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「いいことをすると気持ちがいいの」のはなぜか。 『新しい道徳』
道徳ってなんだろうか。
あなたならどうするだろう。
混みあった電車内、あなたは座席が空くのを狙っていた
連日山積みであった仕事をやっと終えて、疲労困憊である。
とにかく座りたい。眠りたい。
途中駅に停車した際、あなたの立つ目の前の席が、空いた。
「やっと空いた!」
あなたは座り、ほっと一息ついて
顔をあげると、少し疲れた様子の老人が立っていた。
さて、あなたは席を譲るだろうか。
先日、北野たけしの『新しい道徳』を読んだ。
「日本人にとっての道徳とは何か?」
というテーマで作られた本だ。
学校教育での道徳では、
「老人には席を譲りましょう。いいことをすると気持ちがいいから、譲りましょう。」
「嘘をついてはいけません。正直に生きましょう。」
そんなことが書かれているし、これを読んでいる人の中にも
なんとなくそんな事を道徳で習った、もしくは、聞いたことがあるのでは無いだろうか。
それをふまえて、
冒頭の状況を改めて考えてみよう。
あなたは、その道徳に従うのであれば
席を譲るだろうか。
それとも、「疲れているから譲りたくない」という自分の気持ちに嘘を付かず、正直になり、席を譲らずに座り続けるだろうか。
そもそも、なぜ席を譲らなければいけないのか。
「道徳」を小学校で学ぶときに
「お年寄りは大切にしなさい」と、教えられる。
ただ、これでは子どもは納得しないという。
お年寄りは、昔からずっとお年寄りであった訳ではない。
若い頃があり、ずっと働いてきて、税金も納めてきた。
こうして、電車に乗れるのだって、スマホでゲームができるのだって
彼らがしっかり働いてきた結果でもあるのだ。
そういう基本的な事を、今の大人も忘れている。
だから、「お年寄りを大切にする理由」もうまく説明できない。
というのだ。
*
「あいさつ」にしても同じだ。
「あいさつをすると、気持ちがいいから、元気にあいさつしましょう。」
そう言われている。
なぜ挨拶をしなければならないのだろう。
例えば、あなたがエレベーターに乗ろうとして、
先に、全然知らない男性が乗っていたとする。
下を向いて、あなたと目も合わせようとしない。
少し、怖くないだろうか。
しかし、この男性から、仮に一言
「こんにちは。」や「おはようございます。」
のあいさつを一つされたとする。
そうなると、さっきまでの「怖い」という感情は
解消されると思うし、男性側も「怖い」と思われていた誤解を解消できる。
欧米では、頻繁に「ハイ!」なんていうあいさつが交わされている。
挨拶をするということについて筆者は、
「私は危険人物ではないですよ。泥棒でもひったくりでもありません。」
といったことを表現することにもつながっているのでは、と語っている。
皆さんは、お年寄りを大切にすることや、あいさつについて
子どもに、どう説明してどう納得させるだろうか。
この本では、北野武氏が独自の目線で、
そういった事象に対して俯瞰的に見た意見がいくつも書かれている。
土曜日の家の中で、ゆっくり読むにはとても良い本だと思います。
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