【雑記】第10回 アイドル楽曲大賞 投票候補曲紹介(アルバム部門)
第10回では、アルバム部門についても触れていく。普段、恥ずかしながら意識してアルバムを通して聴くという習慣があまりないため、アルバム部門は投票はするものの熱意をもってコメントをしなかったのだが、今年はどうしても語りたいアルバムがいくつか出たので紹介していく。
アルバム部門では、メジャー、インディーズ、地方もひっくるめて3作までが投票可能である。もちろん全然枠が足りていないため、5作品紹介する。あと私には、あくまでフルアルバム(9曲以上収録のボリューム)のみ投票する。EP、ミニアルバムは投票しないという謎のこだわりがあるので、ご了承いただきたい。
5位(投票枠外):曖昧なアルバム1 / 美味しい曖昧
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ギターリフが終始跳ねまわっており、リズムが堪らなく気持ち良い。そんな楽曲たちが、たっぷり収録されている。イントロ・歌いだしから疾走感抜群の「5.メがンでドがクで」、「9.あまあま」は、このアルバム、そして美味しい曖昧を象徴するような楽曲だ。「2.サプリメ」、「10。綺麗事スコープ」では、鍵盤ロックも取り入れている。「7.sugar beat」のアンニュイで落ち着いたサウンド。。壮大なメロディラインの「11.ナチュラルアレルギー」、イントロから美メロで魅せるミディアムバラード「13.サイカイノユメ」、と13曲ボリュームたっぷりながら、とんでもなくバリエーションが豊か。ギターロック好きな人には必聴の名盤となっている。
4位(投票枠外):Eternity / RINGOMUSUME
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地方グループのヤバいアルバムが今回も出てきた。前回は新潟のRYUTistの「ファルセット」が凄まじい名盤だったが、今回は青森のRINGOMUSUMEのアルバムがヤバい。
再生ボタンを押した瞬間に「1.SNOW MONSTER」の力強いイントロにアッパーカットを喰らったような衝撃を貰う。90年台ディスコナンバーを思わせるバブリーなメロディに、艶やかに伸びる歌声。確かな実力を持ったグループであることを十分に見せつけた後に、方言が堂々とタイトルに入った「2.JAWAMEGI NIGHT!!」が流れてくる。地方アイドルらしいお祭り曲となっているが、三味線とシンセが合わさり、アゲアゲのお祭り感と楽曲自体のカッコ良さが奇跡的なバランスで両立されている。他にも地元推しの楽曲がこのアルバムには収録されているが、どれも楽曲としてのクオリティが非常に高い。「3.JIGA-JIGA」は、爽やか。「5.DAISUKI 青森」は王道すぐるフォークバラードで泣きそうになるし、「10.DA-BION」は、サビで「じっちゃとばっちゃが出会ってとっちゃが生まれた」と歌ってるのに、ギターがとんでもなくカッコいい。この地元推し感・アイドル感・楽曲のクオリティすべてを両立させたバランス感覚こそが、RINGOMUSUMEの最大の魅力だ。地方アイドルグループの理想形の一つと言えるだろう。
3位:絶対結婚しような!!!! / くぴぽ
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ふざけているようで、全くふざけていない。大真面目にマスターピース。まず、「1.絶対、結婚しような!」と、タイトル曲を最初に持ってくるセンスが直球過ぎて好き。そして開始37秒で、野太い声が入ってくるのだが、これがメンバー兼Pのまきちゃんによるもの。くぴぽの楽曲、そしてくぴぽの存在を色物にしているのが、まきちゃんの存在なのだが、同時に素晴らしいアクセントをつける役割を担っている。くぴぽの楽曲には、いい塩梅の哀愁というか、それとは相反する多幸感、言うなれば過ぎ去ってしまうと分かっている青春のようなイメージを感じるのだが、それはまきちゃんの声なしには考えられない。
サビのユニゾンが美しすぎる「4.あたしが星座になる前に」、そこから「5.あんだーすたんどみゅーじっく」、「6.方舟で運ぶね」とラウドな曲が続いた後に「7.天国」、「8.ふたり」とゆったりとしたミディアムナンバーが来る緩急が素晴らしい。続くオシャレなポップナンバーの「9.Shuffle」、メンバーのメロウなソロパートにやられる「10.紫陽花と短冊」、歌いだしのボンボン ボボンボン シャボン♪が気持ち良い「11.シャボン玉ホリデー」と全く飽きることなく聞き続けることができる。
歌詞に着目すると、「1.絶対、結婚しような!」、「4.あたしが星座になる前に」、「11.シャボン玉ホリデー」は、アイドルを推すというサブカル行為を、一期一会の人との出会いという普遍的なテーマに見事に落とし込んでいる。そしてこれが、アルバム全体の大きなテーマとなっているのだ。コンセプトを明確に、かつ、絶妙な塩梅で打ち出すことに成功している点でもマスターピースと呼ばざるを得ない。
2位:11という名の永遠の素数 / 22/7
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いや、なんでこれ楽曲派オタクの界隈でひとつも話題に上ってないの? 界隈が違うってこんなに残酷なの? って思ってる。これは本当に名盤中の名盤。22/7(ナナブンノニジュウニ)は、秋元康 氏がプロデュースを手掛ける声優アイドルグループで2016年に活動開始。リーダーの帆風千春さんの卒業を節目として、それまでの約5年間にわたる活動を「第一章」と締めくくるべく製作されたのがこのアルバムである。帆風千春さんを入れて、メンバーが”11”人であることから、Overture含めて”11”曲収録の最後の楽曲に「11人が集まった理由」(しかもこれは1stシングル「僕は存在していなかった」のカップリングで初期曲)を持ってくるという演出が本当にニクい。22/7は内気で人見知りな性格のコが多く、メンバー同士の仲が非常に良い。つまり、この「11人が集まった理由」は、22/7をもっとも体現している楽曲といっても過言ではない。こんなもの、活動開始当初から推している人にとっては、堪らない構成だろう。
5年越しの1stアルバムということもあり、収録曲の殆どはシングル表題曲。アルバム新録は、「9.ヒヤシンス」、「10.空を飛んでみよう」の2曲のみ。カップリングからは「11.11人が集まった理由」のみという構成だが、そのどれもが素晴らしい。「2.僕は存在していなかった」はアカペラ歌唱で始まり、Bメロ、サビの美メロが非常に際立つ楽曲。続く「3.シャンプーの匂いがした」は、陰鬱な歌詞が多い22/7の中では異色の可愛らしい仕上がり(といってもがっつり失恋ソング)でありながら、間奏のバイオリンソロがとてつもなくカッコいい。「4.理解者」からは、楽曲にアクセントとして台詞パートが取り入られ始める。この台詞パートは、「5.何もしてあげられない」、「6.ムズイ」と重要性を増していく。シリアスな内容の台詞を淡々と、ないしは吐き捨てるかのように入れるパートは、22/7の唯一無二の個性と言える。「9.ヒヤシンス」では、ワンフレーズのみのコーラス+メンバー全員の台詞パートでサビを作ってしまうところまで発展するのだが、迫力がえげつない。「10。空を飛んでみよう」は異国情緒ある演奏が、非常に異色。シングル曲と並べると、アルバム新録の2曲はかなり個性が強いのだが、不思議と浮いたりはせず、収録楽曲全てに統一感がある。それがメンバーそのものと言って良い「11.11人が集まった理由」で5年間の軌跡ごと締めくくられるのだから、アルバム全体の聴き応えが半端じゃない。
11月24日に8thシングルが出されることが発表され、これが22/7の第二章の幕開けとなるわけだが、どんな楽曲が生まれるのか非常に楽しみである。
1位:DIALOGUE+1 / DIALOGUE+
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まあ、今年はこれだよな……。間違いないもの。まず、このツイートを見ていただきたい。
これ、なんのフェス? って私も思った(笑)。関わっているクリエイター陣が強すぎて、チートな上に、それを何回も使用している。そして当然ながら捨て曲一切なしで、関わっているクリエイターの数だけ色があるわけで、彩り豊かな名曲揃いのアルバムとなっている。
特に「4.謎解きはキスのあとで」が本当に素晴らしすぎる。ミステリーになぞらえたお洒落すぎるリリックセンスが冴えわたる極上のポップソング。ファルセットを多用した高揚感溢れるサビは、最初聴いたときには良すぎて何が何だか分からなくなって泣き笑いしてしまった。桜エビ~ずの「それは月曜日の9時のように」と双璧を成す傑作アイドルポップスとして今後語り継がれていく予感がする。続く「5.プライベイト」も圧倒的お洒落さを引きずったまんまで展開していて、Bメロの小気味良いリリックが非常に良い。他にも楽曲大賞メジャー部門で投票候補にしている「6.あやふわアスタリスク」ももちろん最高だし、ストリングスが美しい「10.おもいでしりとり」。跳ねるギターとお茶らけたリリックが中毒性抜群の「9.アイガッテ♡ランテ」は楽しすぎる。そして、ストリングスを多用した壮大なバラードの「12.透明できれい」がラストかと思いきや、そこからデビューソングの「はじめてのかくめい!」の2021年ヴァージョンを持ってくるのもまたニクい演出である。
クレジットに載っているクリエイター陣のそうそうたるメンツに大いにつられて結構なので、アイドル・声優ファンのみにとどまらず広まって欲しい名盤である。
終わりに。
ここまで5枚のアルバムを紹介したが、他にも「FRUN FRIN FRIENDS / FRUN FRIN FRIENDS」、「synchronism / Ringwanderung」等、素晴らしい作品が出ているので是非ともチェックしてほしい。
例によってEP、ミニアルバムには投票しないつもりだが、「Open My Eyes / Sway Emotions Slightly」、「君と音楽と青春 / WE=MUKASHIBANASHI」は、その拘りが揺らいでしまうかと思うほどの傑作だった(実に分かりにくい形容)。
実際の投票は、12月ごろということもあり、まだまだ番狂わせの楽曲・アルバムが出てくる可能性が大いにあるので、引き続きアイドルシーンを見ていきたい。