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chapter5. AM0:03の公園
「もしもし?うん、今終わったよ」
コンビニで肉まんと缶コーヒーを買ってだらだら歩く。なんとなく、座れる場所を探す。
「うん。なんか暇だったし、こっちも助かったわ。」
久々に穏やかな充足感。
他人の役に立てているということが、自分自身をほっとさせる。
「また人足りなかったら言ってよ。なんかこういうの向いてるっぽいし」
アハハ、と笑った。
そんじゃ、とお互い言って電話を切る。
公園の入り口。ポールをよけて、歩いていく。
AM0:03
スマホの表示を見て、ああそんな時間かと安堵する。今日はとっくに昨日になる。
この時間帯が一番好きだ。誰とも何とも関わらなくていい。自分自身がひとりであることを、夜が許してくれる。
しん、と静まり返った公園に、ぽつりと自分がいる。
真っ暗な闇に飲まれた公園に、月明かりがほのかに射している。
AM0:05
缶コーヒーをあけて、一口飲む。
帰りたくない。
家に帰ると「誰か」になってしまう。
誰にも、なりたくない。
ベンチに座って、肉まんもあけて、そっとかぶりついた。
あーーーーーー、さっむ。
寒いけど、楽。
自分が風景にとけてなくなってしまったみたいだ。
AM0:06
まだ開いていない、一通のメール。
結果は、目に見えている。ならば見てしまえばいい。だけどもう少し、もう少しだけ。
自分のやりたいことなんてない。
いつも誰かのために生きてきた。
相手が笑ってさえいれば、
相手が怒ってさえいなければ、
自分の平穏は保たれるのだ。
それではいけない?
それで生きていくのはいけないことなの?ただ、平坦に、平凡に、変わらず同じ場所にいたいと思うのは、いけないこと?
何かを望まなくてはならない。
目標がなくてはならない。
そんな強迫観念から、ギュッと目を閉じて逃れる。
大きく息を吸って、吐く。
ハーーー、と吐いた長い息が、白く冷えて、消える。