ない、無い、ない / じょにー・カド
白ネギがひと束。
会社員だった頃、半年に1回ぐらい、路上にネギが落ちているのを見かけた。「どうしてこんな大きいもの落とすんだろう」と思っていた。
が、日々の料理のため、買い物をするようになってよくわかった。
ネギはよく落ちますね。
びよーんと長いので、買い物袋から飛び出る。いつの間にやらスルッと落ちる。
先日も某商店街を歩いていて、通りすがりのご婦人に「ネギ、落ちましたよ」と言われた。ありがたかった。言われなければ気づかなかった。
まあ、ネギは気づいてもらえるからまだいい。
もともと私は落とし物がめちゃくちゃ多い。
自宅の鍵、自転車の鍵、スマホ、ハンカチ、イヤホン、帽子…。ここ数年、落とした物だ。しかもかなりの確率でもう出てこない。
こないだは自宅でふと、クレジットカードが1枚ないことに気づいた。スマホのケースに刺していたはずだが、と思い出して血の気が引いた。そういえば路上でちょっと急を要する1本電話をかけた。あの時に…?
慌ててその場所まで走ったが、ない。
仕方がないので警察に届け出たら、翌日あっさり見つかった。やはり例の場所に落としていたらしく、どなたかが無人の交番に置いておいてくれたそうだ。ただ、カード会社に連絡して使用停止にしていたので、結局、カードは再発行になった。
ドタバタする父に息子は言った。
「しっかりしてや」
うーむ、不甲斐無い。
息子の信頼までなくす前に、本当にしっかりしたい。
もう50歳なのだが…。