大山氏から学ぶ「白と黒の世界」
現在神奈川県民ホールで開催されている「大山エンリコイサム展」に行って参りました。
展示数は多くはありませんが、大型作品をはじめ、立体、音などの展示もあり幅広い表現が体感できます。
彼の情報はネットを調べれば分かるので、ネットに載っている内容には触れず、あくまで僕の主観で感じた事を自分自身へのメモの側面も含めて記録しておきます。
大山氏は「クイックターン・ストラクチャー」という表現を軸に作品を展開しております。グラフィティの表現から色を抜き、白と黒の線から構成されているのが特徴です。
グラフィティは直訳すると落書きという意味合いで違法なイメージもありますが、大山氏の作品からはグラフィティのメッセージ性とストリート感と迫力を残しつつ「品」を感じました。
会場側の設営的要因も含まれますが、グラフィティの色鮮やかな色彩を抜いたシンプルな構成が「品」を際立たせている要因だと考えます。その品の中に美しく表現されているのが、「白と黒の音階」です。
クイックターンが織り成す白黒の世界は切れ味があり、白の純白な世界と黒の闇の世界をはっきりと分け、対立する事なく共存しながら一つの作品を形成しているように見えました。
また白と黒の世界がはっきり分かれた作品だけでなく、音階がグラデーションになっている作品も見応えがあります。
立体作品については、ある方向から見ると表面が綺麗にされていますが、視点をズラすと下から上に斜めになっていたり凹凸があったりと、人間のうわべの一面の表現を感じました。
見えている部分だけ取り繕い、本当に大切な部分は欠陥だらけ。
それは極めて不安定な状態であるにも関わらず、一般的な状態として定着しつつある。
その危険性は常に自分にも隣接している事が伝わってきて背筋が伸びる作品でした。
大山氏の作品は深い表現である事が体感出来ましたが、この表現を受け取るには、五感を最大限利用しないと楽しめないかもしれません。
というのも「何かイイ」という事は理解出来ても、「何故か?」を五感を駆使し自分自身と対話が出来ないと、白黒の世界を浮遊するのは難しいと感じました。
少なからず僕がその白黒の世界を浮遊出来たのは、自身が展開する「一文字アート」が白黒の世界に拘っているからだと考えます。
今回の鑑賞を纏めると、「白と黒の世界は単純そうでありながら、底が見えない程深い」という事が今回の学びです。
ご機会あれば是非遊びに行ってみてください。
【追伸】
作品図録を購入したのですが、なんとサイン入りでした!
先着200部らしいです。
珍しく撮影OKでした。