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30歳の女性ウェイターがレストランを退職して、街で2番目のチーズ屋を開業するまで

至る所にチーズ屋がある町、グローニンゲン。しかしそれはここ最近の事。13年前にアンさんが開いたチーズ屋が町で2番目だった。

今回は、30歳でレストランのウェイターを辞めてチーズ屋を開業したアンさんに話を伺った。
グローニンゲンで生まれ育ったアンさんは高校卒業後、ホテルのホールで2年働き、レストランのウェイターになる。

しかしアンさんにとってレストランのウェイターは”心から楽しめるものでなかったという”。夜遅くまで働き、週末も出勤する必要がある。
30歳になり体力的にも辛くなってきて、好きだったチーズ屋を開くことを決意する。

グローニンゲンの川沿いにあるアンさんのお店

レストランのウェイターからチーズ屋を開業するのは、かなりの挑戦に思えるが、アンさんは町に一つしかチーズ屋さんがなかったこと、自分が”良いチーズ”を知っていること、なによりチーズが好きだからという理由で決心した。町で唯一のチーズ屋で半年間、チーズや経営について勉強し、川沿いの店舗に店を構える。当初は客足が伸びず、経営に苦労したと語った。それでも道にでて笑顔で試食を促し、お客さんを大切にすることで徐々に人気が出てきた。アンさんは’’良いチーズを提供し続けたこと’’が店が生き残った理由だという。

アンさんの言う’’良いチーズ’’とは’’家畜が良い餌を食べて快適な環境で育ち生まれた乳を伝統的な製法で良い農家が作ったチーズ’だと言う。家畜の健康状態はミルクの質に表れて、ミルクの質はチーズの味に反映されるそうだ。良いミルクを使って作られたチーズは風味が豊かでうまみがある。また良い農家とは家畜やチーズを丁寧に扱い、丹精込めてチーズを作る農家で、その質はチーズの形や構造に表れるそうだ。雑に作られたチーズは形が歪で穴が多く、亀裂が入っていたりする。


各地から仕入れた自慢のチーズが並ぶ
仕入れたチーズは一年間お店で寝かせることで味に深みがでるそう。

アンさんはオランダ各地の農家を訪れ、実際に家畜の様子や施設、チーズの加工に至るまでを見学し、仕入先を吟味する。いいチーズを仕入れることに誇りと自信をもっているのだ。
お客さんに良いチーズを食べてもらうことが生きがいであり、楽しみだと言う。

アンさんは人生について’’人生は山登りのようなもの、くらい森のなかでも探せばいつかは太陽が見え、頂上にたどり着ける。登るなかで楽しいことは探せばいくらでも見つかる’’と語る。
そんな彼女は好きだったチーズを生業として、そしてチーズの良さをお客さんに知ってもらう日々をなりよりも楽しんでいるそうだ。’’レストランのウェイターをしているときは、太陽はすこし陰っていたが、いまは晴れ渡っている。人生は喜びであふれてるから’’人生で大事なことは自分の好きな事をすること、やりたい事を無理してやっていても太陽は見えない””と明るく語ってくれた。

店頭に立つアンさん。
チーズの種類に圧倒される。

だがなにより、尊敬されるべきところはその行動力とやりぬく意思ではないだろうか。チーズが好きな人などたくさんいる。女性一人で30歳という歳でチーズ屋さんを開業するというのは並大抵のことではない。そのバイタリティーこそが楽しめる晴れ渡った人生を手に入れられた一番の理由なのではないだろうか。私も、そういった好きな何かそして行動力を手に入れたいと思う。

取材先
Groninger Kaasboetiek


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