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5【連載小説】パンと林檎とミルクティー~作家・小川鞠子のフツーな生活日記~

5 パイ生地を食べるときが、ちょっとね

 果物の中では、林檎がいちばん好き。
 バナナも捨てがたいけど、いちばんといえば林檎。
 林檎をそのまま食べるのもおいしいし、ジャムを作るのも好き。
 ジャムを作ったら、食パンとの相性も文句なし。

 ただ、アップルパイだけは文句なしに好き、ではない。

 冷凍パイ生地を遣ったり、簡単にパイ生地を作ったり、コンビニで4つ入りの小さいアップルパンを買うこともある。
 けど、ベストではない。
 なんでだろう。
 そこでふと、気がついた。

 食べるときに、パイ生地がぽろぽろこぼれるのがイヤなのだと。
 もったいないと思っちゃう。
 そのこぼれたかけらさえ、食べたいと思ったのだ。
 わたしは相当な食いしん坊。

 わかったときに、自分でも衝撃を受けた。
 食いしん坊はwかっていたけど、これほどに思っていたのか自分。
 なんだか恥ずかしくなって、家族にも言ってない。
 作家仲間にも言えない。
 でも、日記には正直に書いちゃおう。

 大食いの動画を観ていて、口の周りを汚さずしかも落とさず食べている人は、すごいと思う。
 きれいだし、食べものを無駄にしないで、ちゃんと食べているって気持ちいいことだから。

 残さず食べる。
 お腹いっぱい。
 しあわせなこと。

 パイ生地がこぼれたら、こっそり食べちゃえばいいっか。

つづく

 


どこから読んでもオッケーな連載小説です


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中野谷つばめ
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