椿
写真と言葉。
短い短い恋の話集
愛おしさは虚しさでもあり 不安は心を押しつぶす 言葉だけがわたしを支え そして言葉がわたしを揺れ動かす そばにいられたら あなたを独り占め出来るのに
あなたが必要としているのはわたしではなくあなたの心を包んでくれる人 あなたにとって必要なのはわたしではなく あなたの心を労り頷いてくれる人 わたしはきっとあなたにとって いつでも忘れられる空想の人 私たちをつなぎ止めるものは 何も存在しないのだから
あなたという存在が わたしの心を支えるその雲のように あなたのその不完全さが わたしの存在を照らすその月のように なにもかもが あなたを必要としている あなたのそばにいたいと告げる
久しぶりのあなたの声はとても弾んでいた そんなあなたの前だとなぜか わたしの心が緩んでしまうのは あなたの波長が心地よいから
そこになにがあるのかなんて 全く予想もできないけれど あなたへの気持ちを受け入れることで 今日という日を終わらせたいの
あなたがわたしに残してくれた その温もりを今日も認める
心を閉ざすあなたにどんな言葉を贈ればいいのか、わたしにはもうわからないよ。ただ、時間だけが刻まれてゆく。もう何も、変えられないのかな。
今度会おうね とちょっと恥ずかしそうに言うあなたに 今日も癒される
優しさは時に怖くて、差し伸べられたその手に触れたいのに、心がそれを許さない。あなたの柔らかい声が、なぜか尖って見えてしまうのは、わたしの心が弱いから。
あんなに思い詰めていたことが一瞬で晴れる。夢中になれることであなたを少しの間、忘れられる。あなたが遠ければ遠いほど、わたしは満たされるのかもしれない。手に届くとつい、求め過ぎてしまうから。
あなたはとても遠くに行ってしまって 今は手が届かないけれど たまに届くあなたの言葉が とても大切で ひとつひとつが わたしを癒す そしてまた寂しさを増す
余計な言葉は要らないわたしたちだから 触れ合えないことがもどかしくなる 言葉であらわすには 喩えようがない想いが わたしたちを包み込む
もうダメなのかもしれないと、何度も決意し消そうとしたあなたのLINEに通知があるとまた、わたしの心は振り出しに戻る。いっそのこと忘れてしまいたいと、一瞬心に過るけれどまた、あなたの写真を眺めてしまう。
いつ終わっても 大丈夫と自分に言い聞かせて 終わりを覚悟するわたしと いつ終わられても 大丈夫と心を閉ざすあなたは 終わることも 始まることも できないまま お互いの存在を その胸で感じながら 言葉を送ることもできず 時を刻んでゆく
彼はとても考える人で、わたしの一語一句、丁寧に受けとってくれる。わたしもまた、彼の一語一句を受け容れる。わたしたちの心はまるで透明だけれど言葉はとても不器用だ。