You are my crushと言われ、頭がcrushした話
あるミャンマーの”男”に聞かれた。
「”彼”が言ってたけど、”お前”と”彼”両思いなんだって?」
”俺”は頭が真っ白になった。
俺は男子大学生で、夏休みにミャンマーを旅していた。
これはその時の恋愛物語だ。ただの恋愛物語ではない。
公開前に知人数名に読んでもらったが、こんな話は聞いたことがない、と口を揃えて言っていたので間違いないだろう。
この出来事がきっかけで、俺は、男らしさ、や、女らしさ、という言葉について深く考えることになった。
1日目 ”シェリー”との出会い
ミャンマーについた。夜の8時だが暑い。
予約したホステルに着いて、チェックインした。
受付で対応してくれた女の子は笑顔が素敵でとても優しかった。
受付で対応してくれた女の子はこの物語で重要な人物なので仮名”シェリー”としておこう。
たまたま尾崎豊の「シェリー」が頭に浮かんだからだ。
このホステルには従業員がいっぱいいた。そして、みんなで共用のリビング兼カフェがとても広くて、いいところだと感じた。
2日目 内股の”ウォーリー”と薬局へ
薬局を探した。
日本で手のひらを切って、化膿していたので、手に塗る軟膏のようなものが欲しかったからだ。
適当に街を歩いていると、屋台のような薬屋を発見。
店主は英語も日本語も喋れない。
手の傷を見せてしかめっ面をして、とにかく痛むということをなんとか伝えた。
するとそれらしきチューブの薬をもらったので、まあ良いかと思い数十円ほど払い、購入した。
ホステルに戻り、みんながくつろぐ共用のリビングで手に塗り薬を塗っていると、一人の従業員の男が近寄ってきた。
その男は身長が高く、痩せ型でメガネをかけていた。おそらくイケメンという部類に含まれるであろう顔立ちだ。
この男、非常に重要な人物なので仮名”ウォーリー”としておく。
メガネで細身だからウォーリーだ。
ホステルの従業員達は英語がそこそこ喋れる。
ウォーリーは塗り薬を塗っている俺に「見せて」と言ってきて、俺の手をぎゅっと握ってきた。
突然手を握られのは少し抵抗があったが、何やら心配そうに傷口を見ているのでそのまま見てもらった。
見終わると、彼は「僕は薬学を習っていた。
だから分かる。
この薬は良くない。今から一緒に薬局に行こう」と言ってきた。
一緒に薬局へ向かうことにした。
外は小雨で、ウォーリーは傘をさしていたが、俺は小雨なのでそのまま歩いていた。
するとウォーリーはしきりに相合傘をしようとしてくる。
ちなみにウォーリーの歩き方は内股だ。
相合傘にするほどの雨でもないし、そのまま歩いていた。
めちゃくちゃ暑かったのでTシャツをバタバタとしてあおいだら、俺のお腹が見えたようで、ウォーリーは何故か顔を赤めながら「やめてっ!照笑」などと言ってきた。
ちなみにウォーリーの歩き方は内股だ。
薬局で薬を選んでもらい、ホステルに戻るとウォーリーは「塗るから貸して」と言ってきた。
流石に自分で塗る。
薬局に連れて行ってくれたお礼をいうと、顔を赤らめとても喜んでいた。
彼は「君は日本に彼女いるの?」と聞いてきた。
彼女はいないので、「いないよ。」と言うとなぜか喜んでいた。
みんなは受付で対応してくれた笑顔の素敵な女の子、”シェリー”を覚えているだろうか。その時シェリーは横目でじっとこっちの様子を見ていた。
3日目 自分の顔面が美しいか聞いてくる"ウォーリー"
2日分しかホステルを予約してなかった俺は受付で1日延長してもらった。受付はもちろんシェリー。
この日はあまり体調も優れず、外も雨だったのでホステルで携帯をいじったり読書したりしていた。
ホステルで過ごすときは寝る時以外は、共用のリビングで過ごす。
リビングはこんな感じ
リラックししてYouTubeをイヤホンをつけて見ていたら、ウォーリーがぽんぽんと肩を叩いて隣に座ってきた。
内心、邪魔すんなよなあ、と思いつつ「何?」と聞いた。
するとウォーリーはスマホの画面で自分の顔の写真を見せながら、
「これって美しい?」と聞いてきた。
どういう質問だよ?
早く終わらせて動画の続きを見たかったので適当に「ああ、そうだね」と相槌をうった。
彼はめちゃめちゃ照れながら、さらに近寄ってきて今度はまた違う写真を見せて「これは?」と聞いてきた。
だるくなってきたので「ok,ok」と適当に相槌をうって終わらせようとしたら、また写真を見せてきた。
無限地獄だ。
その後数分間ウォーリーの顔写真を見せられ、最後にツーショットを撮り、自撮りイベントは終わった。
その時シェリーは横目でじっとこっちの様子を見ていた。
4日目 俺、発熱。
俺は熱が出た。
受付でもう1日分延長してもらいに行くと、ウォーリーがやってきた。
するとまたスマホの画面を見せてきた。
しんどくて早く寝たかったので、「しんどいから。」と言い、ベッドに戻ろうとすると、これだけは見て欲しいという。
もしかしたら何か重要な情報でも見せてくれるのかもしれない、と思い画面を見た。
彼の満面の笑みの自撮り写真だった。
俺は殴りそうになった右手を何とか止め、ベッドに戻った。
とにかく暑い国なのに寒気がした。
俺の部屋には他に2人旅人がいて、その人たちには申し訳ないけどエアコンを切って寝ていた。
ホステルのベッドはこんな感じで、4人部屋だった。
5日目 "マルフォイ"との出会い
幾分マシになったが体調はまだ優れない。
とりあえずベッドでゴロゴロしていた。
すると隣のベッドのフランスの若い男が「大丈夫?病気?」と心配して話しかけてきてくれた。
俺がエアコンを切ったから暑くて暑くてたまらなかっただろうのに。
病気の時は人間孤独感を感じるもので、しかもここは異国の発展途上の国。
非常に嬉しかったし、1人じゃないと感じた。
ちなみにこの時のフランス人とはこの後一緒にインドを旅し、今でもSNSでやりとりをしている素晴らしい友人になった。
昼頃幾分体調もましになり、共用のリビングでダラダラ過ごしていると、例のフランス人が「一緒に昼飯でもいこや」と誘ってくれたので、行くことにした。
ホステルを彼と一緒に出る時、ウォーリーとシェリーはじっとこちらを見ていた。
飯を食って、ホステルに戻ってダラダラしていたら初見の従業員がいた。
英語がかなり堪能に喋れる様子で、「よろしくな!インスタ教えてや!良かったら明日俺の学校きて英語喋ってや」と情報量の多い挨拶をしてきた。
とりあえずインスタを交換した。
この男かなり整った顔立ちで、日本人にも似てる雰囲気があり、日本にいたら確実にイケメンと言われるだろう。
インスタで「明日俺の通ってる学校に遊びにきてや」と言われたが、体調も本調子じゃないし気分も乗らないので断った。
すると「じゃあ明後日は?」と、なかなか図々しい発言をしてきた。
この男を仮名”マルフォイ”としておこう。
結構腹が立つやつだからだ。(ハリーポッター参照)
登場人物を整理しよう。
俺(男):当時20歳の大学生
シェリー(女):ミャンマー人。受付にいつもいる笑顔が素敵な女の子。しばしばこちらの様子をじーっと見つめているのが気がかり。
ウォーリー(男):ミャンマー人。背が高くメガネをかけている。内股で歩き、自分の写真を見せてきて綺麗かどうか聞くのが趣味。基本的には優しいやつ。
マルフォイ(男):ミャンマー人。イケメン。英語が堪能で図々しい一面を持つ。
フランス人(男):ホステルで会って仲良くなった友達。今でも仲良くしている。
ここにいる全員とInstagramを交換している。
6日目 衝撃のDM。
体調はぼちぼち。
朝食を食べていたらマルフォイが「学校はこない?」と聞いてきた。
いや、「行かへん言うたやろ。」と言うと、「せやったら明日でもええよ」と言ってきた。
いや待て、ええよってなんやねん。
とりあえず今日は行かない旨を伝え、明日も明後日も予定はわからないということも伝えた。
リビングでイヤホンをして映画を見ていたら、またウォーリーがスマホ片手に隣に座ってきた。
「この写真はどう?」と、自分の顔面の写真をまた見せてきた。
俺はイヤホンをして映画を見て、しかもいい場面だったのに、だ。
「今映画を見ているから、後にしてくれ。」と断った。
実際のところしばらく前からウォーリーは男の人が好きなんだろうなあ、と思っていた。
言動行動態度から見ても明らかで、俺に対する好意も感じていた。
そしてアタックはどんどん積極的になってくる。
俺は女性が恋愛対象だし、彼を恋愛的に好きになることは無い。
だが、彼がいいやつというのは伝わってくるから、邪険に扱わず、フレンドリーに接していた。
すると、図々しい男”マルフォイ”からInstagramにDMが届いた。
主なやりとりは以下のような感じだ。
マルフォイ:お前に一つ聞きたいことがあるんだ
俺:どした?
マルフォイ:怒らないでほしい
俺:どうした??
マルフォイ:ウォーリーとお前は付き合っているのか?
俺は頭が真っ白になった。
俺:マジでお前は何を言ってるんだ!?
マルフォイ:ウォーリーがお前に一目惚れしたらしい。
俺:それはなんとなく知ってた。
マルフォイ:ウォーリーが「あいつも俺のことを好きなんだ。好き同士」ってホステルの従業員みんなに言ってたぞ
ナニヲイッテルンダアナタハ?
俺:ふざけんな、あいつの嘘だ。俺は女性が好きだ。
マルフォイ:あいつが言うには、お前があいつに微笑むって
俺:俺はフレンドリーなだけだ、それをそんな風に勘違いされるのははっきり言って腹がたつ。
マルフォイ:わかったわかった。やっぱりそうだったか気にすんな。
ウォーリー本人に直接言ってやろうかと思ったけど、あくまで第3者から聞いた噂話だ。
噂話で動く男にはなりたくない。
だからとりあえず、ウォーリーの目の前で女の友達にビデオ電話をかけることにした。
楽しく女の人と喋ってる様子を目の前で聞かせて、俺が女の人が好きだと思わせる作戦だ。
電話を終えたら、ウォーリーがすかさずやってきて、いまの電話の相手は誰か聞いてきた。
俺が「さあね?笑」と言うと、プイッと拗ねて何処かへ行ってしまった。
漫画でしか見たことがないような、見事な拗ね方だった。
7日目 過激化する"ウォーリー"の思い込み
このホステルでずっと仲良くして、今でも仲良くしているフランス人と一緒に街を観光した。
ホステルに帰ってきたらマルフォイからInstagramのDMが届く。
彼からのDMは何か不吉な予感しかしない。
マルフォイ:おい!ウォーリーが「あいつに嫌われた」って言ってるぞ
これはもしや、俺が女性に電話をかけた作戦が効いているのか?、と思った。
俺:どういうこと?笑
マルフォイ:「あいつはあのフランス人と付き合ってやがる」って悲しんでた。
ナニヲイッテルンダアナタハ?
どうやらフランス人と仲良くしているのを見て、俺と彼が付き合っていると思っているらしい。
それも本気で。
俺:もう勝手にしてくれ笑
マルフォイ:それは置いといて、明日映画にでも行こうや。
俺:まあええで
そして俺はマルフォイと映画に行くことになった。
8日目 俺、マルフォイと映画へ。帰り道にて衝撃のカミングアウト
タランティーノ監督の新作がミャンマーでもやってたのでそれを見ることにした。
マルフォイはチケットをおごってくれた。
2時に映画が始まるとのことだったので、1時50分くらいに入ったらもう始まっていた。
ふざけんな。
ミャンマー語の字幕はついていなくて、英語の音声のみ。
多分見てる人の9割9分が意味もわかってないんだろうけど、ほぼ満員だった。
笑うところはみんなで笑って、残酷なシーンは oh my godみたいな雰囲気になっていて、俺は結構ミャンマーの映画館が気に入った。
帰り道、マルフォイが「お前はウォーリーが好きなのか?」とからかってきた。
これ以前にもDMで何度も違うと言ってるのにしつこいので、好きじゃないしもうやめてくれ、と言った。
マルフォイがぼそっと呟いた。
「俺ウォーリーとキスしたことあるんだよ」
意味がわからなかった。
マルフォイが言った。
「ホステルの共用リビングあるだろ?あそこで寝てたらあいつが近づいてきてキスしてったんだ。俺はあいつのことが好きじゃないし、本当に好きじゃないんだ。本当さ!」
いやあんた、俺何一つ疑ってないのにそんなに否定したら、怪しいよ。
そもそも聞いてないことペラペラ喋り出したのあんたじゃん。
夜、受付嬢のシェリーからDMが来る。
シェリー:あなたは男が好きなんですか?
ウォーリーが従業員に俺と両思いと嘘をついたのはどうやら本当らしい。
俺はちゃんと否定し、女性が好きと伝えた。
そのほかの従業員にも俺とウォーリーが付き合ってないことを説明した。
そしてみんなが寝始めた頃、衝撃の光景を目の当たりにする。
共用リビングでマルフォイがウォーリーに抱きつこうとしていたのだ。
何をやってんだあんたは?
なるほどマルフォイはウォーリーのことが好きで、俺がウォーリーのことをどう思ってるのか知りたかったのだな。
だから映画に誘ったのかな、などと推測した。
すると夜遅く、マルフォイからDMが来た。
マルフォイ:その後ウォーリーとお前はうまくやってるか??はっはっはー
マルフォイはとにかく俺にウォーリーが好きと言わせたいみたいで、本当にしつこくDMしてきた。
ここに書いている以外にもしつこく言ってきた。
本当にめんどくさかったし、「もういい加減にしろ。やめろ。」と言った。
すると彼は「そんなことですぐ怒るな!!」と逆ギレしてきた。
これ以降マルフォイはあまり俺に寄ってこなくなった。
9日目 俺、ミャンマーのカラオケにて最大のミスを犯す
フランス人が次の目的地に行くために一足先にホステルを去ってしまった。
仲良くしていたのに残念だ。
ウォーリーはフランス人をニコニコしながら見送っていた。
恋敵、消えた、と思っていたに違いない。
この日、シェリーが俺に日本語を教えて欲しい、と言って来たのでひらがなを教えた。
ノートに一生懸命に練習している姿は、応援したくなった。
夕方、従業員連中からK-TVに行こうと言われた。
K-TVというのはカラオケのことで、ミャンマーではカラオケが大人気のようだ。
ミャンマーのカラオケなんてなかなか行く機会もないし、従業員4人と一緒にカラオケに行った。
もちろんその4人の中にはウォーリーとマルフォイが含まれる。
ミャンマーのカラオケは機械はかなり古く、曲のほとんどがミャンマーの曲ではあったが、一応日本の歌も何曲か入っていて、洋楽もそこそこ入っていた。
従業員のうち洋楽に精通している者と一緒に、曲を選んだ。
ワンダイレクションというグループの曲なら知ってるというのでそれにした。
俺も何曲か知っていたので、有名な”What makes you beautiful”という曲を一緒に歌った。
歌詞を抜粋する。
You don’t know you’re beautiful (君は君が美しいことを知らない)That’s what makes you beautiful (そんな君だから美しいんだ)
みんなは覚えているだろうか。
ウォーリーが頻繁に俺の隣に寄ってきて、自分の顔の写真を「これは美しい?」と聞いてきたことを。
そうだ、この曲は彼に対するアンサーソングになってしまったのだ。
それも完璧に。
しまった、、と思った。
歌いながら青ざめていく俺とは対照的にウォーリーの頬はみるみる赤くなっていく。
歌い終わったら、ウォーリーがすかさず寄ってきて耳元で囁いた。
「これって僕へ向けての曲だよね?」
断じて違う。
断じて違うことを伝えた。
が、彼は「照れなくていいんだよ」と聞く耳を持たない。
10日目 俺、ウォーリーへ思いを告げる。
ウォーリーは調子に乗っている。
そりゃあそうだ、俺がラブソングを彼に向けて歌ったと思っているのだから。
ウォーリーが俺に言ってきた、「今日、君は俺と遊ぶ。どこに行く?」と。
おいおいおいおいちょっと待て待て。
一言も遊ぶ約束などしていない。
なんと、彼が勝手に俺の予定を決め始めたのだ。
このままだとどんどんエスカレートしていくと思った俺は、正直に彼に思いを伝えることにした。
告白もされていないし、あくまで又聞きで好意を持ってることを知っていたので、なかなか正直には言えなかった。
俺は真剣な顔で正直に伝わるように、ゆっくりと言った。
「俺はあなたとは付き合ってないし、
俺はあなたのことを好きでもない。
勝手に俺の予定を決めないで欲しいし、
勝手にいろいろなことを思い込まないで欲しい。」
ウォーリーはとても悲しそうな表情をして、俺の前から立ち去った。
これでこの物語は一つ幕を閉じたと思った。
俺は大きく息を吐きながら、このクレイジーな物語を頭の中でもう一度振り返った。
ウォーリーから始まり、ウォーリーで終わった。
そんなことを思っていると、受付のシェリーが俺の名前を日本語でどうやって書くか聞いて来た。
彼女のノートに丁寧にひらがなで俺の名前を書いてあげると俺の名前をノートにめちゃめちゃ練習し始めた。
「俺の名前なんて覚えても何の役にも立たないよ。」と言っても、頑張って練習していた。
異国の全然知らない男の名前を必死に練習している彼女の姿に、若干の違和感を感じた。
帰国後 衝撃の結末。事実は小説よりも奇なり
次の日、俺はインドへ発つことにした。
そしてインドで一ヶ月弱過ごし、日本に帰った。
インスタで「日本に帰ったよ」という投稿をしたら、シェリーからDMが届いた。
シェリー:日本で撮った写真を欲しい。
日本語を勉強するくらい日本のことを好きでいてくれてるみたいなので、俺の写真フォルダにあったできる限り綺麗な日本の風景の画像を数枚送った。
シェリー:ごめん。そうじゃなくて、自撮りを送って?
俺:どういうこと!?
シェリー:なんでもいいから自撮りを送って!!
意味がわからないけど、いろいろお世話になったから適当にピースサインした自撮りを一枚送ってあげた。
シェリー:もう一枚!!
数分後
シェリー:もう一枚!!!早く!!!!
数分後
シェリー:なんで送ってくれないの?
ちょっと怖くなって来たのでさっきと同じ写真をもう一度送った。
シェリー:さっきと同じでしょそれ。もう一枚!!!
数分後
シェリー:早く!!!!
数分後
シェリー:そうなのね。あなたは私のことが嫌いなのね?わかりました。
さようなら
俺:ちょっと待って、意味がわからないんだ。何で写真が欲しいの?
この時俺はもしかしたら、シェリー俺のことを好いてくれてるのかな?
それで自撮りが欲しいとか言ってくれてるのかな?、などと推測していた。
そうすると、彼女が頑張って俺の名前を書くのを練習してくれていたのも辻褄が合う。
しかし事実は小説よりも奇なり。
シェリー:あなたの顔写真をプリントした枕と、あなたの全身写真をプリントしたベッドカバーを作るためよ。
俺は頭が真っ白になった。
顔が真っ青になった。
この可愛い熊の所に俺の写真が入るかと思うと、やばい。
かなりやばい製品をシェリーは作ろうとしている。
俺:どういうこと!?冗談、だよね?、、、笑
シェリー:冗談じゃないです。
俺:ちょっと意味がわからない。
シェリー:
正直に言います。
You are my crush.
あなたに一目惚れしました。
愛しています。
だけどあなたにその気持ちがないことも知っています。
これ以上メッセージを送っても迷惑なのでお別れをします。
さようなら。
You are my crush なんて台詞、映画とドラマでしか聞いたことがなかったので、まさか自分が言われる日が来るとは思ってもいなかった。
俺:
ありがとう。
ごめんなさい、僕はあなたのことを恋人だとは思っていません。
でも友人だと思っているし、メッセージを送ってくれるなら大歓迎だよ。
と送り、シェリーは理解してくれたようで、枕、ベッドカバーの製作も中止してくれるそうだ。
ウォーリーが俺のことを好きで、マルフォイが俺に嫉妬してることばかりに目を取られていたけど、思い当たる節がないわけではない。
その証拠に、いつもシェリーはこっちを見ていた。
今でもシェリーはたまにDMを送ってくれる。
俺が海で撮った上半身裸の写真をInstagramに投稿すると服を着なさい、と言い、
女性と一緒に写っている写真を投稿すると、その女性は嫌いです、と言ってくれる。
友好的?な関係を築けている。
彼らはみんな優しく、思いやりのある、いい人たちだった。
愛情表現が、俺や、俺が思っていた”普通”と違っただけ。
ウォーリーは”女っぽい”とたくさんの人に言われていた。
マルフォイは容姿から”男らしい”と言われていた。
シェリーは”女の子っぽい”と周りから言われていた。
俺が今回の出来事から感じたことは、
男らしさ、女らしさ、とかとりあえず置いといて、その人らしさ、でいいんじゃね?
男らしい、とか、女らしい、というひとつの単語で、1人の人間を表現するの、難しすぎる。
男らしい、女らしい、男っぽい、女っぽい、とか考えずにその人らしさ、で良いじゃん。
ウォーリーはウォーリーらしい恋愛で誰か素敵な人をゲットして欲しいし、マルフォイはウォーリーへ思いを伝えて欲しい。
シェリーにはぜひ素敵な恋愛をして欲しい。
思えばすごいモテ期の時を過ごしたのかもしれない。
これからの人生でモテ期が再び到来することを祈って筆を置くことにする。
読んでくれた方、ありがとうございました。
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