有益な建築やデザインを基本的には考えている。有益であるということを一言で表すのは難しいが、「便利」ということと「益」ということは必ずしも一致しないということが最近実感としてもわかってきた。 『不便益: 手間をかけるシステムのデザイン』(川上 浩司著/近代科学社)という本を見つけた。不便/便利という軸と、益/害という軸を設定すると、四象限できる。 ・便利益(文字通り便利なことが有益であること) ・不便害(不便で害があること) ・便利害(便利であるが、ある側面で害があること)
デザインとラボの両輪で走る ツバメアーキテクツはデザイン部門とラボ部門の二部門がある。デザイン部門は建築設計やインテリアデザイン、家具設計などいわゆるデザインを生業とする。一方、ラボ部門は建築の前後を考えることを生業としている。わかりやすく言えば研究・開発を行う。別の言い方をするならば、建築の入力(条件)自体をデザインしたり、出力(成果、運用)をシミュレーションしたりする。 なぜこういう体制にしているか? 事務所を設立したときに、家やオフィスといったビルディングタイプが
日本の建物は、基本的には竣工時の価値が一番高く時間の経過とともにその価値は目減りしていく。 時間の経過とともに価値や豊かさが増していくような建築は作れないかと日々考えている。 建築家(設計士)がまず初期設定としての建築を作り、そこに暮らす人々が手を加えて行き、生き生きとしたかけがえのない空間になっていき、その価値を備えたまま、その建築が他の人の手に渡って、人間の寿命を超えていくようなイメージである。 そういうある意味未完成な初期設定を「半仕上げ」と呼んだり、拡張可能性が
通り抜け、を設計することがある。 地域の拠点になるような建築を作ろうと思うと、規模に寄らず、通り抜けを入れ込むことは一つの方法となる。 日本の共有空間(コモンスペース)の特徴は「道」であると思うからだ。 それは商店街だったり、あるいは神田の古書店街といった問屋街、専門店街など、道にとにかくモノや活動が溢れ出している。そういった空間はまだ都心でもたくさん残っているので多くの人にとって馴染みがあると言えるのではないだろうか。 そして商店街などのコモンスペースの特徴は、まさしく通り
屋台も、設えの中では特別なものの一つと言える。窓辺における窓や建具も開閉という意味では可動式だが、屋台は、移動し、他の地で居場所を即座に構成することができる。 今まで設計してきた屋台や可動式の家具というのは、必ず依頼者がいた。そして量販店の安い家具でも良さそうだが、自分の活動やそれに伴う身体の振る舞いに最適化した装置はやはり作らなくてはならない。 いままで設計してきたのは屋台もあれば、モバイルファーニチャー、ベンチなど多岐にわたる。 屋台・移動式家具のポイントはいくつかあるが
架構に対する設えの中で、特徴的なものの一つに"窓辺"がある。窓と家具が組み合わさった居場所のことだ。窓辺は、基本的には室内に作られるが、建物の境界面に身体を位置付ける。外を眺めながら食事をしたり、外を背に本を読んだり、外にいる人に何かを受け渡したり、と、外と中との間に位置する。そして建築の内外に関わるという意味では、家具などの明確な機能を持ち、移動可能な設えとは役割が異なる。 そして、境界面に位置するがために、面積・間取り・用途・収支計算にもほとんど影響を与えないので、設計
建築を設計する時に、架構と設えに分けて考えることがある。架構というのは柱・梁などから成る構造体のことを言う。設えというのは家具や建具など日常的に移動させて使うものである。 これは日本の古くからある建築のほとんどが木造軸組の架構と襖や障子などの柱間装置から構成されていることにも通じる考え方である。 神戸のアトリエ付き住居(ツバメアーキテクツ/2019) photo:Kai Nakamura なぜこのような考えに至ったか。手がけるプロジェクトは、新築が増えてきたが、相変わら