インドネシアのコロナの実情 「差別」と「リスク」の狭間
コロナウィルスが流行し出した当初、韓国・日本・イタリアなどで次々と国内感染者が見つかる中、インドネシアでは感染者0が続いていた。
誰がどう見ても明らかに不自然。
隣国のマレーシアやシンガポールでも確認され、貿易の多い中国では拡大の一歩を辿る。
人口2億5,000人以上、世界第4位を抱える国で、1人も感染者がいないなんてありえない。
世界からも感染者0人のインドネシアへの批判があった。
その時にインドネシア人は、自虐を込めて
インドネシア人は日頃から劣悪な環境で様々なウィルスと共に生活しているから、体が強くなっていて感染者がいないんだ!
というコメントがSNSで拡散されていた。
個人的には、絶対に感染者はいるが、検査方法がないだけ、
政府が発表している0人は話半分で、国民はそれをちゃんと分かっていると思っていた。
そんな風に思っていたある日、
友人のインドネシア人に聞いてみた。
きっと国民は分かっているんだろうと思って、そんな回答が返ってくると思って聞いた。
「インドネシアはコロナ感染者が未だに0だけど、本当だと思う?」
彼は
「本当だよ。だって僕たちは毎日祈ってるんだから罹らないんだ。」
と、曇りのない目で真っ直ぐに僕の目を見て答えてくれた。
甘く見ていた。と正直思った。
約1年間インドネシア人と関わってきたけど、全然彼らのことを理解していなかった。
まさかそんな回答が返ってくるとは。
続けて聞いてみた。
「じゃあ今かかってる他の国の人は祈りが足りないってこと?」
「もちろんそうだよ」
ああ、そうだ、これがインドネシアだ。
ただこれ実はインドネシアの官僚もその当時公の場で発言していた内容。
彼が特別な訳じゃない。
そんなインドネシアだが、3月頭に国内感染者が確認されて以来、感染者数が拡大。
最初の感染者の感染経路は日本人から感染した、という報道がされ、
感染拡大に連れてインドネシア-中国をはじめとする感染拡大国との運行停止などの措置を取ってきた。
直近では運輸相の感染も確認されるなど、今日現在では感染者117名、死亡者5名となった。
感覚的には挨拶が握手であり、手でご飯を食べ、咳エチケットなどの概念が皆無の文化、
気を抜けば他国より感染の拡大が早くてもおかしくない気がする。
昨日15日に大統領が声明を発表、
不要不急の外出を控え、人混みなどを避け、小学校も2週間程度の休校を各自治体に要請した。
マカッサルも今日から2週間教育機関の休講が始まり、私は見事に帰国前のせっかくの2週間の活動がなくなることになりました。
JICA海外協力隊の中でも、
赴任国の空港が閉鎖されるなどの理由で日本への一時避難を余儀なくされる国があったり、
自宅待機の要請や入店拒否などを受けている人もいる様です。
日本含めその様な状況から考えると
インドネシア、特に地方都市であるマカッサルではまだなんとなく危機感なく日常が過ぎている印象。
大変なところは大変なんだろうけど、少なくとも私の生活範囲では特に変わりない日常が過ぎていっています。
国によっては日本人であることから差別的な発言だったり、
入店拒否などを受ける人も多い様ですが、
インドネシアでもホテルの宿泊を拒否されるなどの対応が地方都市のマカッサルでさえあるよう。
ただ、親日さからか、国民性からか、
私自身はそこまで酷い差別的な対応は受けていない。
「差別」ってなんなんだろうって最近よく考える。
おそらく今まで差別される側の立場にあまりなったことがなかった様に改めて思う。
例えば差別とリスク管理の境目ってどこなんだろうって、自分自身の感情や思想とは異なる視点で考えてみたりする。
例えばホテルの宿泊を断られるのも、
ホテル側のリスク管理から考えると理解出来ない話ではないなとも思う。
(それをされたら死ぬほど腹立つと思うけど、そういう感情は一旦置いておいて。)
例えばこのウィルスに関していうと、
DNA的に本当に日本人や韓国人、中国人の感染率が高いのかも知れない。
その人が日本に帰国していなくとも、日本から来た日本人と接触した可能性が高いのは日本人。
ホテルや病院、飲食店で、本気でそのお店や他のお客さんや自分自身、自分の子供を守ろうと思うのであれば、
リスク管理の観点からしたらその対応は間違っていないのかも知れない。
そんな風に考えると、
日本企業で女性管理職が圧倒的に少ないのも、
結婚・出産での退職となるリスク管理、
とも言えるようになってしまうのかも知れない。
(それは個人的には間違っていると思うんだけど。)
だけど石を投げるのも、
肌の色で対応を変えるのも、
大学入試の結果を恣意的に操作するのも、
これは紛れもない差別であり、間違っていることだと私は思う。
これはちゃんと正しく現状と事実を理解すれば分かるはず。
(でもきっとそれ以上に信念とか感情が勝つからそういうことが起こるんだろうなぁ)
上記のリスク管理だって、頭では理解出来る。一見間違っていない様に感じる。
ただ、そこには「相手の感情」が抜け落ちている気がする。
その人がどう感じるのか、その悲しさと辛さ、寂しさを思うと、
それは間違っていると言わざるを得ない。
正直答えが出ない。
色んな立場の人がいて、それぞれに想いがある。
ただ、人間にはみんな感情があり、
それをお互い想像して勇気を持って、かつ冷静に対応する力が、
今再び強く求められている様に思う。
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