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【広島・尾道】2泊3日ひとり旅 ⑥参拝・宮島グルメ編

DAY2 美術と歴史を学ぶ

〇厳島神社 -結んだとある思い出-

神社参拝のルーティンとして、私は毎回必ず御守りを買って帰ることにしている。あたかも私独自のルーティンであるような書き方をしたが、大抵の人間そうじゃね?と今書きながら気づいてしまった。まあいいや。
御守りの売り場はちょうど嚴島神社の東廻廊と西廻廊の合流地点にあたる場所だ。海でいうところの潮目みたいなもので、参拝客の進路が渦のように複雑に絡まりあってごった返している。海と違って人の波には意思があるから、自分だってその一部だぞと分かっていてもなお少しおどろおどろしい。

カラバリが多くて良いね(オタク的目線)

標本のように飾られた御守り一覧にじっと目を凝らす。とはいえそこまで目が良いわけではないので、結局実物を手に取って買うものを吟味するのが常だ。

まじか、合格ハチマキなんてあるの。バラエティ雑貨以外で合格ハチマキを見るの初めてだよ。どんな人が買うんだろう……まあ合格したい人が買うのか。そもそもこの現代においてハチマキを巻いて勉強している受験生は存在するのだろうか。場合によっては学校とか予備校の文化として残っていたりするのかな。
受験の話から少し逸れるが、私の通っていた中学校には体育の時にハチマキを巻く文化があった。1組赤・2組白・3組青・4組黄と色が決まっており、体育祭の軍ももちろん4色4軍。
ハチマキ姿ね、ユニフォーム姿に並ぶくらいかっこよかったんだよ。好きだったな〜

それにしても御守りってどの神社に行っても本当に種類が多いな。優柔不断な人間にとっては難易度の高い買い物だと思う。とりあえずこれでいいやって感じで選ぶものではない気がするし、あと個人的な感覚として、どれか一つのご利益に特化した御守りを選ぶとそれ以外を相対的に切り捨ててしまった感が残る。大学合格ぐらい突き抜けた願いとか目標があれば別だが、極論「神様に守られたいものなんて、全部だろ!」という少し図々しい思いもあって、大抵の場合はシンプルな開運守か幸福守に落ち着く。

大人になってからというもの、「不運じゃなければ良い」みたいなフラットな生き方が心地よく思える日が増えてきて、何かを強く望むとか願うとかいう行為と少し疎遠になってきたような感覚がある。あとは昔よりも力や知恵がついてきたぶん、願う暇があったらまず解決しようとしちゃうというか。
この距離感の変化は正解のような気もするし、悲しい間違いのような気もする。答えが出ないうちは願うことをやめないでいようかな、参拝しながらそんなことを考えた。

雲と波の模様が美しい

この日買ったのは開運御守2つ。1つは妹へのお土産だ。海上神殿というだけあって、海の波を模した柄が美しく刺繍されている。

おみくじも引いていこうか。小銭をチャリンチャリンと入れ、六角形の長筒をカラカラカラ。
カラカラカラ、カラカラカ、カラ、カラカラ、お?
冗談抜きで20回は振ったぞ、このタイミングで筒を変えるのもなんだし振り続けるしかないか……こんなの傍から見たら二足歩行のラッコじゃん。
やっとのことで一本の細い棒が滑り出てきた。インクが木の繊維に滲んでいて読めない、おみくじあるある。1の隣は何だ、0か6か9か……6だな、16番。どうにか解読して16番の引き出しからおみくじの紙をぺらっと取り出した。

三種神宝兆[吉] みくさのかむたからのちょう
三種神宝は三種の神器のことかな。おみくじの詳しい内容は自分の中に留めておこうと思うが、軒並み良いことが書いてあった。あれ、嚴島神社って凶がやたら出るんじゃなかったっけか。そう思っていたらちょうど後ろの集団から「うーわ全員凶じゃねえかよっほっほっほ」という明るい嘆きが聞こえたので、噂はおそらく本当だと思う。
結局人間「不運じゃなければ良い」とかいいつつ、なれるもんなら幸運になっておきたい生き物なんだよな。そういうブレやすい生き物だからこそ、それに気づけた人間たちによってこういう神社仏閣といった"ブレない場所"が現代まで大事にされてきたのだ。

勅使のみが渡れたとされる反橋(そりばし)

〇宮島表参道商店街

さて、時刻はそろそろ16時を回りそうだ。しかしまだ!昼はまだ終わっていないから!お昼ご飯食べよう!

宮島表参道商店街は、宮島駅周辺と嚴島神社を繋ぐ約350mの商店街。民芸品やお土産、宮島の名物グルメまで幅広く堪能できる宮島のメインストリートである。
頭上には船の帆のように柔らかくざらりとした布の屋根。ゆったりはためきながら、宮島を流れる潮風の心地良さを可視化している。布と布の間から顔を覗かせるのは澱みのない水色。私はもっと旅先での晴天を喜ばないといけないよな、天気大荒れウィークがこんなにもぴっかぴかのご機嫌大快晴にまで好転するとは夢にも思わなかった。

屋根のなみなみフォルムが良い

古きよき浪漫感じる街の中を歩いていく。人が多いので必然的に歩み幅も小さくなり、意識は自然と人混みの頭上へと移る。看板の落ち着いた色合いと遠くに透ける木々の緑が優しい。
表参道という文字の並びに囚われていると気づきにくいが、そうか「参道」かここは。地名でも人名でも何でも、名前がつけられた時のことを勝手に想像する時間は楽しく感じる。

★MIYAJIMA BREWERY -近くて遠い祭り-

実は旅の出発前、宮島グルメ巡りに際して個人的なノルマを課していた。
・MIYAJIMA BREWERYでクラフトビールを飲む
・牡蠣を食べる
・揚げもみじを食べる
あと余裕があれば食べ歩き用お好み焼きとかインスタ映えお団子とか、食欲をそそるものは数え切れなかったがひとまずこの3つだ。神社から近い順で行ってみようか。
となるとね、ブルワリーなんだよな~~みはらし亭の時と同じじゃん。空きっ腹にビールは良くないとあれほど……でも空きっ腹を空きっ腹のままにしておくのはもっと良くないと言い聞かせ、そのままミッションを遂行することにした。

MIYAJIMA BREWERYには宮島唯一のビール醸造所が併設されており、自家醸造のオリジナルビールが飲めると話題だ。この日私が飲んだものは「宮島WEIZEN」というらしい。フルーティで華やかな味わいかつ苦味が少なくて飲みやすかった。フルーティといっても柑橘系というよりはバナナみたいな芳醇さがイメージとしては近い気がする。普段全くお酒を飲まないのでこの表現が的を得ているのか若干不安だが、こだわり抜いた先の最高の結果を提供してくれているのはとてもよく分かった。

さすがにSサイズにしたよ

うだる暑さの中、結露しまくったカップでキンキンのビールを嗜む。祭り屋台感があって良いな。自分自身は屋台でビールを買ったこともないしもらったこともないけれど、近くで見てきた景色ではあった。別にその世界へ合流したかったわけではないが、少しだけあの時見た大人たちの背中に近づけた気がしてじんわり嬉しくなった。

★岩むら -'揚げ派'の皆さんお待たせしました-

牡蠣といえば、生牡蠣、焼き牡蠣、牡蠣鍋など色々な楽しみ方があるが、私にとってダントツで一番好きな食べ方が'揚げ'、フライである。私はかきフライが死ぬほど好きだ。定食屋さんに行くと必ずかきフライ定食を探してしまう。牡蠣自体も好きではあるのだが、オイスターバーに行きたいかと言われると案外そうでもなくて、あくまでかきフライが好きみたいだ。

本場広島産の牡蠣によるかきフライなんて絶品にきまっている。絶対食べて帰るからな!と、はりきって宮島まで来たとはいえ、この島には牡蠣専門店など都会のコンビニ並みに存在する。一体どこに入ればよいのやら……あえて道のりを調べず人の流れに身を委ね歩いていると、右手に雰囲気のある白い暖簾と美味しそうな食品サンプルの展示棚が現れる。

目を凝らさなくてもすぐ分かった。居るわ、ここ。
「いらっしゃいませ~」

定食屋さんの店構えってあたたかい

見つけて5秒後には入店していた。店員さんがお水を運びにきて早々にかきフライ定食を注文。
おーー展開早い、展開早いぞ!人生、突然アクセルが踏まれたようにぐーーっと進む瞬間って時々あるよなと思う。しかも自分でアクセルかけたつもりがない場合もまあまあある。おうおう何か動き出したんだけど?みたいな。

メニューを眺めてみる。かきフライ定食、かきフライ丼、かき丼、かきうどん、卵とじもあるのか。牡蠣の楽しみ方ってどれも良い意味で遊びすぎてなくて品を感じるから好きだ。
なんか、気づいたらここにたどり着いていたような気がする。もう2日目の後半か。そんなぼーっとした頭のまま、優しい明るさの店内でおしぼりを開いたり閉じたりしながら待った。

かきフライもこちらを見ている気がする

き、きた~~~夢の大皿!かきフライ一個一個が大きい。黄金色の衣越しに牡蠣がうっすら見える。衣が薄いからなのか、衣を内側から押し広げるほどに身が詰まっているのか。いずれにしても普段の牡蠣とは違うオーラを感じる。タルタルソースもたっぷりボリューミー、どっぷりつけで頬張る。

頬張った後、口は塞がっているので鼻から大きく息を吸い込んだ。口の中の幸せを脳や肺にまで行き渡らせるための深呼吸だ。全身にシェアせずにはいられない美味しさ。目の奥の空洞が少し痛む。涙が出る一歩手前のようにふるふると沁みる感動だった。美味しくて泣く経験ってなかなかできるものではないので、改めて私はかきフライが好きなのだなと身をもって実感した。
減っていくのが惜しいよ~……バイバインだっけ、ドラえもんに出てきた無限栗まんじゅうみたいに永遠に増えていってくれ。私も定期的にジップロックで保存するからさ。

★紅葉堂弐番屋 -饅頭ゲシュタルト崩壊-

ひい~~おなかいっぱい!店を出てくるりと向き直して暖簾を見つめ直した。ありがとう岩むらさん、良い時間だったよ。この辺はもう完全に孤独のグルメの五郎さん気分である。
さあ、ここからどうしようか、ひとまず揚げもみじは制覇せねばと紅葉堂に向かう。ちなみに宮島に紅葉堂は2つある。私が行ったのは道のり的に弐号店にあたる「紅葉堂弐番屋」で、こちらは揚げもみじをメインで販売している店舗とのこと。掲げられた赤いのぼりがまぶしい。

幼い頃は 本当に紅葉の入った饅頭だと思っていた

味はあんこ・クリーム・チーズ・レアチーズの4種類だった。チーズ推しなんだ、確かに相性は良さそう。胃のキャパシティが無限だったら全部買って食べ比べてみたかったけれど、今の私は落ち着いた和の甘味を欲している。あんこにしよう。

あっっっつ!!これ運良く揚げたてだな。袋越しでも素手では持っていられない熱さで、まだ油のぱちぱちが生地の奥の方で残っているような感覚があった。
食感はサクッというよりジュワッという感じ。かりんとう饅頭ほど硬くなく、一般的な揚げ饅頭よりは食感として刺激がある。最初見たときは紅葉の形がだいぶ分かりづらく「君本当にもみじ饅頭?」と不安になったが、ひと口かじると馴染みのある優しい甘味がちゃんと口の中に広がってきたので「あ、もみじ饅頭だね」となった。5分もしないうちに完食。

撮る場所を間違えたな 絶妙に映えん

ふとこの時思ったのだが、饅頭と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。私は黒糖の10円饅頭を一番に思い浮かべる。指でつまめるくらいの小さな饅頭で、幼い頃両親が好んで買っていたことがおそらく影響している。
考えてみれば饅頭の見た目や種類は様々で、小麦生地でできた饅頭もあれば、水饅頭のようなぷるんとした餅で包まれた饅頭もある。正直あんこが中に包まれていれば全て饅頭と呼べそうな気もするし、でもそうなると大福は饅頭に含まれるのか疑問だし、肉まんは例外的すぎる。蒸されているうえに大きいし、肉饅頭の略であることも忘れてしまいがちだ。

ん〜〜〜バリエーションがありすぎる!何だ?饅頭って何だ?たぶんこの時世界で「まんじゅう 定義」とググッていた人間は私くらいだっただろう。

〇宮島駅〜宮島口駅 -歩くオレンジジュース-

宮島内のお店の多くは16時〜18時の間に閉店してしまう。そろそろ時間かな、宮島駅に向かいながら少しお土産屋さんを物色してみることに。

まさかの追いまんじゅう 有難く頂戴します

どこを歩いていても"もみじ饅頭"の文字に行き着くくらいには、やはりもみじ饅頭は広島の代表的銘菓であるようだ。ぷらぷらしていると遠くからドラクエのテーマが聴こえてきた。何事かと思い近づいてみると、ちょうどこの夏にもみじ饅頭とドラクエのコラボ商品が出たらしい。あら可愛い。

太っ腹にも1個まるっとそのまま試食させてくれた。子どもは嬉しいだろうなこれ。ちなみにきな粉味のあんことお餅が入った珍しい商品で、1個で結構な満足感があった。これ以外にも期間限定でブルーハワイ味なるものが販売されていて、水色のフレーバーソースをディップして食べるそう。どんな味がするんだろう、変わり種としてラムネ餡とか最近耳にするから、そういう系統のネオ和菓子なのかな。

すっかり西日が強くなっている

さ商店街をしばらく歩いていたら忘れかけていた。そうだ、私は島に来ていたんだった。日が長いとはいえ、来た時よりも西日のじりじりとした刺激を肌で感じる。

宮島駅 翡翠色の屋根が美しい

帰りのフェリーも相変わらずの混み具合だった。今回は船外で完全に海風に吹きさらし状態だったので、隣に居合わせた外国人観光客グループと一緒に風にアハハと翻弄されながら宮島口駅へと帰還。船の手すりから少し身を乗り出すと、先ほど参拝した嚴島神社の大鳥居が見えた。海が西日を嫌というほど反射して、鮮やかな鳥居の赤さえもホワイトアウトしてしまっている。本当に宮島なんて島があったのだろうかと、錯覚しそうなほどの幻想的な靄だった。
新幹線や車と違って、船は前に進みながらも振り返ることができる。船のエンジンで泡立った海の水面を見つめながら、島を離れる人々ってこういう気持ちなのかなとふんわり思いを重ねた。

宮島口駅着。自分の喉がありえないくらい渇いていることに気づいた。そういやたしかに意識して水分補給をしていなかったな、危ない危ない。宮島口駅に隣接しているettoという商業施設内に「伊都岐珈琲」というカフェがあった。個人的にさっぱり美味しいものをグビグビいきたいな、ここは真っ当にオレンジジュースLサイズでいくか。

「お待たせいたしました〜オレンジジュースでございます。当店ではみかん本来の美味しさを感じていただくため、氷なしの提供で失礼いたします。ごゆっくりどうぞ〜」

おっと?

Lサイズ氷なしのオレンジジュースを飲み干す、これが私にとってどういう事かというと、歩くオレンジジュースタンクになるということだ。広島県産の濃厚オレンジジュースなのでもちろん味は美味しくて、渇いていた喉にとっては確実に救いのオアシスだった。普段だったらお値段以上でにっこり案件なのだが、一応これでもビールとカキフライ定食と饅頭を胃に入れた後だ。思わぬ刺客"オレンジジュースLサイズ"の強度が伝わるだろうか。

歩く度にたぷんたぷんと波の振幅を感じる。おなかの中に小さな海を飼っているみたいな妙な感覚のまま店を後にした。果実ジュースを注文する時は少し注意をしよう。

〇宮島口駅 -こんにちは赤ちゃん-

ホテルに行く前に、駅のロッカーに預けた荷物を取りに行かねば。ついでに夜ご飯もサクッと調達しよう。
駅前のコンビニにはおみやげ街道も併設されており、広島土産が色々売っていた。今日はお土産らしいお土産を一つも買っていない、強いて言うなら御守りくらいか。最終日に広島駅で揃えれば良いかと考えていたので、このコンビニ物色時もふんふーんという感じで軽く眺める程度で済ます予定だった。

ひろし!広島菜のひろし!

特別何も買わなくて良いか〜と、夜ご飯と飲み物だけ買って立ち去ろうとしたその時、突然あるものにピピーンと照準が合う。息をのんだ。
あ、赤ちゃん……!?

ひょ〜〜〜可愛い

そこに売られていたのは牡蠣の赤ちゃんのぬいぐるみ。"牡蠣の赤ちゃんのぬいぐるみ"という新概念……いや可愛すぎないか。まんまる目の牡蠣がおしゃぶりを加えてこちらをじっと見ている。
正確に言うとぬいぐるみキーホルダーだった。これを一体どこに付けていくんだという話なのだが、こういう少し変わった小さいぬいぐるみに私は昔から弱い。この前も青いステゴサウルスのキーホルダー買っちゃったし。新しい家族が増え続けている。

結局レジでこれを追加して、ルンルンとホテルへ向かった。大股スキップでもしたい気分だったが、大荷物を背負ったまま飛び跳ねたら腰がお亡くなりになりそうだったのでぐっとこらえた。

長い長い、ひとり旅2日目の幕引きである。

DAY3につづく





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