印刷営業心得
営業マンの最後に責任を持たなければならない工程があります。加工から無事にお客様に納めるまでです。時には立会いまでやって頂いた印刷、良く云われることですが色見本通り・奥行きや深みがある・調子が出ている・濃淡が出ている・シャープさがある、逆に柔らかさがある・中間部分が出ている・ライト側が飛んでいない・シャドウ部がつぶれていない・ゴミや汚れやピンホールがない・文字欠けがない。見開きの調子が揃っている・平アミが揃ってきれいに刷れている等、嫌になるほどチェックしながら刷了した印刷物が一瞬にしてヤレになることがあります。先に、加工や梱包・運送をされている会社やそこで機械を回されている方々、発送・配送に従事されている方々には感謝とお礼を申し上げておきます。決してクレームをつけているのではないことをご理解ください。お客様にご満足頂ける製品を納品してはじめて印刷会社としての責任を果たし、かかった諸経費を請求し回収するのが印刷会社の営業マンの仕事だと思っています。そのためにも企画から納品までひとりで出来ることのないのが印刷だと思います。どんな職業もすべてひとりで出来るものはありません。印刷だけがと云うつもりもありません。
話がそれるかもしれませんが、この業界に入ったとき、印刷とは転写・複写の連続、積み重ねで出来上がる商品だと教えられました。人物や商品の撮影はレンズを通してフィルムに移し(映す・写すではなく、あえて移すを使います)、現像してポジやネガで画像を見ます。活字の時代や写植に時代には文字を拾ったり打ったりして紙に移しました。撮影したフィルムはダイレクト分解やスキャナ分解し、文字や図版を張り込んだ版下を使って1枚の印刷用ポジフィルムにしました。ここでも転写や複写が繰り返されています。製版工程のところでも書きましたが密着でのネガ・ポジ返しがえしも連続複写の典型ではないかと思います。さらにポジフィルムをアルミ版・PS版・ジンク版(昔はこのように云っていました)に焼き付けます、まさに転写です。そして焼きあがった版を印刷機に巻き付け、水と油の原理を応用したオフセット印刷でインキを紙やその他インキが載るメディアに転写していきます。このように教えられたことを思い出します。間違っているよとか、異論がある方はぜひお教えください。これだけの複雑で回数の多い転写・複写を繰り返すわけですから、それぞれの転写・複写工程で技術的な課題や問題、それ以上に設備面での問題もあります。最新の設備投資が出来る企業に対抗するためには、我々は蓄積した技術ノウハウを武器に戦ったものです。今やこの業界もハード面では横並びと云われていますが、こうなると追われる側も離しにかかるのが世の常、スマートファクトリーでさらに差別化を実現している印刷会社が多く生まれて来ています。
また横道にそれましたが、話を戻します。これだけ次工程への転写。複写がありますと残念ながらヒューマンエラーと云われるミスが起こります。技術的な問題も含めヒューマンエラーにはオペレーターのみならず営業が起こすエラーが質・量とも多くあります。納期が迫っている段階でのミスを挽回するのは大変です。再仕入れから始まり、原稿類の差し替え、そして版修正、お客様へ再校正のお願いと校了印の取得、そのように初刷りと同じ作業を繰り返します。同じものを二度も刷ることになります。お客様に大きな迷惑をおかけします。会社にとってはコストも時間も倍かかる勘定になります。会社も大損害です。見過ごしたり、聞き違えたり、書き間違えたり、指示間違いを起こしたりとおおよそこの4つが営業の起こすヒューマンエラーと云われています。こんな単純で簡単なこと、わかっていながらやってしまうのが人間と云ってしまえば話は終わってしまいます。営業の起こすうっかりミスと云われる凡ミスは今まで書いてきた印刷までの工程はしかり、特に加工工程での指示ミスをなくすには一定の知識が必用だと思っています。印刷までの技術知識は必要ですが、実際の作業は営業が手出しすることの出来ない工程だと思います。しかしポストプレスからの工程では技術・作業での一般的な知識はぜひ知っておくべきだと思います。付け加えますと、現在の印刷工程である意味、利益を稼げるプロフィット部門が加工・セット梱包・発送・納品ではないかと思っています。利益確保のためにも絶対うっかりミスは許されないのがスマイルカーブの出口である加工以降の部門だと思います。
又、見積設計や工程設計において加工での一定の専門知識がないと印刷会社の営業とは云えないし、ここでお客様から信頼され競合他社との差もつけられます。加工見本の添付忘れや梱包・発送工程でも多くの種類のミスがあります。アソートやアッセンブリでのミス、包装時のミス、数え間違いや数量ミス、段ボールケース詰での間違い梱包、送り状書き間違い、伝票と梱包品の詰め間違い、指定納品日や納品指定箇所への誤発送や誤納品等が現場サイドのミスで起こるクレームです。誰もがミスを起こそうとして仕事している訳ではありません。時間に追われたり、ボリュームが多く種類が多かったりとか、判別・区別がつき難いアイテムが多かったりしてミスが起きることがあります。そこへ営業の指示が間違っていたり言葉足らずであったりすれば、確認のため時間がかかったりして人手が必要となります。それでもクレームは発生します。せっかく念には念を入れて仕上げた印刷物が、言葉が適切でないかもしれませんがムダになりかねません。
ニワトリタマゴ論になるかもしれませんが、私はまずはしっかり営業が指示をだし、揃えるものは揃えてポストプレス部門に引き継ぐべきだと思っています。私が起こしたもので、ミスとは云えないかもしれませんが、記憶に残っているのがあります。発送伝票のチェックミスです。急ぎの案件であったことから、時間が足りず伝票チェックを怠った結果、配達ミスが起こり納期に間に合わなかったことがありました。お客様からは、「今日中に必ず納品せよ」との厳しい声の電話がありました。ミスは何と東京港区浜松町への納品が静岡県浜松市へ誤配されていたのです。送り状をよくよく見ると東京都が書いてなく、市と町が小さい字で書かれており詠みづらかったことから起きた誤配でした。急ぎだったから、しかも京都からの出荷でしたので京都の担当者は浜松と云えばうなぎの浜松だと思い込んでいたようで、東京都を書かなかったことが大きな原因でした。当然、運送会社の責任ですが、納期に間に合わすために当日の送り返し納品を依頼したのですが時すでに遅そしで便なしの返事でした。そうなれば担当の営業の出番です。浜松荷物集積所まで引き取りに行き、秀吉じゃないですが大返しで納品に間に合わせました。恥ずかしい話ですし、自慢出来るはなしでもありません。もちろん運送会社には責任は取らせました。
このような初歩的なことをNOTEに4度まで書かせてもらっています。これは当社の若手社員や転職組の社員に向けてでもあります。デジタル時代の現在でも十分に参考になると思っています。土山印刷でもヒューマンエラーでお客様にご迷惑をおかけしていることがあります。110年近く、ものづくりに絶対的に自信を持ち営業をやって来た会社です。お客様からも高い信頼を与えて頂いています。独自の品質基準書を持ち、社内ルールの基本としています。土山社長の強いリーダーシップと基準書でクレームを出さないこと、想定出きるクレームを未然に防ごうと危険予知活動にも取り組んでいます。それでもケアレスミスが起きることがあります。そこでもう一つ必要なのが経験ではないかと社長が判断されているのではないかと私は思っています。クレームゼロの第一歩になればと思い、このような話からスタートしました。業界の先輩諸氏や学識経験者の方、業界や企業を引っ張られている方々からすれば「何と古い話、今はもう通用しないよ。」「分かりきったことを」「デジタル時代にそぐわないよ」「これは間違っているよ」などのお言葉を頂戴すると思っています。ぜひ、お叱りや苦言をお願い申し上げます。
これからも苦い経験したこと、営業やっていて得したこと損をしたこと、お客様に喜ばれたこと、怒声を浴びたこと、少ないですが褒められたことなどを書いていきたいと思っています。もういいから止めておけと云われるまで書こうと思います。次回もご期待?をお願いします。
このような私をこの歳まで雇われている土山社長に大変感謝しています。社長は「違うだろう、何も分かってないよ、頭に来るよ」と思われているかもしれませんが、私のKNOW HOWとKNOW WHOをもって会社に貢献していきたいと思います。今でも少しは役に立っているのではと自負しています。
このように妙な自信で自身を見つめる私、それが出来るのも私が営業出身だからだと思えます。社長、ありがとうございます。新しい時代に向けて新しいビジネスモデルに対応出来るよう、今なお、努力しています。最後は多少××すりになりました。読者の皆様、申し訳ございません。
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