![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/149643865/rectangle_large_type_2_9f8c197c99244e036b62e5c7a4004c34.png?width=1200)
ハムスターに纏わる話
わたしがまだ小学校にも上がってないくらいの歳の頃。
母は家にハムスターのつがいを連れてきた。
子供だったツボイはハムスターを飼うことにとても心が躍ったし
ハムスターはよく色んな種を食べたし、バナナチップもよく食べた。
しかしツボイはまだガキ。
餌を与えるなど以外の世話をほとんどは母がしていて
ツボイはただハムスターを眺めていただけだ。
ガキは動物を表面的に可愛いと思うだけで、命を預かることの難しさを知らない。
ハムスターはすぐ子供ができ、6匹生んだ。
母は生まれた子がもう少し大きくなったら、友人に譲ると言っていた。
しかし、子ハムを育てるにおいて
わたしの母には重要な知識が抜けていた。
子ハム達を同じゲージで育ててはいけない
平日の晩だった。
母は入浴中、父はリビングでテレビを観ていた。
わたしは風呂から出て、子ハム達の様子を見ていた。
するといつもと様子が違った。
"なんだか........子ハム達が何かを囲ってモゾモゾしているぞ?"
何かが起きている、とガキツボは思った。
何か、イレギュラーなことが。
そう思いながら見ていると、子ハム達が囲っている何かが、チラッと見えた。
"赤い!"
その時、自分がまだ知らない何かの概念、領域がここに存在していることを感じた。
これは、大人を呼ばねばならないと、すぐに察した。
そしてリビングでテレビを観ている父を呼んだ。
ツボイ「子ハム達が、なんかへん!」
テレビを観ていた時とまっったく様子の変わらない父が、ハムゲージをチラッと見た。
父「お話ししているんだよ。」
そしてまたリビングでテレビを観る。
いやいやいやいやいやいや、そんなわけがない。
今、28歳ツボイが思い出せる最初に父も完璧な大人ではないと思った瞬間だった。
"お話ししている"わけがない。
もうさすがにガキツボには分かった、何が起きているのか、分かった。
これは
ハムスターが、ハムスターを食べている!!!!!!!!!!!!!!!!
大ショック。
そんなはずがないとすら思わなかった。
もう、そう思った時から、そうでしかないと思った。
ただ父の"お話ししているんだよ"という
大変なことが起きているのに平和ボケで放置されるこの不協和音。
母は、わたしが察しているのこの大事件を理解してくれるだろうか。
不安だった。
風呂からタオル一枚で出てきた母にすぐさま伝えた。
ツボイ「お母さん!ハムスターが、ハムスターを食べとる!」
母「ハァ?なにィ?」
タオル一枚のまま、ゲージを覗く。
母「..........oh shit!!!!!!!!
Oh my god!!!!!!!!」
(結構デカめの声)
父「なんや?」
母は大慌てで対応をする。
母「ユミちゃん!見ないで!!も寝ナサイ!!」
やっぱり現実だったんだ。
心臓がバクバクしたままわたしは布団に入った。
寝れるはずもなかった。
あんな小さくて可愛い生き物が、兄弟を食うのか?
そんなおぞましいことをするのか?
ハムスターには、道徳というものがないのか?
ガキのツボイはガキだからこんな風に語源化出来てなかっただろうが、そのようなことを思った。
ハムスターを飼うことで起きた現実が凄惨すぎて
今まで無知にハムスターを見て楽しんでいたことがファンタジーだったんだ、と思い
自分が情けなくなった。
そしてハムスターは結構早く死ぬ。
それもまた悲しかった。
命とは儚いのだ。
おわり