今年役に立ったソフトスキルたち (2024)
仕事でも私生活でも、いわゆる専門知識みたいなハードスキルはさることながら、コミュニケーション能力なども含めたソフトスキルのようなものが役に立つことが多い。この2つは別々のものではなく、ソフトスキルがハードスキルを育てたり、あるいはその逆があったりもする。
今年は特にソフトスキルに助けられた。良い仕事をするには良い人間関係が必要不可欠で、それを構築するには優れたソフトスキルが重要だ。周囲にも恵まれた。「こういう人間になりたいな」と思えるようなモデルケースがたくさんいたので、その人たちの振る舞いを言語化する中で学んだこともたくさんある。
というわけで、今年特に役に立ったスキルをいくつか紹介する。
ハンロンの剃刀
ハンロンの剃刀は、別の記事でも書いたが 愚かさによって十分に説明できるものを悪意のせいにしてはならない というものだ。非常に汎用的なテクニックで、だいたいどんなときにでも使える。
使い所としては、「なんかネガティブな方向にバイアスが掛かってる気がするな」と思った時にこの言葉を思い出すようにしている。
例えば、急ぎの仕事と言われたからすぐに終わらせて返事したのに、全然確認の返答が帰ってこない。「なんだ、人に急かすだけ急かして、自分は放って置くんじゃないか!こいつは自分勝手に人の時間を奪う、なるはや人間だ」──いや、そうじゃない。ただ忙しくて返事を見落としただけ かもしれない。
人を嫌うのにもエネルギーがいる。誰かに悪い印象を持った瞬間に「いや、人間は愚かだから、こういうこともあるよな」と受け入れてしまったほうが、余計なことにエネルギーを使わずに済む。
単純接触効果
単純接触効果、これもすごく良く知られたものだが、結構良く使っている。ハンロンの剃刀でもそうだが、なんかとっつきにくいタイプの人だな、話しかけづらいな、と思ったときには必ず「シンプルにまだ打ち解けてないだけかもしれない」と思い直すようにしている。
余談だが、コロナでリモートワークブームになって雑談が少なくなり、チームの結束や目標へのコミットメントが薄れたという話があった。これはひとえに単純接触の少なさだと思う。仕事で絡む人以外と絡まなくなったり、仕事以外で人と絡まなくなってしまうのだ。
仕事でちょっと衝突があったとする。お互い大人だから大きな問題にはしないが、その後もなんとなくしこりが残っている。この状態が長く続くと、お互いの中で敵意をどんどん強めてしまう。オフィスやSlackでのちょっとした雑談 = 単純接触が、そうした衝突を癒やしてくれるかもしれない。
ネガティブ・ケイパビリティ
ネガティブ・ケイパビリティというのは最近出てきた言葉なので耳慣れないかもしれないが、「知らないことにあれこれ考えてもしょうがない」という考
え方だ。「消極的受容力」などと言われることもある。
例えば、上層部の考えていることが分からない、明日のプレゼンが上手く行くか心配、将来が漠然と不安、みたいな問題は基本的に 解決できない問題 だ。もちろん、考えていることが分からないなら話してみればいいし、プレゼンは練習するしかないのだが、根本的に未来のことや他人のことは分からず、解決できず、常に不安であると思っておいたほうが良い。
解決できない問題を解決できないまま受容するというのはとても重要な能力だ。常に「あっけらかんとしている」ような感じと言えば良いだろうか。何があっても何とかなると思っておいたほうが良いし、いざ何かあったときにも意外と慌てず対応できる。
不安から準備に準備を重ねる、というようなことが大事な局面もある。例えば、大きなイベントの準備なんかの時にはちゃんとチェックリストを作って対応していったほうがいい。一方で、「何が起きても何とかできる」という心構えを持っておくことも大事だ。前者は具体的に、後者は漠然としておいたほうがいい。不測の事態というのは絶対に起きるし、予測不可能な角度で起こるので、予測不可能なことが起こることについてどっしり構えておいたほうが、自分はもとより周囲も安心して動けるようになる
ラブ&ピース
最後に急角度のボールになってしまったが、ラブ&ピースだ。なんでレゲエやねん、と思う方もおられるかもしれないが聞いて欲しい。単純接触効果、ネガティブ・ケイパビリティ、ハンロンの剃刀あたりは、全部最終的にラブ&ピースになるのだ。この言葉はおれのコアだと言っても良い。
世の中にはたくさんの人間がいる。その中には、おれのことを知らない、知っているが良く思っていない、うさんくさいと思っている、その他色んな人がいるかもしれない。おれは、そういう人たちとも上手くやっていきたい。なぜかというと、上手くやっていけないという状態はおれにとって非常にストレスだからだ。言い換えると、敵を作りたくない。
なので、おれは 絶対に全員と仲良くなる と心に決めている。「お前の本、デタラメばっかり書いてるな!」「社会人のくせにお団子頭で、うさんくさい見た目だな!」──大丈夫、おれはおまえらのことも大好きだよ!
当たり前の話だが、人は自分のことが好きな人が好きだし、自分のことが嫌いな人は嫌いだ。だから、おれはこの点においては絶対に先手を打つようにしている。 絶対に全員のことが好きであるし、絶対に全員の良いところを見つける。そうすることで、味方が増えて、敵が少なくなり、ストレスを貯めにくい暮らしになるはずだ。