ファイブ!〜廃部にはさせない!〜⑦
≪チリンッチリーン≫
2018年4月15日。8時15分。
颯爽と風を切り、敷地内の駐輪場に現れたのは、演劇部の小山。
昨日のこともあり、いつもはモノレール通学だが、今日は自転車で登校していた。
「あれ?小山っち珍しいね~。おはよう~。」
「おはよう~谷やん~。」
「今日はどうしたの?」
「ちょっと気晴らし~。」
「なんかあったんだね~。話聞こうか?」
「ううん。大丈夫。」
「そかそか。んじゃ、お先に~」
「うん~また教室で~。さてと…。」
「あ、お、おはよう。小山さん。」
「あれ?田島君!おはよう!田島君ってチャリ通だったんだ!」
「う、うん。」
「それにしても、カッコいいの乗ってるね~!」
「あ、あぁこれ、マウンテンバイク。」
「すごいね!速そう!」
「う、うん。速いよ。小山さんも自転車だったんだね。」
「あぁ~今日は、たまたまなんだ~。気晴らしに乗ってきたの。」
「そ、そうだったんだね。」
「あ、そろそろチャイム鳴っちゃうね!んじゃお先に!」
「あ、う、うん…。」
「会長~おはようございま~す。会長?」
「え?あ、おはよう。」
「どうしたんすか?立ち尽くしちゃって。」
「な、なんでもないよ。あ、あと今日の部活は全員集合でよろしく。」
「おけで~す。てか、全員っていっても三人だけじゃないっすか。草。」
「……。」
「か、会長…?怒ってます?」
「あ、いや?そろそろ行こう。」
「あ、はい…。」
≪キーンコーンカーンコーン≫
「はーい。じゃあ今日はここまで~。号令係~。」
「きりーつ、きをつけー、れー。」
「んじゃ先生は職員会議があるので、掃除当番はサボらないように~」
『はーい。』
「はぁ~~~~~」
「ど、どうしたの木原っち…。机に溶けそうだけど…。」
「ついに放課後になってしまった…。」
「あぁ~演劇部?大変みたいだね。」
「ホント困ったもんだよ~!全然人捕まらないし、使えない奴が部長だし!」
「そうかそうか、心中お察し~。まぁ頑張り~。んじゃ!」
「もう頑張ってるっちゅうーの…。はぁ~。よし!切り替え!!」
≪ガラガラッ≫
「あ、先輩やっと来た~!」
「待たせてごめん。んじゃ、チラシ配りに行こう!」
「はい!」
「…ちなみにアイツは?」
「…まだ来てません…。」
「ふ~ん。わかった。行こうか。」
「はい。」
≪ガラガラッ、ピシャ。≫
二人は残りのチラシを抱え、昇降口に向かった。
これ以上頑張っても意味があるのか。
不安や焦燥、有り余る恐怖感が小さな背中にのしかかっていた。
『演劇部に入りませんか~!演劇部~!役者も裏方も募集してまーす!!』
『演劇部~!演劇部どうですか~!』
「ん?佐伯会長~。」
「なんだー?」
「またやってますよ演劇部~。」
「あぁ聞こえてる。うるさくてしょうがない。今めちゃくちゃいいとこなのに。」
「また漫画ですか?生徒会長なのに~。」
「何を言う、これはもう人生の教科書だぞ。しっかり勉強中だ。」
「左様で…。期限ってあと何日でしたっけ?」
「えっと?今日を入れて三日だな。もうあがいてもどうにもなんないだろ。」
「あはは。そうっすよね。」
≪コンコンっ≫
「ありゃ?お客さん?どうぞー。」
「失礼。」
「おぁ、小坂。どうした?」
「佐伯、話がある。」
「え?あぁいいけど、期限は延ばせないぞ?一応規則だからな。」
「いや、期限はそのままでいい。ただ、確認したいことがある。」
「ほう、まぁ座りなよ。聞くだけ聞こうか。」
「ありがとう。」
単身、生徒会室に乗り込んだ小坂部長。
生徒会長、佐伯を目の前に、小坂は何を思うのか。
演劇部の命運は小坂の手に委ねられた!!
ーつづく!ー