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若者に期待しすぎてはいけない。


 若者には期待がかかるものだ。鹿児島県下でも若い首長が多く誕生している。ウクライナ避難民の受け入れを真っ先に表明した日置市も若い市長であり、その決断の速さには多くの人が賛同と栄誉を送っている。

 筆者はウクライナからの避難民を受け入れることに反対はしない。しかし、この国はもともと難民に恐ろしく厳しい。難民の受け入れが条約上義務づけられているものの、2020年の日本の「難民庇護申請認定率」は0.7%だ。これはカナダの75%、ドイツの52%などと比較してもあまりにも低い。さらには入管のウィシュマさんや、茨城県牛久での事件、技能実習生の問題などもある。
 もちろん一人の若い市長にあまりに多くのことを期待するのも酷であり、難民の問題は国が進める政策なので色々と限界もあるのだろう。このような状況でも日置市長は多くの期待に応えているように思う。(市長からは南日本新聞コラム掲載時に丁寧なメールをいただいた。)

 政治だけではない。少し前の南日本新聞の記事だが、鹿児島市内の飲食店がウクライナ支援という名目でキャンペーンを行っていた。ウクライナに関連した新しいメニューをつくり、その売上の一部を物資に変えて、鹿児島にやってくるウクライナの難民に寄付するというものだ。同じ飲食店をやっている人間として、いささか厳しいことを言わせてもらえば、戦争に便乗しているように見えるので、どうしてもやりたいなら自分の商売でしっかり利益を出し、その一部を現金としてどこかに寄付したほうがいいと思う。

 若者は元気がよく、勢いがある。それがいい方向に進めばいいが、そう簡単にいかないのが社会だ。
 ここ鹿屋にカンパチロウというマスコットがいるのをご存知だろうか。カンパチロウは多くの動画をYouTubeにあげており、その中に「カンパチロウ物語」というショートムービーがある。それはカンパチロウの過去、現在、未来を描く物語で、過去は何らかの事故で人造人間になってしまい、現在は鹿屋市の商店街を盛り上げる町の人気者というような内容だ。
 問題は未来の部分だ。未来では戦争を描き、銃と死体まで描写している。もちろん、鹿屋市は百田尚樹の永遠のゼロの舞台でもあり、さまざまな考えがあってもいいと思う。ただ、鹿屋市は商品としてのカンパチを世界に売りたいと宣伝している。それなら大きな市場は中国だろう。かつて漫画少年ジャンプの作品で「丸太」というキャラ名だけで「731部隊」を想起させ、すぐさま取り下げ、謝罪した事件があった。人気漫画はグローバルな商品であり、細心の注意をはらっての対処だろう。ほかにも日本の神社で写真をとったというだけで、中国の芸能人が仕事がなくなったりしているのが中国という国だ。
 鹿屋市だけの問題ではない。日本全体のカンパチの養殖に必要な稚魚の8割以上を中国から輸入している現状で、誤解を招くような動画でなにかあったらどうするのだろうか。筆者はカンパチロウ物語の関係者数人にこの話をしたが、彼らは全く気にしていなかった。やはり「わきまえない」のが若者なのかもしれない。

 多くの年長者には共感してもらえると思うが、若いころの考えは思慮にかけていたなと思うことが多々あるものだ。もちろん、それでも突き進むことができるのも若者だろう。鹿児島にはSDGsとリーダシップを掲げた若者たちがいるが、彼らから環境に負荷が高いと言われている牛やウナギについてなにかの問題提起を聞いたことはない。それらは鹿児島の名産品であり、大きな産業なので、関係者も多く大きな声では言えないのだろう。

 ロシア軍の侵攻から牛やウナギまで、考えれば考えるほど分からなくなり、動けなくなるものが社会だと思うが、いかがだろうか。


(※この記事は南日本新聞社に書いたコラムを修正したものです。)

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