顧客中心主義の視点で「吉野家のメニュー多角化」を考える
皆さんこんにちは。通販エキスパート協会事務局です。
当協会は文字通り「通販のエキスパート」を目指す方々に向けた資格「通販エキスパート検定」を実施しています。
今回は「吉野家のメニュー多角化」についてです。
だいぶ前から、顧客中心主義の視点で本件を題材にしたいと思っていたのですが、役員の大失言事件が有り、見送っていました。発言内容は到底許されるものでは有りませんでしたが、本人の解任も有りましたので、改めて上記テーマについて解説したい思います。
さて、実は私は学生時代、吉野家でアルバイトをしていました。当時は牛丼以外にメニューは朝定食しかなく、牛丼も超特盛や小盛りは有りませんでした。非常にシンプルなメニュー構成だったわけですが、業績も良く、絞り込んだメニューによるオペレーションの優位性が評価されていた記憶が有ります。
しかし、その後「松屋」や「すき家」との「牛丼戦争」で吉野家は苦境に立たされます。そして新たな競争戦略として打ち出されたのがメニューの多角化です。これを顧客中心主義の視点=顧客セグメント別体験設計として表現すると、以下のように整理できます。
従来の吉野家の顧客層は「肉をがっつり食べたい」人々です。このセグメントには既存の体験価値の延長線上にある「牛丼超特盛」をメニューに追加しつつ、今まで存在しなかった肉系定食メニューを導入しました。私自身、それまでは肉を食べたいが野菜も入った定食で食べたい、という時は松屋を利用していました。
一方、それだけでは客数そのものはそれほど増えません。やはり新しい顧客層の開拓が必要です。そこで、女性需要や家庭内需要という新しい顧客層向けには、従来の体験価値である牛丼メニューを提供しつつ、新たに牛丼小盛やライザップ牛サラダのようなヘルシーメニューを追加しました。
いかがでしょうか?既存顧客層の「吉野屋ばなれ」を防ぎつつ、在宅需要も含めた新しい顧客層の開拓を行う、という二面作戦です。そして新たに開拓する顧客層の中の戦略的ターゲットは若い女性です。若い女性の吉野家への抵抗感を減らせば、本人だけでなく友人同士やカップルで来店してくれる期待も持てるし、将来は子供も吉野家ファンになってくれるかもしれません。
こうしてみると、近年の吉野家のメニューの多角化は、単に松屋やすき家のメニューに対抗するというだけでなく、「どの顧客層にどのようなメニュー(体験)でアピールするか」という戦略の上に展開されていることが分かります。
恐らく、吉野家の次のチャレンジは高回転を意図したカウンターのみの店舗を駅前一等地で維持しつつ、郊外店舗や商店街の中などではテーブル席もある清潔感を重視した店舗も展開して、家族連れにも来店してもらうことなのではないでしょうか。この場合の競合はマクドナルドや、うどんチェーンになるでしょう。都心部の「吉呑み店舗」と好対象ですが、期待したいと思います。
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