ツッチー式保育/第一の進化の過程:遊び編
猛スピードで変化する時代の中、保育者として50年もの長きに渡り、多くの子供の育ちと向き合い続けてきた筆者が、その深い知識と経験を通じて発見した〝生きる力の強い子に育てる〟為の子育て・保育の知恵を全てお伝えするブログ、現役園長の子育て応援記!
【ツッチー式保育】は0歳から5歳までの進化の獲得期を3期に分けてを考えます。
●第一の進化の過程(生まれてから歩行獲得まで)
抗重力筋を育てる。情緒の安定から安心へ
●第二の進化の過程(歩行から3歳まで)
安心から自信、そこから自由へ。自由な中で自己表現
●第三の進化の過程(3歳から卒園期まで)
自由な中で、仲間と共に力を合わせる。
想像力を土台とし、工夫して創造
第4回は第一の進化の過程での「遊び」を紹介します。
赤ちゃんマッサージは〝手当て〟です
お母さん・保育者・子供に向き合う大人の手は、
魔法使いの手です。
その“手”。
手当てって、痛いところに手を当てるから
手当てというのです。
手を当てられて、嫌だと思う人はいない。
痛くないけれど、
赤ちゃんも手を当てられると安心します。
頭でも顔でも手、足、おなか背中、
どこでもいっぱい優しい手でさすってあげて。
それが、赤ちゃんマッサージです。
何歳になってもコミュニケーションには
欠かせないことのひとつです。
これにより、五感の働きの一つである、
皮膚感覚が目覚めます。
帝王切開で生まれた赤ちゃんは、
産道での強い皮膚刺激を受けないまま産まれています。
このことからか、肌の感覚が弱いことを感じます。
しかし、赤ちゃんの全身を
しっかりマッサージすることで、
人間にしか現れない、顔の表情筋までもが現れます。
背中のマッサージ
1歳児~2歳児の膝を使っての金魚体操
ロールマットでの全身マッサージ
生まれてから歩行獲得までの様々な活動
赤ちゃんは天才です。
この世に生まれて、歩行獲得までの間に、
基本的な力を獲得していきます。
月齢により、様々な活動があります。
①仰向け遊び
② うつ伏せ遊び
③ 回転運動
④ 後ずさりハイハイ
⑤ へそ付きハイハイ(両生類ハイハイ)
⑥ むつんばいハイハイ(爬虫類)
⑦ 高這い
⑧ 友達同士で向き合い
その進化を順にご紹介していきます。
①②仰向け遊び と うつ伏せ遊び
首の座りがまだ不十分だからと怖がらず無理なく
うつ伏せ遊びも取り入れてください。
はじめは短時間での取り組みから。
もちろん側に大人がついていることが条件です。
赤ちゃんは、仰向け遊び、うつ伏せ遊びで、
五感の働きと全身を働かせることを楽しみます。
そして、遊びの中で、集中力が育ってゆきます。
・可愛いのでついつい側で声を掛けたくなりますが、
静かに様子を見守ります。
・始めは、5分から10分くらいで、
赤ちゃんの集中が切れます。
・その時、必ず赤ちゃんの目と大人の目が合います。
ここがポイント。
・「楽しかったね」など赤ちゃんに声をかけます。
・赤ちゃんは、受け入れられた安心感から、
大人との間に信頼関係を育み始めます。
この時期に、体軸の育ち、首の立ち直りが育ち、
それに合わせて、
向き合いで心の育ちの土台が育まれます。
① 仰向け遊び
吊り下げの遊具を見て、
視覚神経の働きを刺激しています。
遊具が自然な状態で、
風などで揺れ動くのが望ましいです。
揺れ動く遊具を見て、
目が左右・上下・円形に動きます(追視遊び)。
その後、手足の動きが始まり、その後、手足の動きが始まり、手が遊具へと伸びていきます(把握反射)。
一連の動作が弱い場合は、
まなかいや全身マッサージを取り入れる事で効果がみられます。
追視遊び
把握反射
吊り下げの遊具を見つめる2ヶ月児
しばらくすると手が伸び触ろうとする。眼と手の協応。
② うつ伏せ遊び
まだ、肩の力・首の力が不十分ですが、
うつ伏せ遊びをしています。
この時、大人が赤ちゃんの
脇の下にバスタオルを巻いたものを入れる
ことで、少しずつ赤ちゃんの力がついてきます。
また、赤ちゃんは近くにある遊具を手にして、
それを口に運ぶことも楽しみます。
自分の手を口にすることも含めて、
すべて口にすることで、物の性質を学びます。
ひだまりで日光浴
まだ首の座りが不安定だがうつ伏せ遊びを楽しみながら
首の力もついてきます
目と手の協応動作の始まり
肩の力を獲得していくと、
うつ伏せ遊びでも目と手の協応動作が始まります。
目と手、それに口で、
そのものの味や性質を感じるなどをしていきます。
五感の働き(味覚神経の働き)の始まりです。
③〜⑥ 〝ハイハイ活動〟を保障しましょう
首の立ち直り・手足の力・背筋力がつくと、
移動の範囲が広がっていきます。
③ 回転運動
↓
④ 後ずさりハイハイ
↓
⑤ へそ付きハイハイ(両生類ハイハイ)
↓
⑥ むつんばいハイハイ(爬虫類)
後追いが始まる時期でもあります。
この時期、室内外・斜面・様々な環境の中で、
全身を使ったハイハイ活動を保障してあげましよう。
神経系の働きが活発になり、
シナプスがはりめぐらされていきます。
ここで大切な大人の役割は、
・不潔、危険などとダメダメではなく、
育ちに必要な環境を保障すること。
・その為に、これらの活動の大切さを知ること。
ですね。
子どもの〝手の働き〟を保障しましょう
はじめに脳の働きでお知らせしたことですが、
手の働きが大脳に占める範囲は実に広いです。
かしこい脳は身体作りからは、ここからも言えます。
歩行獲得までのこの時期、
手は多くのことを体験します。
体験の中で、
・手のひらで物をつかんでいた所から、
指先でのつまみへと進化し、
ピンセットつまみができるようになります。
・離乳食も手ずかみで上手に食べるようになります。
・手の働きにより、脳神経系が働き、
シナプスが伸びていきます。
・水・土・草花・生きものなどを
見る・触れるなど全身で感じる力から、
感性が育ちます。
・歩行獲得までの間に、手の労働が巧みになり、
この働きがその後の体験での意欲につながります。
ですから、大人は、
・“やらせる”のではなく、
赤ちゃんが全身で感じられる環境を保障しましょう。
・赤ちゃんが夢中になっている時は、
余計な働きかけをせず、見守りましょう。
子どもの〝額〟を見てみましょう
脳をしっかり働かせていることの証明は、
子どもの額に現れます。
額が出っぱってくるのです。
それは、前頭葉の働きが活発になっている証です。
⑦ハイハイから高這いへ
沢山ハイハイをすることで、
体幹の育ちや五感の働きを促します。
背中・肩の力・首の立ち上がりが
しっかりしてくることで高這いが始まります。
座ったり、つかまり立ちをしたりを、
繰り返し楽しみます。
まだ歩行獲得していないが、その前の高這いで目的に向かう9ヶ月児
水遊びも大好きであり流れる水、
たまり水など様々な方法で楽しみます
これらのハイハイ活動は、水中から地面にそして草原への進化の過程の繰り返しなのです。
魚類(仰向け)→ 両生類(へそ付きハイハイ)→
爬虫類(むつんばいハイハイ)→人(歩行)
この進化の過程をていねいに体験することで
その後、しっかりした歩行を獲得します。
住宅事情などから、
この過程を体験しないまま、
つかまり立ちをしてしまうことが多くなっている近頃ですが、歩行獲得までのこの時期が、とても大事な
重力との戦いです。
地面に向かって這いずり、手、足指、膝、腰をしっかり使うことで
肩の力背中の力、首の力がつき抗重力筋がつきます。
この力から体幹がしっかりしバランスの良い歩きを獲得していきます。
身体の育ちと同時に遊びから
五感の働きも豊かになり
脳神経系へとつながります。
身体と脳の働きを一体化することで全面発達が始まります。
体験の中で手のひらから手指(陰から陽)へ育ちます。
⑧ そして、友達同士での向き合いへ
体幹の育ちを獲得すること、
向き合い遊びを楽しむことで、
親から友達へと視界も広がり、
友達同士で向き合いが始まります。
相手の動きを見たり、まねたりの行動の中で、
様々な事を学びます。
早く歩くことがよいことだ、などと
焦ることはありません。
歩くまでの大切な時期に、
どのような環境で過ごしたかで、その後の
・体幹の育ち
・巧みな手の働き
・強いては脳の働き
それらすべてが関係することが、
子どもたちの姿から受け取れます。
次回は、ここまでの話しを少し振りながら、第一の進化の過程における子どもの変化Q&Aをお伝えします。
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