死が十分予見され家族もそれを受容している人が呼吸停止しているのをみつけ家族が誤って救急要請をしてしまった場合の心肺蘇生の差し控えは法的に許与されるか

背景情報:
 事前に医師により死が十分予見され説明されており家族もそれを受容している人が呼吸停止しているのを家族等がみつけた場合、継続的に診療を受けている医師などに連絡し、往診等することで、救急搬送せず、自宅などでの看取り、とできることも今では珍しくない。

 一方で、気が動転するなどして、救急要請すると、病院に救急搬送され、望まないいわゆる延命措置を受けることは珍しくない。また、普段診療を受けている医師などが外来のみなどで対応が困難な場合は、(法整備的にも)救急搬送するしかないのが現状ではないか。この場合、心臓マッサージや、人工呼吸などを希望していないことを家族が明確に説明したとしても、救急隊が実施してしまうというかせざるを得ないこともある。このような場合に、救急隊が自分が法的に訴追されることを恐れることなく、心肺蘇生の差し控えができるような社会体制の整備が必要だと思う。

 以下はそこら辺についての記事のメモ。

救命か、看取りか。「心肺蘇生拒否」の現場で悩む救急隊

2020/04/17(金) 10:21 配信

”茨城県のひたちなか・東海広域事務組合消防本部の救急救命士、江幡直人さん(34)は、今も悩んでいることがある。2018年の夏、立っているだけで汗が噴き出るような日差しの日のできごとだった。
「この方は“DNAR”を示されている。家族も同意しています。だから、搬送中に心肺停止しても、心臓マッサージや人工呼吸はしないでください」
119番通報で駆けつけた80代女性の家で、江幡さんは往診医にそう告げられた。DNARとは「Do Not Attempt Resuscitation(心肺蘇生拒否)」。本人のかねての望みだったという。
「それはできません」
江幡さんは、現場を指揮する隊長として答えた。”

https://news.yahoo.co.jp/feature/1652/

女性は居間の介護ベッドに横たわったままで、呼びかけには応じない。意識レベルはとても低い。脈と呼吸はゆっくりと続いていて、静かに眠っているかのようだった。江幡さんは、往診医と家族を説得した。救急要請を受けた以上、自分たちは救命活動をやめるわけにはいかない、と。
目の前にいる人の命が続く可能性があるのなら、全力を尽くすのが使命だ。救急隊に“救命”以外を選ぶ権限はない。どうしようかと悩む1分1秒が、命取りになる。
家族らに納得してもらった後、運び込んだ救急車の中で女性の心臓が止まった。
江幡さんは胸骨圧迫を始めつつ、搬送の準備を進めていく。その間に往診医と家族、そして、電話の先にいる搬送予定の病院の医師の三者で話し合ってもらい、自宅で看取る判断が決まった時点で心肺蘇生をやめた。死亡診断書は往診医が書くことになった。通報から約40分後のことだ。江幡さんにとって、一度救急車に運び込んだ人を自宅に戻すのは、初めての経験だった。

「本人の意思に反した心肺蘇生が、倫理的に妥当なのかは疑問です。とはいえ、『救命』が救急隊の役割です。その原則から外れることで、救急隊側が法的な責任を負うおそれもある。救急救命士として正しい行動は何だったのか、今でも分かりません」



現場から「統一ルール」求める声

こうした現状を踏まえ、DNARを示された場合の対応手順を策定する消防本部が出始めている。
総務省消防庁によると、2018年7月時点で、全国728の消防本部の約半数に当たる332本部が、DNARに対応する手順を定めている。しかし、内容は割れている。
医師の指示などの下に心肺蘇生を控えたり、中止したりする対応を定めたのは、このうち100本部。反対に、201本部は「事前の意思表示がなされていても、真意探求は救急隊員にとってほとんど不可能」「疑わしきは生命の利益に」などとして、DNARを示されても心肺蘇生を実施する方針をとっている。
DNARへの対応は、生死を分ける重要なものだ。だからこそ、「地域によって対応が違うのはおかしい」「統一ルールの制定を」という声が、現場の救急隊員から上がっている。
冒頭の救急救命士、江幡さんは訴える。
「『多死社会』と呼ばれるほど、死亡者数は増えています。救急隊がDNARを示される事案は、今後さらに増えていくでしょう。その時にどう行動すべきか、統一されたルールが必要ではないでしょうか」


2020年1月27日

医療・健康・介護のコラム

救急車が来ても救命しないことも……本人の意思が優先される時代

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20200123-OYTET50019/

読売新聞の報道によると、東京消防庁が2019年夏に1か月間行った調査では、心肺蘇生を行った救急搬送816件のうち、患者本人が延命を望まないケースが11件あったといいます。こうしたケースに対応するため、東京消防庁では、蘇生中止の運用条件を決めたわけです。

 その条件とは、(1)患者が成人で心肺停止状態である(2)事前に患者本人が家族と話し合い蘇生を行わないと決めている(3)「かかりつけ医」に連絡し、事前の合意や想定された症状と現在の症状の一致を確認できる……の三つです。

 現在は、死に関しても個人の意思を尊重する時代です。昨年、ポスターが波紋を呼んだ「人生会議」が、じょじょに浸透して、延命治療を望まない人が多くなっています。すでに一部の自治体では、条件を定めて、搬送を中止しているところもあります。ただし、東京のような大都市では初めてのことです。

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