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国立科学博物館のクラファンは学芸員の頭痛の種になるかも?という話。
初めまして。研究者でシナリオ作家Vtuberの灰蒼綴(はいあおつづり)と申します。note投稿は本アカウントでは初となります。よろしくお願いいたします。
https://twitter.com/Tsuduri_vt (こちらではまじめな話は0です)
普段は結構ふざけたりもしているタイプのVtuberなのですが、今日はちょっと真面目な話。4000字くらいありますが、良ければぜひ。
はじめに.
国立科学博物館でクラウドファンディングが行われていることを、皆さんは知っていますか?
どうやら開始早々に2億円を突破し、嬉しい話ではある……ように思えるのですが、この話、おそらくかなり多くの学芸員さんやその周辺の人々にとって、非常に頭が痛い話なように思うのです。
個人的には、「本当にやめてくれよ……(絶望)」くらい。
なぜ頭が痛いのか。X(故・Twitter)などでも少しずつ言及されてきていますが、できれば多くの人の目に留まってほしく、私もここで書かせて頂こうと思います。燃えないように頑張ります!
1. そもそもなぜ、国立科学博物館がクラウドファンディングをしているのか
国立科学博物館は、国が建てた博物館です。つまり、普通に文字通りとらえるなら、国のお金で運営されているはず。そう思うのではないでしょうか。なのに、クラウドファンディングというのは、お金を得るための行為です。
「国がお金を出していないの……?」
そう思った方、ちょっと正解です。正確にはお金は出しているんですが、独立行政法人として、国からお金をもらって、法人団体として国立科学博物館は動いています。そのため、国立科学博物館の運営団体は、「独立行政法人国立科学博物館」といったりします。
独立行政法人となった経緯はいろいろあるのですが、現状のこの制度の大きなデメリットとして、「館がちゃんと儲けを出さないと、運営が厳しくなる時がある」ことが挙げられます。
ギリギリの運営体制だったところに、襲い来たコロナ禍。入館料収入は2019年度は約7.5億円のところ、2020年度には約1.5億円まで落ち込み、大きな影響を受けました。さらに、ここ最近の光熱費や物資の高騰が状況に追い打ちをかけています。(中略)複数の打撃が重なり、自助努力や国からの補助だけでは到底追い付かず、その皺寄せは当然かはく内の事業費・研究費削減等にも及んでいます。
と、クラウドファンディングのサイトにも書いてあるように、「自助努力」をしっかりしないと、国立科学博物館レベルであってもお金が無くなることがあるわけです。そうして、様々な困難が重なった中でのクラウドファンディングなわけですね。
これだけ聞くと、「お金がないから仕方がないもんな~」と思うかもなのですが……とりあえず、次行きますね。
2. 二億円のクラウドファンディングでも、満額はいるわけではない
クラウドファンディングには、結構お金がかかります。お金をもらうもののはずなのに、実は手数料や人件費などなど。それと時間も。まず、readyforさんの手数料が12%ほど(参考:手数料のページ)。それと返礼品送料、返礼品費、人件費がかかって、手元に戻ってくるわけです。
何パーセント入るよ!というのは私には強く言えないのですが、意外と送料とそこに対する事務作業の人件費がかかってきます。今回の場合は返礼品に常設展入場券なども入っているので、入館料収入も多少減ります。
額が額なので、国立科学博物館でやれば、それでも億のお金は動くでしょう。それだけあれば、しばらくの間、減ってしまった入館料の補填くらいはできるかもしれません。国立科学博物館が今回のクラウドファンディングでの大きな目標は、
かはくを応援してくださる「仲間を増やす」こと
ですし、そこも問題がないように見えます。お金が入って科学博物館はハッピー、応援している方もハッピー。まさにWin-Winなんですが……歯切れが悪い理由を、ようやく次でお話しします。
3. 今回のかはくは 成功したけれど……?
今回は、国立科学博物館の初回のお願いだったこともあり、これだけの額が集まりました。ただ、考えてみると、「次回のクラウドファンディングでも、また同じ規模の額が集まるのか」、「集まらなかったときにどうなるのか」、そして何より、「この資金調達の方法が市民権を得ると何が起きるのか」が、すごく怖いのです。
上の二つから話せば、国立科学博物館は、うまくいかなかった場合、
プロジェクトに必要な金額と目標金額の差額について
自己資金等で補填します
と書いてある通り、現状では、一応なんとかなるようです。
でも、それはあくまでギリギリであって、来年も再来年もどうにかなるということではありません。そうでなければ、クラウドファンディングをする必要もそこまでないわけです。国立科学博物館は、「可能な限りクラウドファンディングを使いつつ、寄付などでの資金収入も見込む」形態をとりつつあるというのは、言っていいのではないかな、と思います。
こうして、運営維持費の調達を目的としたクラウドファンディングを行ったとして、大きな話題を呼んだ国立科学博物館。その挑戦が成功であるか失敗であるかは、現時点では言えません。
ただ、この成功に対して、困る人もいると、個人的には思います。それは、国立を含めた、「独立行政法人」が管理する博物館・美術館や、その他の市立・町立といった、公的な小さな博物館・美術館に働く人達です。
こうしたクラウドファンディングは、当たり前ながら、「一番目が一番大きな話題を呼ぶ」ことが多いわけです。つまり、ほかの館にとっては、これを上回る成果を出すことは非常に難しいのにも関わらず、
「国立科学博物館がクラファン成功したでしょ?うちでもやらないの?」
と言われてやって失敗し、少ない予算を更に減らしてしまう館が出てくるかもしれませんし、場合によっては、「クラウドファンディングで人気がないんだから、そもそも必要とされてないんじゃない?」なんて言われる可能性もあるかもしれません。そんなことはないだろいいかげんにしろ
そもそも、上記のようなことがなくても、そもそも地方の美術館・博物館は財政苦だけではなく慢性的な人手不足に見舞われているため、クラウドファンディングをしないといけないだけでも、担当者としては頭が痛い話なわけです。
クラウドファンディングには、様々な工程があります。企画を立案し、文章を考え、返礼品を検討し、デザイナーを選び、実際に発注などをして試作を重ね、そして制作したものを逐一報告し、発送のための処理を行う……こうした一連の流れを当たり前のように日常の職務に加えて要求されてしまうと、人手不足はますます加速するんじゃないでしょうか。そこが最初に話していた、「多くの学芸員さんや周辺の人々にとって、非常に頭の痛い」話なわけです。明日は我が身。
おわりに.
じゃあどうしろっていうんだって…??
そんなの決まってるだろ!!!!
とりあえず、いっぱい公的な文化施設行こうぜ!!!!!!!
くらいです、たぶん。後は周りに布教できるともっとよしですね。まじめな解決策を考えるとなると、残念ながら、そこは私レベルでは本当にわからなくて。国や自治体にもっとお金を出してもらえば解決!ではあるのですが、そもそも、その財源をどこで用意して、どのように活用して……といった話まで詳しいわけではないですし。まぁもちろん、お金は出してくれるだけ出してほしいな、とは思いますが、残念ながら資本主義と文化って相性悪くって……()
ただ、学芸員資格を取って、一度は学芸員になりたいと思い、とある美術館で年度インターンをしたり……といったことをしてきた一人のVtuberとしては、なんというか、嬉しい気持ち半分、いや3割、なんだか悩ましい気持ち7割で、かはくの一連のクラウドファンディングを見て思うのでした。
最後に。ここまで言っておいてなんですが、「クラウドファンディングをすることが悪ではない」です!みなさんとの縁をつくることを国立科学博物館は求めているわけですし、支援をする気持ちがあることも、とっても良いことだと思うのです。それに、お金があるから救われる命……もとい収蔵品は絶対あるので、あなたのお金はきっと大事に使われるはずです。10連ガチャの1億倍くらい。
これをきっかけに興味を持った人は、ぜひ賛助会員にもなっていただけると嬉しいです(ダイレクトマーケティング)。こっちだと手数料なしで国立科学博物館が潤うよ。わーい!!!
ちなみに、今やってる特別展のHPもすごく凝っていてすごい(語彙力)ので、展示も見に行きたくなることうけあいです。
おわり。長文を読んでくださり、ありがとうございました。
Twitterでは全然こんな話してないのでそわそわしますが、
もし誰かのお役に立てたらウレシイデス。