遣らずの雨
登場人物
りさ♀:
優♂:
♣♣♣
りさ:「私の何がいけなかった…?優くんに見合う努力、できてなかったかな…っ」
優:「…違うよ。そんなに泣かないで、りさ」
りさ:「泣くよ…。どうして楽しく遊んできて、こんなに夕日が綺麗に見える海辺のバス停で…別れ話、聞かなきゃいけないの」
優:「ずっと言わなくちゃいけないって思ってたんだ。今日はとびきり楽しかったから。それに、夕日がこんなに綺麗だから、今なら言えると思った」
りさ:「いつも勝手だな…。もう、いい…。理由は聞かないし、別れるのも、いい…きっとちゃんと理由があるの、わかってるもの」
優:「ありがとう…。確かに、いつもすごく勝手だよね、僕。ごめん…」
りさ:「いいよ、優くんが決めたらもう変わらないの、よく知ってる。…ねえ、バスが来るまでせめて楽しい話しようよ」
優:「賛成。あー…りさと出会った時も、綺麗な夕暮れ時だったね。君はサンダルが壊れちゃって困ってたんだっけ」
りさ:「そうそう、その上靴擦れも痛くて。おんぶしておうちまで連れて帰ってくれた時、私、優くんを王子様かと思った」
優:「りさはね、笑顔が可愛くて、ありがとうございますって笑った時の顔にすごくどきどきしたんだよね。その時の笑顔が忘れられなくて、僕から告白したんだ」
(2人の笑い声)
優:「それで…ああ、楽しい話をしているとすぐに時間って経っちゃうね。もうすぐバスが…」
優:「雨だ…困ったな…。傘は用意してないね」
りさ:「あは、優くん。遣らずの雨って、知ってる?別れ際に相手に留まって欲しくて降る雨なの。…私の気持ちが、神様に届いちゃったかな、」
優:「…りさ、今までありがとう。君と出会えて、僕の世界はいつも色づいて見えてた」
りさ:「世界はね、いつも綺麗なの。これからも、私がいなくても。優くんの世界がいつも色付いていますように。私こそ、ありがとう。また…って、バス、まだ来ないね」
優:(結局、バスは20分ほど遅れてつき、僕とりさはお別れをした。遣らずの雨を降らせたのは僕の方かもしれない。僕の世界は色付いたまま終わっていく。彼女の世界がどうか、ずっと晴れやかでありますように)
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