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【ミュージカル映画】YouTubeで見られるミュージカルシーン100選(後編)
(3)後編のはじめに
後編でも、イチオシのこれは豪華だ!見ごたえがある!世界最高のショウだ!と思うミュージカル映画のシーンを紹介していきます。知っている作品も多いと思うので是非色々見てみてください。
Ⅳ.1960年~1969年
1960年代に入り『ウエスト・サイド物語』が大ヒットし、完全にかつてのスター中心のミュージカル映画の時代は終わり、ストーリー性が重視されるようになります。
51.『ウエスト・サイド物語』(1961)
現代版「ロミオとジュリエット」となっているこの作品は冒頭このような9分にもわたる若者たちの群舞から始まります。群舞はいえどもかつてのバークリーの演出のものと全く違い、まったくショウ的ではありません。この作品からミュージカル映画の主流はブロードウェイ原作の大作へと移り変わります。
52.『ザ・ミュージック・マン』(1962)
ワーナー・ブラザーズ製作。ペテン師によって子供たちが楽器が演奏できないのは良くないと信じ込まされてしまうという話。何千もの人々が演奏しながら行進するこのラストシーンはなかなか見ごたえがあります。
53.『ラスベガス万才』(1964)
映画界史上もっとも成功した歌手エルヴィス・プレスリー主演の大ヒット映画。製作はMGM。
54.『メリー・ポピンズ』(1964)
説明不要のディズニー映画の名作。この煙突掃除人たちを率いて踊るシーンは楽しいシーンになっています。この映画はけた外れの大成功をおさめました。
55.『マイ・フィア・レディ』(1964)
こちらも有名なオードリー・ヘップバーンの名作映画。教養もひとかけらの上品さもない田舎娘を、上流階級の教授が彼女を教育して一流の女性に仕立て上げるというゲームを思いついて実行するという作品。男の所有欲みたいなのが見れる名作です。ブロードウェイミュージカルのようにシーンごとにミュージカルパートがセンス良く入ります。製作はワーナー・ブラザーズ。
56.『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)
こちらも有名作。天真爛漫な女性が、ツンデレイケメン主人と無邪気でけなげな子供たちのいる家族と家庭教師として仲良くなり、共に第二次世界大戦を乗り越えるというストーリー。朝ドラ的で実に日本人受けするミュージカル映画です。このシーンもかわいらしくて素敵。製作は20世紀フォックス。
57.『ロシュフォールの恋人たち』(1967)
ジャック・ドゥミ監督のフレンチ・ミュージカル。ウエストサイド物語を彷彿させるような群舞シーン。ハイセンスな衣装とフランスのお洒落な街並みが魅力を倍増させています。色彩の美しさという点ではミュージカル史上最高。
58.『ファニー・ガール』(1968)
コロムビア製作。監督は『ローマの休日』で有名なウィリアム・ワイラー。舞台で失敗ばかりしていた踊り子がジーグフェルドに認められ成功していくという作品。駅の構内を走り、汽車に乗り、タクシーを飛ばし、桟橋を駆け抜けひたすら歌うこのシーンは映画のシーンとしてサービス精神旺盛。
59.60.『チキ・チキ・バン・バン』(1968)
『メリー・ポピンズ』の大成功にあやかろうと、童話原作で製作されたミュージカル映画。ユナイテッド・アーティスツ。音楽を担当したのはウォルト・ディズニーお気に入りの作曲家であるシャーマン兄弟(イッツァスモールワールドの人)なのだからあやかりかたの徹底が凄い。その甲斐あって音楽がとにかく楽しいです。
61.『ハロー・ドーリー!』(1969)
画質は悪いがなかなか素晴らしいシーンです。前半のルイ・アームストロングととの掛け合いからの後半の圧巻の群舞。まさに豪華。それもそのはずこの映画は製作費2400万ドルという記録的な額をかけて作られました。
このように60年代ミュージカル映画は巨大化していきましたがその分メガヒット作品も生まれました。ところでMGMはどこにいってしまったのだろうか。完全に影を薄くしてしまったようです。
Ⅴ.1970年~1999年
ここからは、ミュージカル映画の時代が完全に終わってしまった70年代以降のものを紹介していきます。
62.『キャバレー』(1972)
ブロードウェイの天才振付師ボブ・フォッシー監督の映画。ナチスがしのびよるドイツで夢を追う若者の映画です。
63.『グリース』(1978)
ジョン・トラボルタ主演の名作ロックミュージカル。車のに乗って踊る子のシーンはエンターテイメント性が非常に高くてクールです。
64.『オール・ザット・ジャズ』(1979)
天才振付師ボブ・フォッシーが監督した自伝的映画。このシーンはクライマックスで自分が死ぬシーン。キラキラな世界にスケルトンの楽器。とにかくセンスが良い。素晴らしいショウのシーンです。
65.『フェーム』(1980)
『ララランド』がヒットした時に最初のシーンの元ネタでは?と騒がれていた映画。芸能専門学校での四年間を描いた作品。MGM製作。
66.『ブルース・ブラザーズ』(1980)
いかにも80年代なはちゃめちゃコメディ映画ですが、このような紛れもないミュージカルシーンもあります(突然始まるからびっくりするが)。歌を歌っているのは”クイーン・オブ・ソウル”という異名を持ち20世紀を代表するアーティストランキングで9位に選ばれたアレサ・フランクリン。歌が異様にうまいのは当たり前です。
67.『ペニーズ・フロム・ヘブン』(1981)
随分と懐かしさを感じてしまうような群舞シーン。タップダンスもあります。製作はMGM。とはいえ衣装や楽器を徹底的に白に揃えて作られた映像はなかなかセンスが良いです。
68.『アニー』(1982)
製作はコロムビア。世界恐慌を背景に生まれた名作ミュージカルの映画化ですが、だいぶ改変が施されたそうです。製作費は5200万ドル。このシーンもさすがはさすがで花火が上がるなどかなり豪華なラストシーンになっています。
69.『コーラスライン』(1985)
ブロードウェイ史上最長のロングラン映画だった『コーラスライン』の映画化。ここまでくるとかなり現代的で圧巻です。
70.『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1986)
ディズニー映画全盛期をのちに支えることになる天才作曲家アラン・メンケンの出世作。小さな花屋に突然宇宙からやってきた植物が現れ大暴れするというコメディタッチのホラー映画で、内容自体はかなり荒唐無稽ですがアラン・メンケン作曲の名曲たちを堪能することができますし、コメディシーンもかなり面白く、とてもおすすめできる傑作になってます。
71.『天使にラブソングを...』(1992)
殺人を目撃してしまった歌手が修道院にかくまわれ、そしてボロボロの合唱隊を指導する羽目になるという映画。ビング・クロスビー主演の『我が道を往く』にも設定は似てますが、こちらはとにかく笑える面白い映画です。筋をちゃんと追って見るとすごい感動するシーン。
72.『ボディー・ガード』(1992)
ホイットニー・ヒューストンと彼女を守るボディーガードのラブストーリー。決してミュージカル映画ではないのですが、最後の歌唱シーンは白眉。
Ⅵ.2000年~2020年
いよいよ21世紀に突入します。再びブロードウェイ原作などでミュージカル映画が作られるようになったのがこの年代でした。
73.『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)
東ドイツで生まれた性転換ロックシンガーヘドウィグが全米を旅するというストーリー。
74.『ムーラン・ルージュ』(2001)
パリのキャバレー、ムーラン・ルージュを舞台にしたオリジナルラブストーリー。ビートルズなどの既存曲がふんざんに使われます。見ての通りの豪華なシーン。
75.76.『シカゴ』(2002)
シカゴの殺人犯ロキシー・ハートが世間を欺き無罪判決を勝ち取りスターとしてデビューするまでを描いた作品。30数年ぶりにアカデミー作品賞を受賞したミュージカル映画。映画版はとにかく演出が素晴らしいです。
77.『スクール・オブ・ロック』(2003)
『天使にラブソングを...』がミュージカル映画ならこれもそうだといっていいでしょう。職なしのロック好きが学校の先生になりすまして生徒たちにロックを教えるというストーリー。最高です。
78.『オペラ座の怪人』(2004)
イギリス、ウエストエンドのミュージカル作品の映画化。オペラ座に住むオペラ座の怪人と彼によって音楽の才能を享受しているクリスティーヌのラブストーリー。このシーンは有名なシャンデリアが落ちるシーンです。
79.『RENT』(2005)
こちらはブロードウェイのミュージカルの映画化。家賃が払えずエイズと差別に苦しむ芸術家たちの物語。めちゃくちゃ感動する素晴らしい映画。かなり奇抜というか人によって下品に感じるかもしれませんが楽しい群舞です。
80.『チャーリーとチョコレート工場』(2005)
チョコレート工場に招待された子供たちと工場長を描いたファンタジー映画。昔ながらの群舞シーンとやっていることはそんなに変わらないのでしょいが、不気味というか悪趣味ですらあります。
81.『ドリーム・ガールズ』(2006)
ブロードウェイ原作のミュージカル映画。黒人女性グループの成功と挫折を描いた名作。歌唱が魅力的です。
82.『ハイスクール・ミュージカル』(2006)
ディズニーチャンネルで放送されたテレビ映画。全世界で社会現象を巻き起こしました。この映画で主演のザック・エフロンは一躍スターになります。
83.『ヘアスプレー』(2007)
ぽっちゃり体型だけどポジティブな女の子が憧れのダンス番組に出演して、その番組のエースのイケメンと恋を成就させるというストーリー。既存映画作品のリメイク。このシーンは大団円で終わるシーン。楽しいです。
84.『魔法にかけられて』(2007)
ディズニープリンセスがうっかり現実世界に来てしまうという素晴らしい設定の映画。当然ディズニープリンセスなので突然歌い出してしまいます。ディズニー特有の自動フラッシュモブ生成マシーンっぷりを見せてくれるこの映画ですが、ストーリーもめちゃくちゃ面白いです。
85.『マン・マミーア』(2008)
ABBAの名曲をちりばめた名作ブロードウェイミュージカルの映画化。おばさんたちの元気な恋模様が描かれます。このシーンで使われるのは名曲「ダンシング・クイーン」です。
86.『NINE』(2009)
フェデリコ・フェリーニの映画『8 1/2』のミュージカル舞台化作品の映画化。良い作品が思いつかないクリエイターの苦悩が幻想と現実を行き来しつつ描かれます。
87.『バーレスク』(2010)
歌手を目指す女性が実力で成り上がっていくというストーリー。圧倒的なパフォーマンスと練られたストーリーで人気があるオリジナル映画です。
88.『レ・ミゼラブル』(2012)
フランス製ミュージカルのイギリスによる映画化。『シェルブールの雨傘』からの伝統なのか全編歌唱シーンになっています。
89.『ピッチパーフェクト』(2012)
ひょんなことからアカペラグループに入り全国大会を目指すというコメディ。
90.『はじまりのうた BEGIN AGAIN』(2013)
マルーン5のアダム・レヴィーンが出演したことでも話題になったジョン・カーニー監督の音楽映画。イギリスからニューヨークへとやって来たシンガーソングライターが失意のままライブハウスで歌っていたところを、落ち目の音楽プロデューサー、ダンに見出されるというストーリー。この「ロストスターズ」は名曲です。
91.『ジャージー・ボーイズ』(2014)
クリント・イーストウッドによるブロードウェイミュージカルの映画化作品。アメリカの大人気グループ、フォー・シーズンズを描いた伝記映画です。このシーンは誰もが聴いたことある名曲「君の瞳に恋してる」の誕生シーン。
92.『ANNIE/アニー』(2014)
再度映画化されました。設定もかなり現代化されていて面白いです。
93.『ララランド』(2016)
世界最高のショウというテーマから言えばこのシーンを選ばざるを得ません。ジャズ女優それぞれの夢を持つ男女が出会い一つ恋をした模様を描く作品です。
94.『シング・ストリート 未来へのうた』(2016)
アイルランドで製作された音楽映画。監督はジョン・カーニー。どん底の男子高校生が一目ぼれした女子学生の目を引くためにバンドを結成するというストーリー。
95.『グレイテスト・ショーマン』(2017)
サーカスの生みの親バーナムをモデルとした伝記映画。楽曲の魅力にあますことなく見せつけられるショウの魅力。とても楽しめる映画です。
96.『美女と野獣』(2017)
ディズニー名作アニメの実写化。
97.『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)
日本でも大人気のバンドクイーンの伝記映画。
98.『スウィング・キッズ』(2018)
韓国で制作されたミュージカル映画。朝鮮戦争の捕虜を集めてダンスチームを作るというストーリー。このシーンは最高のラストシーン。とにかく泣きました。。
99.『アラジン』(2019)
E.T.の地上の冒険のシーンしかり、人は素晴らしい音楽とともに空を飛ぶ映像を見せられると感動してしまうんです。アラン・メンケンの名曲「ホールニューワールド」を実写で見れる時代に生きることができて幸せです。
100.『ジュディ 虹の彼方に』(2020)
ミュージカル女優ジュディ・ガーランドの伝記映画。主演の熱演が光ります。『若草の頃』のトロリーソングはほんとに名曲です。
(4)最後に
ここまで紹介した100のシーンを通して見たら、かなりミュージカル映画の歴史が見えてくると思います。
参考にしたのは『ハリウッド・ミュージカル映画のすべて』というスタンリー・グリーンさんの本と『ミュージカル洋画 ぼくの500本』という双葉十三郎さんの本。近年の映画についてはほんとうであればキネマ旬報あたりで調べるべきだったけど図書館が閉まっているので、最小限の説明にとどめました。
とにもかくにもミュージカルシーンというのは奥が深くてとっても素晴らしいものです。是非お気に入りを見つけてみてください。
(今はこっちで執筆してます)
筆者:とび
学生映画企画『追想メランコリア』の脚本担当。一橋大学社会学部卒業。
入社まであとわずか。
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