5分で300本が完売。大学生が開発した「壺芋ブリュレ」の誕生秘話
こんにちは、壺芋ブリュレ通信です。
壺芋ブリュレは、「欲望のままに頬張る」を楽しむためのクラフトお芋スイーツです。蜜たっぷりのお芋に自家製カスタードを合わせて、仕上げにブリュレ。ブリュレ以外にも食べ方の工夫はさまざま。知るともっとおいしくなる裏話など、詳しく知りたい方は、こちらのnoteをご覧ください。
おかげさまで、オンラインショップでは販売開始から約5分で300本が完売する日も。美濃加茂の店舗『MINGLE』には、1日に250人以上が来客、東京・下北沢のBONUS TRUCKに出店した際は、歴代最高の売上を記録しました。
そんな壺芋ブリュレを手がけているのは、大学4年生の出口峻佑。美濃加茂に移住して3年目となる彼は、2019年から学業と並行して、廃ビルをリノベーションしたシェアビル『MINGLE』の運営と、壺芋ブリュレのプロダクトマネージャーとして活動しています。
「もとは縁もゆかりもなかった」という土地で、なぜ壺芋ブリュレを売り始めたのか?メニューの開発当初からこれまでを振り返ってもらいました。
美濃加茂の人が町を好きになる何かが必要だった
美濃加茂という地域から、人々が惹きつけれられるものを届ける。それが、2年住んで見つけた僕の答えでした。
人が暮らす「町」というものに興味を持つようになったのは高校生の頃。知らない地域、異なった環境、違う考え方。学校で出会った友人が見せてくれる世界はどれも興味深くて、世の中の多様性を教えてくれました。
その頃から、「人をつくるのは町であり、良い町が良い人生をつくる。だから僕はまちづくりがしたい」と考え、卒業後はまちづくりを扱う学部へと進学。インターン先であるIDENTITYの新規事業『MINGLE』の運営を手伝うために移住してきました。
町に“挑戦の拠点”をと始まった『MINGLE』でしたが、新しい場づくり、盛り上げ、地元での浸透の道のりは厳しく、頭を悩ませる日々が続きました。レンタルスペースの利用は芳しくなく、大きな方針転換もできない。
そこで、町の人の話を聞いて少しでも現状を理解することから始めようと、簡易な喫茶店の営業を始めました。お客さんとひたすらコミュニケーションを取りながら、少しずつ前進し始めたのも束の間。コロナの猛追を受け、2ヶ月間の休業を決めました。期間中も美濃加茂で活動するかたに相談しながら挑戦できることを検討したのですが、上手くいかず。さまざまな人の意図が絡み合う『町』をつくっていくことの難しさを知りました。
転機が訪れたのは、2020年の8月。喫茶営業で提供している自家製シロップのかき氷を、たまたま会社のメンバーに出したら「見た目もおしゃれだし、美味しい!もっとプロモーションを頑張れば絶対にみんな食べにくるよ!」と想像以上のリアクションをもらって。数週間後、強い後押しを受けて開催したイベントでは、想像以上に多くのお客さんに足を運んでいただき、大きな反響を残しました。
外から求められる商品がもっと必要。コロナ禍でも来店しやすい何かがあれば『MINGLE』を変えてくれる。そう思ってから、一気にギアを入れ替えました。
「なぜ壺芋ブリュレなのか?」とよく人から聞かれるのですが、その発端は意外とシンプルで、秋なので焼き芋にしよう!と(笑)。
ただ、美味しい焼き芋は美濃加茂でなくても食べられる。だからこそ、ここでしか食べられないものを作りたいと思いました。当然、コロナ禍では長時間の滞在はできないので、提供時間が短くテイクアウトできる必要もあります。
そのとき、当時流行っていたクレープの表面をブリュレした「クレープブリュレ」を見て、焼き芋にカスタードクリームを入れて、ブリュレにしたら楽しんでもらえるのではないかと思いついたんです。
焼き芋ブリュレではなく、壺芋ブリュレ
壺芋ブリュレのイメージが固まり始めて、お芋の仕入先を探していたときに、知人から岐阜県大垣市の『つぼ焼いも岐阜総本舗 幸神』さんを紹介してもらって。気になってお店までバイクを飛ばし、つぼ焼きいもを食べたら、噛む力が要らないくらい柔らかく、とっても甘くて感動しました。
壺芋ブリュレには、なんとしても幸神さんのお芋を使いたい。その後すぐに、「ぜひ卸していただきたい」とメッセージを送りました。
初めは仕入れ価格の落とし所がつかず、継続が難しい状況でした。「町に活気を生み出したい。今の状況を打開するためには、つぼ焼き芋に熱心で地場を盛り上げている幸神さんのお芋以外は考えられない。分からないことも多いが、仕入れ価格も含めてお力添えいただきたい……」と気持ちを伝えたところ、「若い人が頑張っているのなら」と快く協力していただけることになりました。
ただ、僕がずっと懸念していたのは、せっかくおいしく出きあがったつぼ焼きいもに手をほどこすこと。でも代表の古澤さんはとても前向きに「ブリュレにするならこの品種の方がいいよ!」と真剣に相談に乗りながら、提案してくれて。
商品化を進めていくにあたって意見のぶつかり合いはなく、全てにおいて勉強させてもらうことばかりでした。
思い返せば、古澤さんに初めて会ったとき、「お芋」を「お芋さん」と呼んでいるのが印象的で。「お客さんを笑顔にしているのは僕達じゃない、お芋さんだ」と話してくれたときは深い納得感を抱きましたね。壺へ向かい、熱い眼差しを向けながら焼くその焼き芋が皆を幸せにしている。そんな古澤さんの真摯な姿を見たときから、当初想定していた『焼き芋ブリュレ』は、敬意を込めて『壺芋ブリュレ』という名前にしよう決めました。
「たとえ自分が損をしても、お客さんに損をさせてはいけない」。そう語る古澤さんは、常に誰かを想う優しくてかっこいい方です。以前は車がなかったため、美濃加茂から大垣まで30Kg近くのお芋を毎週バイクで取りに行っては販売の繰り返し。そんな僕を見かねてか、「都合がつくときは配達してあげるよ」とご好意で言ってくださったことを、今でも覚えています。
6時間途切れぬ行列、お客さんは総数250人以上
壺芋ブリュレの店頭販売では、初日は20本が完売。2日目に30本、次の週に50本、最終的には250本作っても完売していました。その理由は、壺芋ブリュレを食べたお客さんがInstagramやTiktokに投稿し、それを見て来店した新たなお客さんがまた投稿するといった、口コミの輪が連鎖的に広がっていったからだと思います。
朝から晩まで県外からも多くのお客さんがわざわざ来てくれて、毎回の予想を裏切る需要がうれしい反面、食べられなかったお客さんに申し訳なくて。売り切れ後は、お芋の切れ端をブリュレして配ってましたね。
今でも忘れられないのが、お客さんからInstagramのDMで「せっかく行ったのに売り切れていたのが残念。もっとたくさんつくれるようにしてくださいよ」と強い要望を受けたことです。「そこまで自分がつくったものを求めてくれる人がいるんだ」と思うと、申し訳ない気持ちと同時に、とても有難いなと感じました。
そのお客さんは何週間後かにリベンジしに来てくれました。壺芋ブリュレを食べて「来てよかった!ありがとう!」と言ってくれたとき、なんだかうれしくて鳥肌が立ちましたね。
お客さんとのエピソードは、ほかにも色々あります。よくポップアップで「美濃加茂出身なんです!」って方が食べに来てくれるのですが、あるお客さんは、「ずっと地元に帰ってなかったけれど、壺芋ブリュレをきっかけに美濃加茂に帰ってきました!」と、店舗に遊びに来てくれたんですよ。
迷いや不安がある中で、それが美濃加茂の誇りにつながると信じて作った「壺芋ブリュレ」でしたが、思いもしない形でさまざまな影響を与えているのを目の当たりにすると、僕がしたかったことは間違えていなかったと思います。
県外のイベントで出会った美濃加茂出身者の方が地元に思いを馳せたり、それがきっかけで何年も距離が空いてしまった地元へ帰省してくれたり。最近では、大阪から美濃加茂へ移住してきたご夫婦が「結婚式での催しの景品にしたい」と言ってくださることも。ECで提供するようになった今では、町を語る一つの代名詞として紹介してもらえることが増えた気がしますね。
至福の瞬間は購入者に委ねる。オンラインでも最高の体験を
店舗販売で好評だったことを受けて準備を進めたオンライン販売。販売方法が変われば提供できる価値や体験に差が生まれます。いかに店舗販売での魅力を製品に落とし込むか。試行錯誤の日々が続きました。
壺芋ブリュレは、当然「ブリュレ」あってこその壺芋ブリュレです。どのようにしてパリパリの飴をご自宅で実現できるようにするか。この時の僕は、ブリュレが持つ魅力を理解しきれていませんでした。
目の前でブリュレされる様子を見られるのも、大きな体験価値です。その一番食欲をくすぐる瞬間を楽しんでもらいたい。購入者自身がブリュレをすることはめんどうな行為ではなく、体験価値を高めるスパイスだったと気づきました。そうして、壺芋ブリュレは「美味しい」でなく「楽しい」を提供する商品へと方針が変化していきました。
壺芋ブリュレのコンセプトは、「欲望のままに頬張る」というもの。忙しい日常の中でも落ち着ける時間をつくり、じっくりとブリュレをして、高まった食欲のままに味わって欲しいですね。音・香り・見た目そして味・食感、五感全てを刺激する幸せは、幾重もの「喜び」が織りなす最高の体験になるはず。これが僕の届けたい壺芋ブリュレの姿です。
美濃加茂の新名物をツールに、町の存在を発信し続ける
今年の3月にオンラインショップをオープンして、より美濃加茂という町を意識してもらえる場が広がりました。これは町の未来へ繋がる重要なきっかけだと思っています。
「〇〇の印象がある、××らしいよ、じゃあ△△だったらいいね」。町について意識を巡らせることは、気づきをもたらし、町のイメージをつくります。そのイメージはいつか期待へと変わり、誰かの挑戦の一歩に繋がる。その町を意識するきっかけの数は、その町のイメージの数、すなわちその町の可能性であり未来です。
町への意識が町の未来をつくる。だからこそ、町の存在を発信していきたいと僕は考えています。壺芋ブリュレを通じて町を意識することができる。壺芋ブリュレには大きな期待と思い入れを持って取り組んでいます。
今後は、規格外となる壺芋を使用した新商品開発に力を入れていきたいです。製造にロスはつきものですが、廃棄を許容するのは健全とは言えません。まちづくりは生産段階から始まっていると考えます。
不必要なエネルギーロスや資源ロスによって町の持続可能性を損なわないためにも、食品廃棄を無くす商品が必要不可欠かと。
あとは、写真を撮るのが好きなので、壺芋ブリュレを欲望のままに頬張るお客さんのスナップを撮っていきたいです。さつま芋って老若男女問わず愛されるものですし、おいしいものを目の前にしたら人類みな平等じゃないですか(笑)。いろんな方がお芋を中心に、笑顔になる瞬間を残したいです。
そういえば、最近仲間に、「お芋について語っている姿が一番輝いているね」と言われます。元々お芋が好きだったわけでなく、自分が知らなかった魅力と可能性をお芋が秘めていたから好きになった。
結局のところ、僕は人やモノが持っている潜在的な魅力を再解釈して、形にしていくのが楽しいのかもしれません。だから、お芋はもちろんそれ以外の分野でも、町や人やモノの可能性を引き出していけるような挑戦をし続けたいと思っています。そして何より、協力してくれる仲間がいるということを忘れずに、いつか力になれる自分を目指して頑張っていきます。
壺芋ブリュレ販売開始のお知らせは、公式LINEにてお届けしています。毎週金曜日の21時に発売予定です。数に限りがあり販売開始から10分ほどで完売することもあるので、ぜひLINEのお友達登録をしてお待ちください。
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