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「女性活躍」にうんざりしているあなたへ 〜わたしの夫の話〜

突然ですが、あなたはこんなことを思っていませんか。

世界価値観調査の男女別幸福度では、日本の女性は男性より幸福度が高い(*1)。ジェンダーギャップ指数121位(*2)は問題だ!と騒いでいるのは一部の"フェミニスト"女性だけなのでは?

今日は、そんなあなたにむけてお手紙をしたためました。

今日もジェントルマンなあなたへ

あなたは、周囲の女性たちが幸せそうに見えるのでしょう。あなたもきっと、幸せな方なのでしょう。なぜなら「女性は子どもを産み育てれば、賃金労働をしなくてもよい」という世間の価値観を体現できているからです。

でも、その価値観の影には、
  ・女性”なのに”子どもを産まない人への非難
  ・女性を家庭内労働に”専念させられない”低所得男性への蔑視
  ・子どもを産んだ女性が働こうとすることへの社会の不関与
があります(*3)。女性たちの本音は「転勤族の夫についていくと仕事なんてとてもできない!」が現実なのではないでしょうか。

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すでに共働き率は68%(2020年、*4)。
これからの時代は、「子育てを家庭に丸投げするのはやめますので、子どもの有無に関係なく働ける人は働きましょう」というほうが、所得格差の問題も含めて、より公平な社会を目指せると思いませんか

クオーター制の是非

あなたはこう続けるかもしれません。
「数を合わせないといけないから、能力の低い女性を引き上げるというのは差別ではないの?」と。

どきり。わたしは「政治の世界に女性が足りないから」この仕事をしています。いわば、数合わせのための「椅子」です。

なぜ、政治の世界に女性が少ないのでしょうか。それは、永田町の価値観が、男性(特に、専業主婦を志向する父権主義的な一握りの男性, *5)中心だからです。有権者の半分は女性なのに、不公平だと思いませんか。わたしが、この「椅子」(というよりは「針の筵」)にかろうじて耐えられるのは、「その努力が自分のためだけじゃないから」の一言につきます。

経済界でも、”男女数合わせに見える”「椅子」が増えています。男性である自分の椅子が減るのではないか。その本能的な不安感は当然でしょう。

出世しなくても、クビになっても、だいじょうぶ

さて、ここからは私の個人的な話をしましょうか。

私は20代前半で同年代の夫と結婚しました。子供のいない20代のうちは、正直夫に出世を期待していました。「お仕事がんばってね」とニコニコしながら、出世欲のない夫にヤキモキしていました。仕事で失敗した夫を慰めながら、内心不安になったりしていました。夫にとってはプレッシャーだったかもしれません。

それでも30代になると、「ありのままの夫」を受け入れられるようになったのです。出世しなくても、クビになっても、家族として一緒にサバイブしよう。それは、周囲との比較欲がなくなったと同時に、自分自身の経済力という自信がついたからだったと思います。朝「仕事がつらい」という夫に、「いいよ、1年くらいなら休んでも」と何回か言ったことがあります。本音なのに伝わりませんでしたけど。

男性が「仕事がつらい」と言ったとき、
「子どもを産んだからあなたほど稼げない。困るからやめて」がいいですか。
「いいよ、1年くらいなら休んでも」がいいですか。
今、ほとんどの男性は「仕事がつらい」なんて言えてもないんじゃないかな、と思います。

「”男だから”仕事で評価されて高収入を得なければならない」という男性の思い込みは、周囲の女性を不幸にします。ひいては社会全体を不幸にします。「”はじめのうちは”能力が見劣りしようが、数合わせだろうが、男女の経済的地位を等しくする」という姿勢の意味を、ねじ曲げて受け取らないでいただきたいな、と心から思います。

ちなみに、夫の名誉のために言っておくと、さりげない気配りでドアを開けてくれるレディファーストな仕草に惚れて夫と結婚しました。文化としての”男らしさ”を大切にしたいということでしたら、半径5mの範囲で実現してくださいね。

***

「男女の経済的地位が等しくなりゆく社会で、パートナーと幸せな関係を築くこと」は、わたしたちの新しい挑戦になるでしょう。「”なんとなく”この仕事をする」から、周囲との摩擦や葛藤を経て「”他ならぬわたしだから”この仕事をする」に至る過程が、混沌とした社会で「自分の居場所を見つける」ということなのかもしれません(*6)。わたし自身、正直むずかしいなあと途方に暮れているところです。

わたし一人ではとても手に負えないので、どうか一緒に考えていただけないでしょうか。

*1 ) 世界価値観調査(世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を比較している国際調査)
http://honkawa2.sakura.ne.jp/2472.html
*2) 内閣府男女共同参画局総務課 「世界経済フォーラムが『ジェンダー・ギャップ指数2020』を公表」https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/202003/202003_07.html
*3) 「女性は子どもを産んで家庭内労働に勤しめば賃金労働をしなくても良い」という価値観のせいで損している人の方が多い、と説明できる統計データをあれこれ探したのですが、なかなか良いデータが見つかりませんでした。専業主婦の配偶者控除制度が廃止されないのと何だか関係がありそうです。
*4) 独立行政法人労働政策研究・研修機構のサイトより https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html
*5) 父権主義は、"強く豊かな父"が"女こども"への富の配分と庇護を行う統治のしくみで、構造的に「”ウチ”と”ソト”の区別」や「権力の誇示」や「暴力」が伴います。
*6) 「女性の幸福度が高い」理由の一つは、社会から期待される役割と自己実現欲との狭間で、自分の居場所を見つけようともがいてきたからでしょう。逆に言えば、社会から期待される役割と自我との葛藤が足りないことが男性の不幸さの所以ではないでしょうか。

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