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山のこんにちは

その昔
わたしが通っていた中学高校では、
遠足というと
毎年
かなり本気の山登りだった。

標準コースとハードコースに分かれ
集合してから解散まで
みんな
ひたすらに必死で歩く。

これはなかなかにきつかった。
遠足
という言葉から感じられる
のんきな楽しさは
一切ない。

あーやめたー
と言って離脱できないのが
山登り。
足がガクガクしようが
自分の足でおりてこなくちゃいけない。

若い中高生が必死で歩くくらいなんだから、
引率の先生はさぞかし大変だったろう…

今になってみると
もっと先生を労ってあげればよかったと思う。



そんな中高時代を送ったので
わたしは
山歩きには
なじみがある。

疲れるのをよーく知っているので
もう二度と
ハードなところへは行かないようにしよう
とも思っている。



子どもたちが
少し大きくなったころ、
どこか山へ連れていってみたいな…
と思って選んだのは
高尾山だ。

ケーブルカーもある。
リフトもある。
うん、ハードすぎなくて、よし。
おいしいものも展望台もある。
楽しくて、なおよし。

乗り物があるところでは乗り物に頼って
そのあと
わりと平坦な山歩きを楽しんで
余裕があったら頂上を目指す
というコースで行くことにした。


山を登り始める前に
わたしは
靴の紐をしっかり結び直しながら、
子どもたちに
山のこんにちはについて
教えた。

山ではね
すれ違うときに
知らないひととも
こんにちはーーー
って挨拶するんだよ。
きみたちも
やってみて。

子どもたちは
これがとても気に入った。

大喜びで
こんにちはー!
こんにちはー!
こんにちはー!


元気に挨拶をし続けた。


わたしは
この
山のこんにちはが
好きなのだ。

知らないひと同士が
お互いすれ違うだけなのに、
あんなに
こんにちはが行き交うなんてこと
他にはない。

すれ違ったひとの
安全な登山を思いやったり、
情報があれば交換しよう
という気持ちになったり、
山のこんにちはには
すてきな利点がいっぱいある。


ハードすぎない登山で
子どもたちに
山のこんにちは
を体験させてあげられてよかった。

なんか、
わたしの生きてきた中で出会ったステキなものを
ひとつ
子どもたちに渡してあげたような気分だ。



そうして
子どもたちは
山のこんにちはが
気に入りすぎて、
山をおりてもまだ
こんにちはー!
こんにちはー!
とやっていた…

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