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「テーブル決済」

休日日記.R7.1.25

そうだ。明日ガストに行こう。
金曜の夜からそう決めていた。本来なら今日は出勤日で会社に行かなければならない日だったが、少し仕事が落ち着いていることもあり先輩が「休みにしよう」と言ってくれたのだ。絶対に土曜出勤は免れないと思っていたので言われた瞬間はもう天にも昇るような気持ちで、そのまま先輩に抱きつくところだった。天地がひっくり返ってもそんなことはしないが。

ということで急に休日になったわけだが、一週間の疲れが溜まっているので何か特別なことをしようという気にもなれず、かといってじゃあ部屋に篭ろうというのも勿体無い気がして、とりあえず一人ガストパーティーをしようと決めた。そういえば最近一人ファミレスをしていなかった。友達とポテトを食べながらダラダラ喋って時間を潰すのも楽しいが、一人で周りと時間を気にせずダラダラとチョコレートパフェを食べるのも楽しいものである。

ということで少しウキウキしながらガストにたどり着くと、土曜の昼ということもあって流石に混んでいた。これは長居するのは厳しいか…?と思ったが、案外すぐに一人席に案内されたし、一人席はまだまだ空いていた。僕みたいな休日に一人ファミレスを楽しむ人は少ないのかな?
通路を挟んだ隣の4人席には、とっくにご飯を食べ終えたであろう女の子二人組が黙ってタブレットでお絵描きをしていた。混んでる時に食べる以外の目的で席と時間を占領するのはどうなの…と思ったけど、自分も時間潰しのために来ているのだから似たようなものかもしれない。
そのまた隣の4人席には、3人組の男女のグループが楽しそうにおしゃべりしていた。その横には、子連れの家族。

僕はあまり他人に興味がない。
というか、興味がないですよというムーブをしたい。元来、人って、人の動作や行動、発言などを気にしてしまう生き物だと思っている。自分が何かアクションを起こした時に、他人の目を気にしてしまってうまく事を成せないことが多い。本当は他人の目など気にしなくないのだが、やはり気にしてしまう。そうすると、とたんに「外」が生きづらい世界になってしまう。
僕は、他人にはそういう思いをしてほしくないので、最初から「お前の行動などどうでもいいですよ」というオーラを全開にしてふるまう癖がある。たとえば必要以上に他人を見ないとか、逆に他人を気にせずでかい咳をしてみたりだとか、意味もなく宙を眺めてみたりだとか、すごい小声で独り言を言ってみたりだとか、とにかく自分の世界に入る。そうすると、人はそんな自分勝手な人間にはあまり気を使わなくなるので、そいつを気にする事なく自然体になれるというわけだ。無駄な気を使わせない。

と、ここまではただの自論だ。ただの僕のやり方の紹介である。だから何?である。
山盛りポテトとチョコレートパフェとドリンクバーを頼んだ。ご飯は家でしっかり済ませてきたので、これはおやつだ。
ガストといえば、食事をあの機械のニャンコが運んでくれる店がほとんどだと思うが、この店もそのニャンコが2台稼働し店の中を縦横無尽に動き回りあくせくと働いていたので、僕のところにも来てくれるかなあとワクワクしながら待っていたのだが、運んできてくれたのは優しそうな生身の人間だった。それはそれで嬉しいんだけどさ。あのニャンコに「お待たせしましたニャン!」って言われたかった。

ガストに来たもう一つの理由は、最近挑戦している、短編小説のネタが書きたかったからだ。いや早く漫画描けよ、ともう一人の僕がツッコミをいれてくるのだけれど、僕はこの、小説を書きたいという欲を大切にしたいのだ。漫画ももちろん描いてますよ、今7ページ目です。
2週間くらい前に、衝動のままに描き始めた小説があるのだが、あまりに文体が幼稚すぎるのと構成の悪さに頭を抱え、続きが書けなくなってしまった。このまま中途半端にするのも良くないし、せっかく湧いて出た自分の中の欲を無下にしたくない気持ちがあるので、このようにまず文章を書くのに慣れようと日記を書き始めた。
それから、いきなり小説を書き始めるのをやめて、ちゃんと最初にストーリーの「起承転結」を考えることにした。専用のノートを買い、そこに思いついたネタをガリガリとなんでもいいから書き残しておく。読み返した時に、その時使えるネタが書いてあるかもしれない。
今日はそのネタを考えるべく、ノートを持ってガストに来たのだ。結果的にガストには3時間いて、ノートは1ページ目にびっしりと文字を書くことができた。この中に一言でも今後使える言葉があったらいいのだが。
…まあ、2時間経ったあたりからイヤホン取り出して音楽聴いてたんだけどね。

そんなこんなでもう4時半くらいになるし、そろそろ帰ろうと思ったところで気づいた。
…テーブル決済?今、そんなことができるのか。席を立たずに今ここで会計を済ませ、帰りはそのまま店を出ていいという超便利な機能。こんなのいつからできるようになってたんですか?まさかもう何年も前から?意外とこういうデジタルな部分は苦手なので、そういう情報には疎い方だった。
しかもすかいらーくアプリで会計をするとdポイントも貯まるという…。多分、詳しい人からすると「そんなん当たり前やろ原始人か」と言われてしまいそうだが、僕はその場ですかいらーくアプリをダウンロードして、手早く会計を済ませた。
なんとも便利な世の中になったなあと思いながら颯爽と店を出ていく。ああ、有意義な時間を過ごせた気がする。食事はネコが運んでくれるし会計も人を介さずに済ませられるし、一人ファミレスも悪くない。むしろこれから何回でもしたいなあ。と思いながら歩いている途中、はたと気づく。

…こうして世の中は人との繋がりをなくしていくんだろうなあ。
外で食事をしたら、店の人に「ごちそうさまでした」と言いたい。そんな機会も、これからどんどん減るんだろうなあ。
僕の今年の目標のひとつに、「人との繋がりを多く持つ」というのがあるのだが、世の中が人との繋がりを減らす仕組みを作っているのだから、なかなか難しい目標になってくるかもしれない。
そう思うと、寂しい気もする。便利になる反面、孤独感は強まっていく。こんな機械化されていく世の中で、いかに人との繋がりを保てるか。どのような方法で、どんなモチベーションを持って。

息が白くなる寒空の下、そんなことをゆらゆらと考えながら家に帰った。


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