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シロが教えてくれたこと

#小説連載開始
#楽しく書く
#ネコ
#奇跡

1.シロとの出会い

私が小さかったころ、確か4歳くらいだっただろうか。シロがやってきた。

真っ白で、まるでわたがしみたいな子ねこ。

シロのしぐさやいたずらまでも全てが可愛くて、愛おしくて、私の唯一の友達だった。

なぜかと言うと、私はうまく話せないから友達ができなかったのと、体が弱くて、同じくらいの歳の子どもたちが集まるところへは行けなかったから。

毎日毎日、外から楽しそうなみんなの声がきこえてくる。

おにごっこしているみたい。
ボールで遊んでるみたい。
いいな、いいな。私も遊びたいなぁ。

声がすると必ず、窓の外をポツンと見ていた。

みんなが走る姿がうらやましくて、胸が悲しかった。

だから、途中からは外の声もみんなの姿も見ないでおこうと決めた。

寂しさをうめるために、私はお気に入りの1冊の本をずっと眺めることにした。

ぬいぐるみみたいな、ねこが出ている本が特に好きで、何回も本をめくってみた。

でも、めくっても、めくっても一向に時間は過ぎていかない。長いトンネルから抜け出せないようか感覚だろうか。

その本は、私の手垢で真っ黒。

そんなある日、お母さんが私にこう話しかけてきた。

「みさちゃん、今1番欲しいものはなぁに?」

うまく話せない私は、ボロボロになったねこの本をお母さんの方に向けて、小さな細い指でねこをまあるくなぞってみた。

「あら、みさちゃんはこのねこちゃんが欲しいの?」

お母さんのその言葉がうれしくて、指でずっとずっと、ねこをなぞっていた。

それから、1週間くらいあとだろうか?

本当に、ねこがきたのだ。

お父さんとお母さんが優しく抱いたねこを見せてくれた。

本のねこにそっくりでびっくりしたくらい。

まあるくて、ふわふわ、まっしろなわたがしみたいなねこ。

『わたがし』ってなまえも可愛いなぁと思ったけれど、なまえを呼ぶたびに、わたがしでは私のお腹がぐーぐーなってしまう。
食べたくて
我慢できなくなってしまう。

だから、食べ物のなまえはやめておこうと決めた。

だから、ちょっとありきたりで、平凡だけど

『シロ』に決まった。

これが、私とシロとの出会い。


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