいえ本の優れた部分もありますので一概に言えませんが。
今回のnoteでは「私が読みたかった」文章をAIと一緒に書き起こしました。アート思考に関するnoteです。私は大学時代に美術を学んでおり、それゆえ「アート思考」なるものをビジネスに活用する、ということに大変批判的な想いを抱いておりましたが、なかなか言語化ができませんでした。今回はAIの手を借りながら「なぜ辻原がアート思考をビジネスに活用することに批判的なのか」を展開していきたいと思います。
はじめに:なぜダ・ヴィンチなのか?
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452〜1519)は、ルネサンス期を代表する天才として広く知られていますし、あえて説明も不要かもしれません。彼はその代表作の絵画『モナ・リザ』や『最後の晩餐』だけでなく、解剖学や工学、軍事技術の分野にも多大な貢献を果たしました。
彼が残したメモやスケッチ(現存約7,000ページ)には、生涯を通じてあらゆる事象に疑問を持ち、観察し、分析し、そして発明に挑んだ軌跡が克明に記録されています。
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彼はその多彩な能力や輝かしい功績を持って「万能の人」と称されますが、私は彼の領域横断的・縦横無尽な思考法こそ「アート思考の原型」であると考えており、現代でも「アート×ビジネス」「STEAM教育」など、分野横断的な創造性が求められる中で、大きな示唆を与えてくれます。
本noteではモナリザなどのマスターピースではなく、彼のスケッチを中心に取り上げ「創造の源泉」について触れながら解説していきます。
アート思考とは何か
芸術とビジネスをつなぐ思考法
「アート思考 (Art Thinking)」とは、本来は芸術家が作品を創る過程で発揮する発想法や姿勢を、ビジネスやイノベーションの文脈に応用する試みを指します。アート思考では「解がない状態」や「未知の問い」に飛び込み、試行錯誤や実験を恐れない態度を重視します。”なぜそれはそうなのか?” と根本から疑う姿勢や、”本当にこのままでいいのか?” と問い直す視点を中心に展開される思考法であると言えます。
デザイン思考との違い
よく混同されがちですが、デザイン思考 (Design Thinking) は、主にユーザーの課題を解決するための手法であり、「顧客視点」「課題設定」「プロトタイピング」といった段階がしっかりフレームワーク化されています。
一方のアート思考は、「問いそのものを創り出す」点にこそ力点が置かれます。どんな価値を生み出したいのか? 世の中をどう捉え直すのか? その初期の発想の源泉にフォーカスするため、曖昧で非効率にも思えるプロセスを受け入れる柔軟さが求められます。
ダ・ヴィンチが体現したアート思考の5つの特徴
ここからは、ダ・ヴィンチの思考プロセスを通じて見えてくる「アート思考」的ポイントを5つにまとめて紹介します。
1. ノートとスケッチによる思考可視化
ダ・ヴィンチが生涯にわたって付け続けた膨大なノートは、彼のアート思考を象徴する存在です。観察から得たアイデアや疑問を常に書き留めることで、頭の中の思考を「見える化」していました。たとえば「レスター手稿」には、水の流れから月の組成に至るまで、互いに関連がなさそうな知見がびっしりと記されています。
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2. 直観と論理のバランス
ダ・ヴィンチは、自由奔放なひらめき(直観)だけでなく、そこに必ず観察や実験による論理的検証を組み合わせて思考します。たとえば飛行機械(オーニソプター)を思いついたとき、鳥の翼を延々と観察・分析し、揚力や筋力の限界を理詰めで検討しました。人類が初めて飛行に成功したのは1903年のライト兄弟ですが、ダ・ヴィンチはその400年前に飛行実験を行っていたことになります。
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「観察による思いつき → 検証 → 修正」を何度も繰り返すイテレーティブなプロセスこそ、アート思考が現実のイノベーションへと繋がるヒントであると考えられます。
3. 科学と芸術の統合
現代人にとっては「美術と科学は別物」という感覚がありますが、ダ・ヴィンチの時代のルネサンスでは、両者を区別せず学ぶのが一般的でした。彼が残した言葉はそれを象徴しています。
「芸術の科学を学べ。科学の芸術を学べ。」
ダ・ヴィンチの残した人体の解剖図は芸術的にも美しく、逆に美術作品には解剖学・光学など科学的知見が惜しみなく投入されています。完璧に美しい人を描くために、筋肉と骨格・内臓を含めた人体の知識を求めたのです。美と真理の融合こそ彼が追求した境地でした。
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ダ・ヴィンチは、教皇レオ10世に解剖を禁止されるまでの20年で30体近い死体を解剖し、750枚近い素描を遺しています。彼のスケッチは、日本の医学を大きく進歩させたとされる「解体新書」を記した杉田玄白のものと遜色ないと言われています。またもやダ・ヴィンチは300年も早くその境地に到達していたことになります。
4. 領域横断的な知識活用
ダ・ヴィンチは、とにかくどんな事象にも疑問を抱き、調べずにはいられない性質を持っていました。そうした性質が、彼を芸術家だけでなく、数学者・建築家・軍事技術者・解剖学者といった様々な顔を持たせることにな李ます。このような多領域の知識を組み合わせることで、「もし〜〜が〜〜〜なら?」といった大胆な類推(バイオミメティクス的発想・アナロジー思考)を実践し、未来的な発明を次々と構想しました。
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彼は軍用技術者として、戦車をはじめ毒ガスや潜水用具、軍事用の橋、要塞まで設計を残しています。そのすべてが実用的であったわけではありませんが(↑のダビンチ・タンクは走行自体不能とされている)、↓の空中スクリューと呼ばれるプロペラ機械のスケッチはヘリコプターの原型だと言われています。近年アメリカで再現され本当に飛ぶことが実証されました。(そのことから、 全日本航空事業連合会が、制定した『ヘリコプターの日』は、レオナルド・ダ・ヴィンチの誕生日である4月15日に定められています。)
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5. 徹底した観察力と問いの深さ
最後に、ダ・ヴィンチをアート思考の体現者たらしめている要素が、徹底した観察力です。彼は「経験の弟子」を自称し、とにかく目で見て確かめることを何より重視しました。
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「木の年輪は何を意味するのか?」「水の渦巻きはなぜできるのか?」といった疑問を日常的に書き留め、その解を得るために観察と実験を繰り返したのです。こうした根源的な問いを大切にし、日々の小さな疑問から大きな発見へとつなげる姿勢が、彼の創造性を支えました。
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ダ・ヴィンチは私生児として生まれたため学校には通えず、祖母や村の子供達からラテン語、数学、幾何学、絵画を学んだとされています。彼は家や寝室に篭るよりも、野山や谷川を好み、時には村の馬小屋にて、馬の世話やスケッチなどをして幼少期を過ごしたと言われていますが、最初期のドローイングを見るに幼い頃から優れた観察眼を持ち、自然から多くのことを学んだことが見て取れます。
個人的には彼の数学・科学的知識はおよそこうした野山での観察・ドローイングによって培われたもののように感じられます。
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神聖幾何学模様のひとつ。生命の創造パターンや宇宙の根源を表すシンボル。
彼の手稿には幾何学の習作も多く残されています。自然の美しさと数理的な美しさパターンを重ね合わせ「美しさ」の真理を探求しようとしたことがわかります。この命題は現代の私たちにとっても重要な問いです。
アート思考は本当にビジネスに役立つのか?
イノベーションの源泉としての可能性
このように、ダ・ヴィンチの思考を見ると、既存の枠組みを大胆に超えて新しい問いを立て、それを形にするプロセスこそがアート思考の真骨頂であることがわかります。
ビジネスでは通常、既存顧客のニーズや売上を起点にして計画が進みます。しかしイノベーションの現場では、「まだ顕在化していないニーズにどう応えるか?」や「そもそも既存の競争軸を変えられないか?」が鍵になります。ここにこそアート思考が活きる余地があるのです。「新規事業の構想やビジョン作りの段階でアート思考を取り入れれば、従来の前提や常識を覆すような革新的アイデアが生まれる可能性はある」ということはできるかもしれません。
過度な期待と限界
ただし、アート思考に過度な期待を抱くのは禁物です。「アート思考を導入すればイノベーションが連発する」という誤解が一人歩きすることもありますが、アート思考はあくまで「問いの生み出し方」に関する姿勢であって、それ自体が具体的なビジネスモデルを成功に導く保証ではありません。見てきた通りダ・ヴィンチは非常に先進的な発明を多く残していますが、それらが当時の人の生活を変えるに至ったか?というと答えはNoです。
「アート思考をどうしてもビジネスに活用したい!」という場合、
顧客ニーズを確認するデザイン思考
実際に組織で実装するロジカル思考
市場投入後の検証と改善プロセス
など、他の視点・手法との組み合わせが必要であると言わざるを得ません。また、アート思考はその人の個性や好奇心に依存する面も大きいため、定型化しにくいという課題もあります。企業で導入する場合は、うまくフレームワーク化したり、専門家のファシリテーションを得たりする工夫が重要です。しかしながら、アート思考自体「属人性が高く・再現性が低い」さらに「課題解決に向いていない」という大きな弱点を抱えていることは頭に入れておく必要があります。
さいごに
ここまで手で書いた文章は7割強になってしまいました(作品の補足説明などを追加したため)が、私がアート思考に批判的だったロジックもきちんと整理できたので満足です。アート思考はあくまでも属人的スキルにすぎずチームOSとして育成するにはいささか不安定であるというまとめになります。
このnote書いてる途中から、アート思考に限らず「〇〇思考」は星の数ほどあるので、結局自分が良いと思ったものを学んで実践すればよいじゃんという気持ちになってきましたのでこの辺で終わろうと思います。
「批判するな創造せよ。否定するな破壊せよ。」
もう誰の言葉だったか忘れましたが、個人的に最も重要なアート的姿勢はこの言葉にすべて詰まっていると思っています。
Thank you!