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西東緑赤の晴耕雨読

「遺失物事務所歳時記」「児童養護施設のドタバタ日記」ほか、生活の中で面白いと思った事を共有します。詳しくはプロフィール記事をご覧ください。
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2022年3月の記事一覧

家庭復帰する幼児さん

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小説 青いスーツケースを追え!

今回は、実験的に小説を書きます。わたしの体験をもとにしていますが、ありのままを書くと守秘義務規定に抵触するおそれがあるので、複数の事例をもとに再構成して執筆しました。 「特に事情気の毒と認められる場合」という概念が旅客を扱う鉄道職員にはある。法令や営業規則にこのような表現がある訳では特には無い。ひょっとすると探せばどこかにあるかもしれないが。旅客本人に悪意が無いにもかかわらず被る損害の大きな時に、根拠規程は無いが、この旅客を救済するための便宜的取扱を行うことがある。その取扱

感染症禍と公衆精神衛生

単なる愚痴ではあるのだけれど。 最近、遺失物事務所への電話のうち、メンタルが不安定なお客さんからの受電が顕著に増えた。 「メンタルが不安定」とは言ってもその言動は様々で、 電話口で会話にならないほど号泣する人もいれば、 見つからないことを誰か(鉄道職員や他の旅客)のせいにする人もいるし、 「見つかっておりません」と案内しているのに「これからそっちへ行くからそれまでに見つけておけよ」と言って一方的に切電する人もしる。

地下鉄サリン事件から27年;我々は何を学び、何を忘れたのか

鉄道の遺失物事務所で仕事していて時々「怖いな」と思うのは、中身不明の包みが届くことである。 大抵はギフト包装であり、「誰かに手渡すため、又は誰かから手渡された贈物だろうから、むやみに開封するのは良くない」と思うのだろう。 申出があり返却するときに開封されていたら文句を言う旅客もいるだろうから、担当係員の気持ちはよくわかる。 しかしながら、爆弾でも、毒物でも、小さな包みに偽装できてしまうのである。 地下鉄サリン事件はどのように実行されたか、仕掛けはどんなだったか、サリン

目線を変えて研究する;「施設の子」の親って、どんな人?

ちょっと重たい話題を。 児童養護施設では、家庭での養育が困難な子どもをお預かりしているしている訳だが、今回はその「家庭」、とりわけ「親」の話をする。 児童養護施設でも、面会に来る親の応対をすることがある。子ども宛ての電話を取り次ぎつつ、それとなく近況を伺い情報収集することもある。施設の対応に不満のある親が怒鳴っているのに遭遇し、なだめたこともあった。彼らには、それぞれに「事情」があるのが、ありありと感じられた。 親が養育できないため親戚が引き受けたものの、養育困難となっ