見出し画像

善行をするためには・・・

ふと、ボーイスカウトの書籍「パトロール・システム および 班長への手紙」を開いて読んでみました。その中の「班長への手紙 その1」はスカウトのおきてについての考え方を班長であるジム君に語りかけるように書かれたものです。

当時のイギリスのスカウトの10のおきてに沿って説明がされていますが、現代の日本のボーイスカウトのおきてにも通ずるものがあります。今回、取り上げて読んでみた箇所に気付きがあったので、忘れないように書いておきます。

スカウトのおきて - 3. 「スカウトのつとめとは役立つことであり、他の人々を助けることである。(A Scout's duty is to be useful and to help others.)」

「積極的な社会人」を育てることを目的とするスカウト教育の中で、善行の大切さを教えることは一つのキモであると思います。
スカウトが「そなえよつねに(Be Prepared)」をモットーに、救急法やロープ結び、他にも色々な技能を訓練するのは、いざというときに他者の役に立つためなのです。

「班長の手紙」の中では、このような記述があります:

スカウトの善行というものは、何かの場合するような善行ではなくて、他の人々を援けるため、 独自の方法を遂行することを意味します。
ある隊では、バスや電車の中で、座席をゆずるような善行は善行として勘定しません。「何故かというに、その子供が紳士であれば、それがスカウトであろうとなかろうと、その位のことならするでしょう。」と、次長の1人が、ついこのあいだ、私に話していました。

誰でもできるような善い行いは「スカウトの善行」ではない、という指摘です。
この記述の前には技能章(救急や木工、音楽といった、分野ごとに決められた課題をクリアすることで授与されるバッジ。要は、その分野の技能については他者のために働かせる準備ができていることを示すもの)についての説明が書かれています。
技能章は、人それぞれ取得するものが違いますから、得意なものも人によって異なります。つまり、誰でもできるような善い行いではなしに、自分の技能・知識を活かして、他の誰かにはなかなかできない、他人へのお役立ちをすることこそがスカウトの善行である、というものです。

この章は、このような記述で締められています:

彼等(註:昔の騎士)の善行は、つつましやかに世の中に出て行って、行なわれた善行であって、助けを求めている人々を探し出し、そして機会が到来するならば、喜んで助けたという善行でありました。
スカウトも、これと同じことをします。 善行をする機会を探すため、世界中を歩きまわるのです。
時として、路上のバナナの皮を取り去ったり、 ガラスのカケラを拾うような小さな善行もあるでしょう。時には、燃え上がる家の中から人を救助したり、流れの速い川から幼児を引きあげることもありましょう。
その善行が大きいか、それとも小さいかということは、問題になりません。また、長時間かかったか短時間で出来たかも問題でなく、むつかしかったか、たやすく出来たかも、問うところではないのです。
唯一つ、これだけはいえます。 スカウトというものは、犠牲と、奉仕の精神で働くということ、喜んで世界中に進んでゆくということで、それは、「スカウトのつとめとは人に役立つことであり、他の人々を助けることである。」であるからです。

スカウト運動の創始者である B-P も「スカウティング・フォア・ボーイズ」の中で、「騎士道の班練習」として善行レースと称したゲームを紹介しています。これは、班で町に出かけていって、誰かの役に立つことをして帰ってきて正直に報告をする、といったものです。

これを文字通りとれば・・・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威が猛威をふるい、外出や人との接触を控えるべし、と言われている今の世の中では、善行をするためにあちこち歩き回ることはできないので、スカウトの善行はできないことになってしまいます。が、もちろんそういうことではないでしょう。
ここで「世界中を歩き回れ」と言っているのは、社会をよく観察し、困っている人がいないかを探しなさい、と言っていることなんやと思います。ニュースサイトなどでも取り上げられましたが、カナダの13歳のスカウトが1日中マスクを付けっぱなしで耳の痛みに悩んでいた医療従事者のために3Dプリンタを使い、「耳ガード」を作り、病院に寄付したこと、また、もっと多くの人に役立てたいとの思いで、その3Dプリンタのデータを公開したという立派な善行を行ったスカウトがいます。おそらくですが、彼は3Dプリンタでこういったものを作るのが得意なのでしょう。こういったデータを作るのは皆ができるわけではなく、彼が持っている技能・知識を活かしたからこそできたことでしょう。

Quinn answered a request from the local hospitals for help with creating more “ear guards” to help take the pressure off...

Posted by Heather Roney on Friday, April 3, 2020

日本でも、福祉施設に手作りマスクを寄付する、というスカウトがおりました。彼女らも、自分たちにできる善行は何かを考え、取り組んでいるのです。

これらの例は、実際にこの善行を行ったスカウトたちが今困っている人は誰だろうかということをよく観察し、自分が持つ技能や知識をどうやって他の人にの役に立てるだろうかということをよく考えたからこそできたことなんやと思います。偉そうなことを言っている私でもなかなか思いつかなかったことではないかと思いますし、こういった技能や知識も持ち合わせていません・・・なにより、これらを行動に起こした勇敢さには感服するばかりです。「スカウトの善行」を行うことはそう容易いことではないのですが、だからこそ、日々の訓練を通じて心身ともに鍛えねばならないなと思いなおした次第です。

ではでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?