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【まちで仕事をつくる】vol.12 つくることの祝祭性 - PICNIGOOD

再開発が進む団地の中で暮らす人々にとって、地域で集まる機会は限られています。地域独自の文化が根付くまでにはまだ時間が必要な場所で、人々が自然と集まり、交流し、何かを分かち合う機会をどう生み出すか。その問いに対する一つの答えが「マーケット」という新しい形の祭りなのかもしれません。
2023年2月、埼玉県草加市松原公園で開催されたマーケット『PICNIGOOD』は、その象徴的なプロジェクトでした。「楽しいことは持ち寄ろう グッドな出会いをピクニック気分で」というコンセプトのもと、東武鉄道株式会社とHITOTOWA INC.の依頼を受けて、僕たちはこのマーケットの什器設計とワークショップ企画を担当しました。

祭りの本質は、人が集まり、何かを一緒に作り上げるところにあるのではないでしょうか。それは、伝統的な山車や神輿だけでなく、地域の日常に寄り添うような、小さな集まりからも生まれ得るものです。『PICNIGOOD』では、親子で簡単に組み立てられる什器を提案しました。金物を使わない設計で、安全に、そして楽しみながらつくれることを重視しました。手を動かしながら、自然と会話が生まれ、笑顔が広がる。そのプロセスこそが、このワークショップの核でした。

派手な装飾や伝統的な形式はありません。それでも、人々が自然と集まり、新しい繋がりを育むその光景は、まさに現代の祭りそのものです。地域の人々が持ち寄った楽しさやアイデアは、空間全体に祝祭の空気を広げます。そして、その場にいる誰もが主役になれる柔らかで開かれた空間は、このマーケットならではのものだったのではないでしょうか。
『PICNIGOOD』は、祭りという言葉の新しい可能性を示した場でもありました。団地に新しく住む世帯の親子が参加する風景が、日常の中で「つくる」ことの意味を示していました。それは、かつての伝統的な祭りと同じように、人々を繋ぎ、新しい地域文化を生み出す一歩になっていく。そのような可能性を強く感じています。

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